クールペッパーページ07「地球空洞説の検証@」/黒月樹人
Cool Pepper Page 07 “INSPECTION@ OF THE HOLLOW EARTH THEORY”
Kinohito KULOTSUKI

クールペッパーページ07「地球空洞説の検証@」

 地球空洞説を支持する本[1]が最近出版された。サブタイトルには「すべての惑星を内部空洞にする重力のメカニズムが見つかった」と書かれている。このような力学的なメカニズムが存在するというのであれば、宇宙についての考え方が、まったく変わってしまう。また、この本の中には、大陸移動説の謎や、恐竜と重力の謎に関連して、地球膨張説が論じられている。これによると、かつて、地球は、現在より小さな半径の惑星であり、大陸は何もなく、惑星表面のすべてが海に包まれていたという。しかし、地球の内部が空洞になるメカニズムによって、この地球の半径が大きくなり、海に沈んでいたはずの、パンゲア大陸塊に割れ目が生じた。地球の膨張にともなって、これらの塊の破片が各大陸に分かれてゆき、間に低地が生じたため、海が低地のほうを満たすことになって、大陸が乾きだしたという。そして、このような地球の膨張によって、地球の表面積がほぼ3倍になったと想定されている。

このような仮説が考えられた根拠の一つとして、各大陸を集めてパンゲア大陸を再現しようとしたとき、大陸の端っこが離れてしまって、うまく合わないということが挙げられている。しかし、このようなパズルのピースも、現在の地球の表面で集めると、うまく合わないが、もっと小さな半径の地球の表面で集めると、隙間なく埋めることができるのだという。他の根拠の一つとして、恐竜の巨大すぎる構造が、化石だけが見つかっている、現在の地球の重力にはあっていないということが挙げられている。地球の半径が、もっと小さなころであれば、地球の自転速度も大きかっただろうし、地球の重力も小さくなって、恐竜が存在することもできたと考えられているのである。

 地球空洞説と地球膨張説が組み合わされて、他にも色々な謎が説明されてゆくのであるが、この本では、まったく数式や数値をとりあつかっていない。だから、説明のほとんどが定性的なものであり、定量的な裏づけがない。おそらく、この本は専門的な科学書ではないのだろうが、「すべての惑星を内部空洞にする重力のメカニズムが見つかった」とサブタイトルに記しているのであるから、せめて、このメカニズムについては、数学的な理論で構成しておくべきだろう。もし、このような、重力についての、新しい解釈が成り立つというのであれは、それは重要な発見でもある。この考察について調べてみようと思う。

 重力のことを考察するための準備として、地球が膨張することによって、内部が空洞になったという仮説における定量的な分析を行うことにしよう。膨張前の地球の半径をrとし、膨張後の地球の半径をRとする。地球を球と見なすと、膨張前の地球の表面積は4πr2であり、膨張後の地球の表面積は4πR2となる。テキストの仮定によると、膨張後の表面積が3倍になったとされている。よって、(1)が成立する。

3×4πr24πR2       (1)

ここから、3r2R2となり、正値を採用して(2)を得る。

R[3]1/2r            (2)

[3]1/2はルート3であり、ほぼ1.732という数値である。半径についての倍率は分かったが、このような半径の倍率で膨張したとき、内部の空洞が、どれくらい大きくなるかということを、次に求めてみよう。これには、球の体積の公式を用いる。すると、膨張前の地球の体積は(4/3)πr3である。このときの内部には物質が詰まっていて、これは一様な密度をもっているものとしよう。地球が膨張したとき、これらの物質は、地球の殻のようになっていると考える。この殻の厚みをRとすると、半径Rの地球における空洞球の半径はRRとなる。これらの関係から、次の(3)が成立する。

(4/3)πr3=(4/3)πR3(4/3)π(RR)3      (3)

ここから共通項の(4/3)πで割って、(4)を得る。

r3=R3(RR)3            (4)

(4)の両辺をR3で割る。

  (r/R)3=1(1R/R)3             (5)

(2)を利用すると、(5)の左辺は、次のようになる。

(r/R)3 (r/[3]1/2r)3 (1/[3]1/2)3[3]1/2/9       (6)

さらに、(7)のようにおいて、(5)(6)より、(8)が得られる。

XR/R           (7)

   X33X23X[3]1/2/9=0      (8)

 (7)の定義から、0 <X<1であるが、この範囲で(8)を解くと、(9)となる。ところで、このときの解は、コンピュータによる数値計算の手法によって求めた。数値計算によって、(8)の左辺をf(X)とおいたグラフYf(X)を描くと、明らかに、X0X1の間で、Y01点で交わることが分かる(1)。このあと数値計算の二分法によって解を求める。

X0.069           (9)


1 f(X)= X33X23X[3]1/2/9


図2 半径rの球と、半径Rの球の断面

 この値には少し驚く。(9)の値は、(2)の値と組み合わせて、(5)式を満たすことが、検算することによって分かる。この値は間違っていないようだ。すると、膨張後の地球の殻の厚さは、直径の1割に満たないということになる(2)。非常に薄い。現在の地球の半径は、6378[km]であるから、これに(9)を掛けると、ほぼ440[km]となる。地震波の観測結果を考慮すると、このような地球像を想定することは難しい。パンゲア大陸が存在していたときの小さな地球が膨張して、各大陸が分かれて、間を内部からの物質がうめたという、地球膨張説のストーリーは、大陸の形状についての疑問に答えてくれるかもしれないが、そのかわり、このように薄い殻のようなものしか残さないという、新たな疑問を生み出してしまう。大陸移動説にも疑問はあるが、地球膨張説にも疑問はつきまとうようだ。

 サブタイトルにあった「すべての惑星を内部空洞にする重力のメカニズムが見つかった」ということに関する考察は、次のページで取り上げることにしたい。(2008.12.23)

 参照文献

[1] ケビン&マシュー・テイラー, 地球はやはりがらんどうだった, 藤野 薫訳, 徳間書店