空想のローレンツ変換が生み出されたわけ

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 マイケルソン・モーリー実験

 マイケルソン・モーリー実験は、太陽系に対して公転運動(v)している地球において、この速度の方向の光と、これに直角な方向の光との、経路の時間差を調べ、光速度cと速度vの比の二乗(v/c)2 の値を求めようとしたものであったが、じゅうぶんな技術的精度であったにもかかわらず、地球の公転速度vは、ほとんどゼロと観測された。
 地球が公転していることは、遠い恒星や比較的近くの惑星との位置関係などから求められたはずである。
 マイケルソン・モーリー実験は、地球の公転運動を知ることが目的だったわけではなく、光とエーテルの関係を調べるために、太陽系と地球の関係が利用されたということである。
 それでは、光とエーテルの関係はどうなったのか。アインシュタインが特殊相対性理論の中で、エーテルは必要がないと主張したため、エーテルについて言明するのは、まるで非科学的なことであるかのようになってしまった[1] [2]。
 最近、あるサイト [3] で、意外な視点があることを知った。仮に太陽系とともにエーテルの海があって、地球がその中を公転運動で動いているとき、地球の朝においては、エーテルの風(波)は、実験施設の真上から地表に向かって降りてくる。そして、夕方には、実験施設の周囲から集まって来て、真上へと向かって登ってゆく。マイケルソン・モーリー実験は、ちょうど、その、朝と夕方に行われたらしいのである。エーテルの効果を最も受けやすい時間は真夜中ということになる。しかし、こんなことに気づいて実験したチームがあっただろうか。
 ともあれ、このような実験結果から、やがて、運動系kにおいて、光は、この運動系が持っている速度vにかかわらず、一定の速度cで走るということが認められるようになった。

図1 運動系kの中で走る光

 ところが、この現象は、そのまま素直に受け入れられはしなかった。
 マイケルソン・モーリー実験において地球は運動系であり、観測できる座標系は、この運動系だけであったにもかかわらず、いつしか、この時代の物理学者たちは、自分たちが存在する座標系が定常系であると思い込み、定常系と運動系とで、空間と時間の性質が異なるものと考え、これらの座標系の間での変換公式として、ローレンツ変換を生み出した。
 このとき、これらの座標系における、座標系全体に作用する速度と、光が組み合わさってモデル化され、それが物理的な現実とみなされた。
 このようなモデルが正しくないかもしれないということは、これまで一度も考えられなかったらしい。

 Y軸方向の光

 マイケルソン・モーリー実験のモデルとして、地球の公転速度の方向は、実験では東西となり、解析モデルではX軸に向けている。Y軸は、現実の実験では南北に対応している。
 X軸を往復する光と、Y軸を往復する光について、その経路に差が生じ、その時間差が調べられた。しかし、実験の結果、その時間差は検出されなかった。
 Y軸を往復する光についての経路や速度については、これまでにも議論されてきたらしい。
 アインシュタインをはじめとして多くの物理学者たちは、これまで、図2の定常系(静止系)のモデルに示してあるように、光はH1MYとMYH3の、斜めの経路を光速度cで走るとしている。
 これに対し、日本の研究者である窪田 登司氏は、レーザー光がまっすぐ進む現象を持ち出し、光が斜めの経路をとることについて批判している。
 これについての説明を考えることにした。

