CPP131 「クッキリン」から「ゴブリンアイ」へ
CPP131 From Kukkiling To Goblin Eye
黒月樹人(Kinohito KULOTSUKI) [@]黒月解析研究所
CPP131 「クッキリン」から「ゴブリンアイ」へ

 これ以上のことは不可能に違いないと、ほんの数週間前は思っていました。「クッキリン」とは、デジタル画像のモザイクパターンの情報から、撮影される前の、ほんものの、リアルな姿に近いものを再現することを意味します。かつて、銀塩写真のフィルムや、そのリバーサルフィルムでは、暗室で印画紙に引き伸ばすときや、スライド映写機で白い壁に投影するとき、レンズのピントさえ合わせれば、細かいところまで、くっきりと見ることができました。ところが、現在、主流となっているデジタルカメラによって撮影された、デジタル画像においては、これを拡大してゆくと、古代壁画のモザイクタイルのような、四角い領域が一様な色で塗られた、モザイクブロックの色パターンが現れます。小さな色紙の破片を貼ったようなものです。しかし、このようなものからでも、かつての銀塩写真のようなものを再構成する技術が存在します。ただし、この技術は、私が最初に生み出したのではなく、気がついてみると、いくつかの装置やソフトで、すでに使われていました。とはいえ、いずれも、あるところで、「壁」のようなものにぶつかっており、これ以上のことは、おそらく不可能なのだろうと、私を含めて、すべての開発者たちが思っていたはずです。

 「クッキリン」という名で、この技術を開発していたときの、秘密の目標はWORDでした。このソフトは、主に文章を編集するためのものですが、ここへ貼りつける画像を拡大したとき、こっそり、「クッキリン」と同じような操作を組み込んでいたのです。ただし、WORDにおいては、印刷時にモザイクパターンへと戻ってしまいます。ごく最近知った、PHOTOFILTERというソフトも、同様のレベルの画像を生み出していました。こちらは、印刷も可能なようです。せめて、これらのレベルに追いつく必要がありました。

いろいろな技術を改良してゆくことによって、この問題は、やがてクリアーできて、ほとんど同じレベルの画像を生み出すことができました。WORDPHOTOFILTERの技術が、どのようなものであるのかということが、おそらく、分かったはずです。ここのところの主要なノウハウは、余分な処理をやらないということでした。必要最小限の処理とは、どのようなことかと考えることで、これらのレベルにたどりつくことができました。

 それでも、勝ち目は、ほとんどありません。レベルが同じだったら、コンピュータに付録としてついてくるWORDや、無償で手に入れられる、フリーソフトのPHOTOFILTERと競って勝とうというのは、まったく無謀なことです。これらのソフトと争って勝とうというのであれば、これらのソフトでは不可能なものを生み出さなければなりません。

ここで、私は、考え方を変えることにしました。コンピュータソフトを作っているときに、それらのプロがやっていることと同じことをしていては、追いつくことはできても、抜き去ることなぞ、できるはずがありません。そこで、私は、これまでに学んできた、現代数学のさまざまな技法のことを思い出すことしたのです。幸い、それらの英語や日本語の本は、数多く残してありました。10年ほど前の、世界の最先端の技術が書いてある本です。それらの内容は、まだ古くはなっていません。このような視点の変化を経由して、私は、「ゴブリンアイ」という技術を生み出すことに成功したのです。

 「ゴブリン(goblin)」というのは、英語文化圏での、「小悪魔」や「妖精」です。かつて、科学の入門書で、エントロピーを減少させる、原子大の「小悪魔」がいて、小さな原子の、自由な動きを妨害していると考える説明文を読んだことがあります。このことから、クッキリン処理によって、散らばりすぎた「色のかけら」を、ピクセル大のゴブリンが拾い集めて、もともとの「色の彫像」へと貼りつけているという説明を思いついたわけです。

 それは不思議なことでした。実は、最先端の数学理論を利用して、データ解析の特殊な関数を作用させれば、なんとかなるのではないかと、はじめに考えたのです。そして、あるとき、仮につくった関数で、なんとか、うまくゆきました。これこそ学習の成果、知力の勝利だと思いました。さらに、もっと厳密な関数でやれば、もっと良い画像が得られるのではないかと思い、それを試してみました。すると、結果は、まったくの予想外れで、まっ黒の画像にしかならなかったのです。こんなはずではない。何が間違っているのだろうか。数学理論を間違っているはずがない。しかし、予想に反して、うまくいかないケースでうまくいって、うまくいくはずのケースで、まっ黒の画面になってしまう。私は、何がなんだか分からなくなってしまいました。

このエピソードにはオチがあります。私は、理論的に予想して成功を導いたのではなく、偶然うまくいっただけだったのです。実は、仮につくった関数のところで、初歩的なミスをしていたのでした。ああ、なんと馬鹿なのでしょう。マイナス1とマイナス1を掛けて、マイナス1の値が出ると思いこんでいたのです。そのような失敗をしていることも知らずにいたのでした。ところが、コンピュータは、黙って、プラス1を求めます。こうして生じた関数が、たまたま効力をもっていたのです。失敗が生んだ成功でした。私が、もっと有能であって、かんたんな計算ミスを見逃さず、細かなところまで論理判断を誤らないような、パーフェクトな人間であったとしたら、皮肉なことですが、このような技術を「発見」することはなかったのです。

