YPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN"> マイケルソン・モーリー実験のきっかけはマクスウェルよるアイディアから

マイケルソン・モーリー実験のきっかけはマクスウェルよるアイディアから

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

キメラミームのページへ戻る

 マクスウェルによるアイディア

 電磁気学のマクスウエルの理論で有名な、ジェームズ・クラーク・マクスウェルは、当時の物理学における重要な問題であった、「宇宙空間を満たしているはずのエーテルと光の速度cと地球の移動速度vと関係」について、ある解析モデルを考え、「光の行路差」を見積もって、次のような結論に至ったとされています[参照1]。

 光速度を測定する地球上のあらゆる方法では、光は同じ道筋を通って帰ってくる。エーテルに対する地球の運動は、往復で、光速に対する地球の速度の比の2乗だけ変化するが、これは小さすぎて観測できない。

 これは、「マクスウェルがワシントンの航海年鑑局に勤務していたデイヴィッド・ペック・トッドに宛てた手紙」[参照1] に記されていました。
 このとき、「トッドの同僚でアメリカ海軍士官であったアルバート・マイケルソン」[参照1] が、このことを知って、この値を観測する方法を目指した、ということです。

 光速に対する地球の速度の比の2乗

 この値は、光速度 c と、宇宙空間を満たしていると考えられたエーテルに対する地球の速度 v とを考えると、(v/c)2 と表現されます。
 マクスウェルがどのような解析モデルを考えていたのかについては、資料を探せませんが、マクスウェルのアイディアに応じて、マイケルソンがモーリーとともに行った実験と、その結果についての資料などは詳しく残されています。それらを参照して推定すると、およそ、次のような解析モデルであっただろうと考えられます。

図1 マイケルソン・モーリー実験のモデル

 図1の(a)実験モデルは、マイケルソン・モーリー実験を静止状態で描いたモデルです。光源Sから出た光が、銀をうすく吹き付けたハーフミラーHで、Y軸のミラーMY に向かうものと、X軸のミラーMX に向かうものとに分けられ、それぞれ同じ距離Lを進んで、それぞれの鏡で反射し、ハーフミラー H のところで、合わさって、観測装置 D へ向かいます。この実験モデルでは、X軸方向へ向かった光と、Y軸方向へ向かった光の経路の長さは同じと考えられます。
 しかし、図1の(b)解析モデルでは、この装置全体がX軸方向に速度 v で動いているということを考えてモデル化されています。このとき、X軸方向へ進む光の経路と、Y軸方向へ進む光の経路は、同じにならないのです。

 X軸に沿って進む光の経路と時間

 X軸に沿って進む光がハーフミラー H0 を通りすぎ、ミラー MX に向かって、光速度 c で t1 時間進みます。このときの距離は ct1 と表されます。はじめ、この光は距離 L の分だけ進もうとしたかもしれませんが、このとき、鏡 MX は vt1 だけ遠ざかっています。これらのことを考慮すると、次のような式が成立します。

   ct1 = L + vt1

 ここからt 1 を求めると、次のようになります。

  t1 = L / ( c − v )

 ミラー MX で反射して、光が距離Lを進もうとするとき、こんどは、反射して観測装置 D へと向かうハーフミラー H が、このときの時間 t2に対して vt2 だけ近づきます。このことから、次の式が成立します。

   ct2 = L − vt2

 ここから t2 を求めると、次のようになります。

  t2 = L / ( c + v )

 これらのことを総合すると、異なる経路を動くX軸方向の光の時間 TX は、次のようになります。

  TX = t1 + t2
    = L / ( c − v ) +  L / ( c + v )     

 Y軸方向に進む光の経路と時間

 ハーフミラー H0 で折れ曲がって、Y軸方向のミラー MY に光が進もうとするとき、このシステム全体はX軸方向に速度 v で進んでいますから、折れ曲がってから反射するまでの時間を t0 とおくと、光速度 c で、H0 と MY の、斜めの距離を進むと考えられます。このときの三角形の距離についての関係から、次の式が成り立ちます。