図2  Y軸方向の光についての定常系と投射系による解釈

 図2(右)として、他の座標系に対して速度vをもつ運動系で、光がY軸方向を往復するときの様子を、スクリーンのように見た投影系という空間に、3つの時間に分けてプロットした。このとき、光はY軸に沿って進もうとするが、座標系全体が動いているので、結果的に、Y軸の鏡MY のところに光が到達するころには、少しX軸の正の方向にずれてしまう。光が斜めに走ったのではなく、座標系がX軸方向に動くので、斜めに走ったように見えるのである。
 鏡で反射してハーフミラーH2に光が戻ろうとするときも、座標系全体が動いているので、結果的にハーフミラーH3 のところに向かった。
 投影系での光は、Y軸に沿って光速度cで走る。だから、斜めのH1MYとMYH3の経路では、cより大きな速度となる。しかし、これは座標系の動きによって、そのように見えてしまうだけであり、仮想空間でのできごとである。
 Y軸方向の光についての速度に関しては、もうひとつ議論すべき問題がある。
 アインシュタインは図2の定常系モデルにおいて、光が、斜めのH1MYとMYH3の経路を光速度cで走るとしているが、このとき、Y軸に沿った距離Lの経路について光はcより小さな速度となってしまう。
 これに対して、運動系では、Y軸に沿って光が進むときの速度はcである。
 運動系ではcで走っていた光が、定常系ではなぜ遅くなってしまうのか。
 定常系で斜めに走っていた光を運動系で見れば、経路H1MYを走ることになるから、運動系ではcでよいのだと、反論されるかもしれない。
 この反論はおかしい。観測事実として、ほんとうにあったのは運動系のほうである。それに対して、このときの定常系はただのモデルにすぎない。観測事実を否定して、モデルのほうを正しいと主張するには、すべてのことを整合的に説明できなければならない。
 投影系で斜めの経路で光の速度がcを越えて見えることは説明した。
 定常系でY軸に沿う経路で光の速度がcより遅くなるのは、いったいどのような理由からなのか。

 X軸方向の光

 Y軸方向の光については、運動系の速度がX軸に沿っているので、モデル図を描きやすかった。
 これに対して、X軸方向に往復する光についてのモデル図を、静止している平面に描くのは難しい。そこで、下向きに時間軸をとることにより、X軸を上下に展開することにした。
 これらのモデル図に使ったx’は定数としてLとしたほうが分かりやすいが、アインシュタインの式との対応のため、x’とした。ここではただの区間長を示す。
 げんみつにモデル化するには、時間をいれて、速度vではなく、距離のvt などとすべきだが、考え方を説明するには煩雑になるので、省略した。

図3  X軸方向の光についての定常系による解釈

 定常系(静止系)Kのストーリー
(K1) 長さX’の区間がある。
(K2) ある時間t1を考えると、この区間は速度vによって動かされる。
(K3) この区間の末端からスタートした光は、速度vで動いた区間の先端まで走る。
 よって、このときの関係から、t1=x’/(c-v) となる。
(K4) ある時間t2を考えると、この区間は速度vによって動かされる。
(K5) このとき、光が反射するときの、区間の先端の位置は(K2)のときの位置で、たどりつく末端の位置は(K4)のものである。
 よって、このときの関係から、t2=x’/(c+v) となる。
 このように、定常系Kでのモデルにおける時間は、運動系kにおける時間と対応していない。

図4  X軸方向の光についての投射系による解釈

 投影系Tのストーリー
(T1) 長さX’の区間がある。
(T2) ある時間t1を考えると、この区間は速度vによって座標ごと動かされる。
(T3) 同じ時間において、この区間x’を光が光速度cで走るが、これも、速度vによって座標ごと動かされる。
(T4) このときの光は、見かけ上 c+v の速度で動いていることになる。
(T5) (T2)の位置に長さx’の区間がある。
(T6) ある時間t2を考えると、この区間は速度vによって座標ごと動かされる。
(T7) (T5)の区間の先端で反射した光は、この時間において、末端に戻ろうと、光速度cで走ろうとするが、座標系全体がvで動いているので、その分押し戻されてしまうことになる。
(T8) このときの光は、見かけ上 c-v の速度で動いていることになる。

 このとき、(T6)に示したaの区間は(T8)の見かけの光(c-v)が進む距離である。
 このaの値は a = {(c-v)/c} x’ となる。
 時間は t2=a/(c-v)=[ {(c-v)/c} x’]/(c-v)=x’/c となる。
 (T2)と(T3)より t1=x’/c である。
 投影系Tにおける時間は、運動系kの時間とうまく対応している。