 さらに不思議なことがあります。これらの技術を調べあげ、もっと効果的な関数を見出してゆくと、それらの効果が、あまりに強すぎて、これらによって処理してゆくと、画像のパターンが見えなくなってしまうのです。これでは、この技術が意味をもつということに気づかなかったかもしれません。しかし、私は、これらの技術の意味に気づいていますから、効果を「弱める」方法を調べればよいということになりました。こうして、いろいろと調べてゆくうちに、最初に見出した仮の関数が、たまたま、ほどよい効果を持つものだということが分かってきました。その、「ゴブリンの角(つの)」は、最初は「二本」だったのです。そして、「二本の角」の長さや、開き具合や、左右非対称の形などが、不思議な効果を生み出しつつ、そのコントロールを難しいものにしていたのです。そのようなことも、「一本だけの角」をもつゴブリンを、新たに飼いならすことにより、結論として、たやすくコントロールできるようになったのでした。

 これらの数学的なエピソードは尽きませんが、これらの具体的な関数式や取扱いかたを公開することはできません。これらは企業秘密の一種です。そのような、語れないことより、見せることのできることを、これから紹介します。見れば分かります。この技術は、とんでもなく不思議なものです。難しい数学理論を語るより、ピクセル大のゴブリンがいて、散らばりすぎた「色のかけら」を拾い集めているのだと言ったほうが、もっと、よく分かることでしょう。

 

 図1は「原画像」と名づけてありますが、ほんとうのところは、一連の解析で用いる「原画像」の図2に対して、その元となるものです。図2では、図10.40倍に縮小して、フィルターを使って色づけしました。図1も、実は縮小してあります。これは葉書きサイズで、年賀状のために彫った木版画でした。いずれにしても、サンプル原画像は小さなものです。図3は、図21画素を8×8画素に拡大したモザイク図です。ただし、このページに収めるため、0.50倍としてあります。

 図4は技術が未成熟であったときの、少しピンボケ気味の解析図です。ここに書いてあるmoz710はプログラムの識別名で、ルーペは解析モードの一つです。図5では、少し技術を洗練させたものです。ピンボケ気味だったものが、やや改善されています。しかし、色の境界に、「にじみ」のようなものが残っています。

 図6WORDによる拡大図です。WORDは、外部の図をページに貼りつけるときに、こっそり縮小しています。WORDでの1600% 拡大図が、クッキリンの×8サイズくらいになります。また、WORDは、拡大するとき、明暗のトーンを変えているようです。また、明暗の境界領域において、明るい部分を少し加工しています。

 そして、図7が、新しく開発した「クッキリン」ソフトの、ゴブリンアイというモードによる解析図です。色がついている領域の、立体的な色の変化(これは版画なので、たまたま立体的に見えるだけ)を残しながら、色の境界部分の「にじみ」を消しています。

 上記の図1, 3, 4, 5, 6と、図7の初期バージョンの画像である「mozin803アピーチ_×8」をまとめたものです。下段の3つが、「クッキリン(旧版moz0710, 新版moz0710)」から「ゴブリンアイ(mozin803)」の変化を並べたものです。



 図9は、「衛星カリストの光るクレーター 4」で解析ソフトの効果を説明するために使ったイラスト原図です。私のホームページにある「キメラミームのページ」のシンボルで、「天使のようなハチと悪魔のようなアリのキメラ」を描いたペン画です。

10は、原図の8%縮小画です。ペイントソフトで縮小するとき、細部の情報が失われ、これを逆に、同じペイントソフトで単純に拡大すると、図11のモザイク図となってしまいます。

これらは、図9 を遠くにおいて、デジタルカメラで撮影したものが図10であるという状況を表わしています。

 図9は、「衛星カリストの光るクレーター 4」で解析ソフトの効果を説明するために使ったイラスト原図です。私のホームページにある「キメラミームのページ」のシンボルで、「天使のようなハチと悪魔のようなアリのキメラ」を描いたペン画です。

10は、原図の8%縮小画です。ペイントソフトで縮小するとき、細部の情報が失われ、これを逆に、同じペイントソフトで単純に拡大すると、図11のモザイク図となってしまいます。

これらは、図9 を遠くにおいて、デジタルカメラで撮影したものが図10であるという状況を表わしています。




 イラストだけでなく、人の顔写真のようなものにおける効果も紹介したいところですが、テストとして解析したものは、明らかに肖像権をもっている人なので、ここで使うことができません。この分野の用途は、大きく広がってゆくはずです。昆虫や植物を撮影した写真なら、いくつか紹介できます。でも、ページも増えてきましたので、自然な風景写真に近いイラストを解析してみようと思います。

14は、私のホームページに早くから収めてある、イラスト詩「すれちがい」の、1ページ目です。これは、ジャングルのようなところを、カメラで覗いたところで、光の強さによる撮影モードを判断するための、「太陽」や「雪だるま」のシンボルマークが描かれてあります。

このたび、ゴブリンアイの新技術を開発して、星空の写真などを見ていましたら、×32の倍率で終わらせる必要はないとうことに気がつきました。そこで、この2(面積では4)の、×64のモードを組み込みました。このような倍率の解析図が意味をもつというのも、ゴブリンアイの技術によって、ピンボケ度を大きく減らすことができたからです。図14の、小さな×64の窓の中には、図15のモザイク図が入っています。図16クッキリン処理だけのもの。そして、図17が、さらにゴブリンアイ処理を加えたものです。

(2009.08.29 Written by Kinohito KULOTSUKI )

参照資料

[1] 衛星カリストの光るクレーター 4」「%284%29」部分は「(4)」と書かれています。

http://www.treeman9621.com/CPP105_ShiningCraters_onMoonCallisto%284%29.html