相対性原理と光速度不変の原理は万能ではない

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 相対性原理と光速度不変の原理の定義

 ローレンツ変換の公式群を導く§3の一つ前、§2のさいしょのところで、アインシュタインは、「相対性原理」と「光速度不変の原理」について、次のように定義している。
    

図1 相対性原理の定義(模式図)

    

図2 光速度不変の原理(模式図)

 このあと、§3において、「相対性原理」や「光速度不変の原理」が説明文として使われるところを調べてみよう。
    

図3 「光速度不変の原理」が拡大解釈

 図2によれば、光速度不変の原理の定義では、静止系ではない運動系の光については何も定義していない。そして、この図3の状況では、運動系の中での光と、それを静止系に投影した光について、光速度不変の原理を適用しているように見えるが、そのような定義や証明あるいは論証については行われていない。
 図2の光速度不変の原理を物理法則と見て、図1の相対性原理を適用したときの模式図を作って図4としたが、図3のような、運動系の中の光を静止系に投影するということを説明できるようにはならない。ここに描かれている速度は、3つとも別々のものなのである。光についても、速度は同じだが、別々のものである。

図4 光速度不変の原理を物理法則と見て相対性原理を適用すると

 相対性原理というのは、あくまで、並進する二つの座標系において、物理法則の記述が同じになる、ということである。

 式(2) から、次の中間式(6) を導いたあとにも、次のような記述がある。
   τ=a [ t -{ v/(c2-v2) } x’ ]         (6)
    
 ここまで数式変換によるプロセスが進むと、どこで光速度不変の原理が使われ、何と何に対して相対性原理が適用されたのか、ほとんど分からない。

 まとめ

 アインシュタインが§2でまとめた、相対性原理と光速度不変の原理の定義を読むと、この後のローレンツ変換を導出するところで、この定義とは異なる使われ方をしている。
 このような拡大解釈ができるのかどうかということは、まったく論じられていない。
 よって、このような拡大解釈がなされている、運動系における光と運動系がもつ速度とを、静止系に投影して生み出したタウ関数と、もとの運動系における時刻の関係式とを同一視することはできない。
 (Written by KLOTSUKI Kino Hito, July 28 2018)

 参照資料

[1]「運動している物体の電気力学について」、アインシュタイン選集1、湯川秀樹(監修)、中村誠太郎・谷川安孝・井上健(訳編)、共立出版(刊)、昭和46年3月1日
[2] 「アインシュタイン 特殊相対性理論」、内山龍雄訳・解説、岩波文庫、井波書店刊 1988-11-16

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