 投影系Tと定常系Kの違い

 次の図5として、投影系Tと定常系Kの違いを整理した。

図5 投影系Tと定常系Kの違い

 定常系Kで(K3)の光と同じ長さをもつものは、投影系Tにおいては、見かけの光となっている。定常系Kにおける光の速度はcであるが、投影系Tにおいては c+v となる。
 定常系Kで(K3)の光が動く時間 t1=x’/(c-v) であるのに対し、(T3)での速度vは座標系全体にかかるものであり、右に描いてある光(c)と同じ時間であり、ここでの時間は光についてだけ考えればよいから、t1=x’/c となる。
 戻る光についても、ほぼ同じ対応が成り立ち、光が動く時間t2 の値も異なってくる。
 投影系Tの時間は、運動系kの時間と、完全に等しくなる。
 これに対して、定常系Kの時間は、運動系kの時間と異なる。アインシュタインはこの違いを利用して、定常系Kにおけるタウ関数を構成した。

 定常系Kの光は運動系kの光と同じものではない

 アインシュタインの特殊相対理論においては、運動系kを走る光が、定常系Kへと写される。このとき、運動系kでは、この座標系の外にあった速度vも、定常系Kの中で表される。定常系Kの中の光は、この速度vによって区間x’が動かされるので、運動系kでの光より長く走ることになる。このとき、光速度不変の原理のため、光の速度はすべてcである。
 このときの、運動系kの光と、定常系Kの光とは、同じものではないことを証明する。

図6 定常系Kの光は運動系kの光と同じものではない

 光は光線として棒のようなものが走ってゆくというイメージがあるが、もっと詳しく見ると、波動の性質を持っていて、ピークと底をもつ振動を繰り返して進むのである。マイケルソン・モーリーの実験は、光が持っている振動についての「位相のずれ」を検出するという手法を使って行われたのである。
 光は波動であり、一つの波の長さを波長(λ)と呼ぶ。光は電磁波の一種であり、その違いは、波長にある。肉眼で見ることのできる光の波長は、紫色の380ナノメートルから、赤色の780ナノメートルくらいに広がっている。
 光が1秒間に何回振動しているかを周波数(f)と呼ぶ。現在の単位は[Hz](ヘルツ)であるが、これに代わる前は [サイクル/秒] であった。サイクルとは、1回の振動を意味する。
 光の速度c [m/s] と、波長(λ)と振動数(f)の間には、次の関係がある。

     f = c/λ [Hz]                    (1)

 考察をかんたんにするため、図6のx’の区間を、光が1秒間に進む距離 30万km としよう。
 運動系kで考えると、

     t0 = x’/c = 1 [秒]              (2)

となる。
 この1秒間に光が何回振動(サイクル)するかを求めよう。1秒間のサイクル数なので、(1) の式を使うことができる。
 計算をかんたんにするため、このときの光を波長(λ)600ナノメートルの濃い黄色としておこう。1ナノメートルとは、10億分の1であり、10-9[m] と表現される。よって、600ナノメートルは、6.0×10-7[m] となる。
 光の速度30万 [km/s] は 3.0×108 [m/s] と表わされる。

     f = 3.0×108[m/s] / 6.0×10-7[m]
      = 0.5×1015
      = 5.0×1014 [サイクル/s]               (3)

 運動系kの光において、1秒間のサイクル(振動回数)をS0とすると、

     S0 = 5.0×1014 [サイクル]      (4)

となる。

 図6の定常系Kの光について考えよう。
 この光は、運動系kの光より長く走っている。光速度が同じなので、これらの光の長さは、時間の長さと比例している。

     t1 = x’/(c-v)          (5)
     t0 = x’/c            (6)

 これらの値を使って、運動系kの光に対して定常系Kの光の大きさを求めよう。

     t1/t0 = [x’/(c-v)] / [x’/c]
        = c/(c-v)
                (7)

 分母が少し小さくなるので、この値は1より大きくなる。
 この値を使って、定常系Kの光が振動する回数(サイクル)S1を求めると、次のようになる。

     S1 = 5.0×[c/(c-v)]×1014 [サイクル]      (8)

 具体的な値を v=0.1c と決めて数値計算しよう。

     S1 = 5.0×[c/0.9c]×1014
       = 5.55…×1014 [サイクル]       (9)