   (ct0)2 = L2 + (vt0)2

 ここから t0 を求めると、次のようになります。

   t0 = L / ( c2 − v2 )1/2

 H0 から MY で反射して H2 へと向かう道のりは、この2倍で、時間は 2t0、速度は c ですから、異なる経路を動くY軸方向の光の時間 TY = 2t0 は、次のようになります。

  TY = 2t0 
    = 2 L / ( c2 − v2 )1/2      

 異なる経路を進む光の時間差

 これらの時間差 △T を次のように定義します。

   △T = TX − TY

上記の式に基づき、式を書き下すと、次のようになります。

   △T = L / ( c − v ) + L / ( c + v ) − 2 L / ( c2 − v2 )1/2    
      = L [ { c - v + c + v } / ( c2 − v2 ) ] − 2L / ( c2 − v2 )1/2   
      = 2Lc / ( c2 − v2 ) − 2L / ( c2 − v2 )1/2   
      = 2L / c [ 1 − (v/c)2 ] − 2L / c [ 1 − (v/c)2 ] 1/2
      = ( 2L/c ) [ 1 / { 1 − (v/c)2 } − 1 / { 1 − (v/c)2 } 1/2 ]

 ここからの計算は、近似となります。
 値 x が 1 に比べて、0 のほうに近いくらい小さいことを x<<1 と表します。このような x に対して、数式の近似として、次の関係が使われます。

    1 / ( 1 − x )   ≒ 1 + x      
    1 / ( 1 − x) 1/2 ≒ 1 + x/2

 上記の式で v/c が、このときの x に対応します。このこと使って、△T の近似式を求めると、次ようになります。

   △T ≒ ( 2L/c ) [ 1 + (v/c)2 - 1 - (1/2)(v/c)2 ]
   △T ≒ ( L/c ) [ (v/c)2] 

 マクスウェルは、このときの △T における近似値の、(v/c)2 について、「小さすぎて観測できない」と評価したようです。
 マイケルソンとモーレーは、光の干渉という現象を使って、このように小さな値を検出できる実験システムを開発してゆき、そして、その実験を行ったわけです。

 ここまでの要点

 こまかく計算したことにより、かえって、分かりづらくなってしまったかもしれません。
 ここで理解して、憶えておいてほしいことがあります。

 図1の「マイケルソン・モーリー実験のモデル」における「(b) 解析モデル」においては、X軸方向に進む光と、Y軸方向に進む光とで、経路差があり、それに応じた時間差がある。

 このように見積もられるということです。

 マイケルソン・モーリー実験の結果は

 1887年に行われたマイケルソン・モーリー実験においては、太陽系を基準としたときの、地球の公転における 30km/秒 が、上記のモデルによるvとして求められると期待されていたものの、その解析結果は 8km/秒 くらいだったとされています。
 しかし、この値は、その後繰り返された、この種の実験により、ほぼ 0km/秒 と見積もられるようになりました。
 1900年前後の、ローレンツ、ポアンカレ、アインシュタインによる、ローレンツ変換と特殊相対性理論が現れたあとも、工夫を加え、1930年ごろまで、このような実験の改良版が何度も行われたそうですが、地球の速度として検出されるべきvの値は、ほぼ 0km/秒 です。
 上記の「要点」によれば、「X軸方向に進む光と、Y軸方向に進む光とで、経路差があり、それに応じた時間差がある」はずでした。
 しかし、実験結果によれば、このような「時間差」は観測されなかったのです。
 すると、「経路差」もないということでしょうか。
 この問題は、ここでかんたんに判断できるものではないようです。
 このあと、アインシュタインなど、世界の物理学者たちが、どのように考えていったのかを調べてゆこうと思います。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, July 17, 2018)

 参照資料

[参照1] ウィキペディア「マイケルソン・モーリーの実験」

キメラミームのページへ戻る