 このときの解析結果を図7にまとめた。

図7 定常系Kの光と運動系kの光とでは総振動数(サイクル)が違う

 定常系Kの光と運動系kの光とでは総振動数(サイクル)が違うので、これらの光は同じとはみなせない。
 もし、これらの総振動数を同じとするには、定常系Kの光の波長(λ)を長くするしかない。すると、光の色が変わってしまう。
 いずれにしても、運動系kの光は、定常系Kの光とは、同じものではない。
 このような考察は、図2で見比べた、Y軸方向における、定常系Kの光においても行うことができ、運動系kの光の総振動数より大きくなってしまう。
 これらのことより、運動系kと定常系Kとで、光の総振動数が異なってしまうことから、アインシュタインが仮定した相対性原理が成り立っていないことになる。
 よって、運動系kの光を、これまで行われてきたように、定常系Kへと移すことはできない。
 運動系kの光と、定常系Kの光とは、同じものではない。[証明終]

 空想のローレンツ変換が生み出されたわけ

 マイケルソン・モーリー実験は、地球という運動系がもつ速度vを検出するという手法で、エーテルと光の関係を突き止めるために行われた。
 解析モデルでは、確かな値が生ずるはずであったにも関わらず、このときの速度vは検出されなかった。
 物理学者たちは、マイケルソン・モーリー実験の解析モデルをAとBとして、@との違いに注目し、空間と時間が複雑に関係しあうという、ローレンツ変換に必要な条件を生み出し始めた。
 アインシュタインは、運動系における光のふるまいを定常系へと写して、拡大解釈による光速度不変の原理により、あらたな条件を組み込んで、運動系とは物理的な対応がとれない状態にした。
 Bの関係は、アインシュタインがタウ関数の方程式を立ち上げるときのモデルとしている。
 Aの関係も、アインシュタインはローレンツ変換への導出の過程で利用している。
 運動系の光とは同一視できない光を定常系で描くというモデルにより、運動系と定常系での光にかかわる時間が異なるという状態とした。
 ここから、運動系に対して、時空の構造が異なる、定常系という座標系が生まれることになった。
 こうなってしまえば、これらの異質な空間において、それらの間の物理法則の記述を整えるため、ローレンツ変換を生みだすしか方法は見つからなかった。

 しかし、上記の考察と証明により、定常系KのAとBの光は、運動系kの光@と同じものではなく、これらの光を同一視することはできない。
 論理的なつながりを図式で示せば、次のようになる。ここで は論理の断絶を示す。

    @  (A, B) → C 

 このことが理解できていれば、@の状態から、Cのローレンツ変換へと進むことは考えられなかったはずである。

図8 空想のローンツ変換が生み出されたわけ

 まとめ

 ローレンツ変換は、定常系と運動系における光が同一視され、そのふるまいが異なることに着目し、その原因が、これらの座標系の時空の様子が異なるとみなし、これらの座標系の間で、物理法則の記述が同じとするために生み出された。
 しかし、 このようにして同一視されてしまった、定常系と運動系での光は、それらの総振動数が違うので、相対性原理は成りたたず、同一視できないものであった。
 ローレンツ変換の原因とみなされた、定常系と運動系での光のふるまいが異なるということは、ほんとうのことではなく、間違って生み出されたものであった。
 ローレンツ変換は、定常系と運動系において光が走る時間が異なるという、偽りの現象をほんとうのこととして問題視するところから生み出された。
 本来生まれる必要のなかった、空想の座標変換である。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, July 31, 2018)

 参照資料

[1]「運動している物体の電気力学について」、アインシュタイン選集1、湯川秀樹(監修)、中村誠太郎・谷川安孝・井上健(訳編)、共立出版(刊)、昭和46年3月1日
[2] 「アインシュタイン 特殊相対性理論」、内山龍雄訳・解説、岩波文庫、井波書店刊 1988-11-16
[3] 相対性理論は間違っている の中の
(b) マイケルソン・モーレーの実験は果たして成功しているのか?
(b) マイケルソン・モーレーの実験は果たして成功しているのか?
 自転で考えれば、エーテルは東から西へ流れるだけですが、公転ではそうは行きません。
 公転の場合エーテルの流れは、朝・昼・夕・夜で変わって来ます。
 夜は東から西へと流れ、昼は西から東へと流れていきます。そして、朝方には頭上から降り注ぎ、夕方には天空へと昇って行きます。
  『現代物理の世界‐T 相対性理論と量子力学の誕生』 講談社 151頁によりますと、結論を出した「最後の実験は1887年の8月の8,9,10,11日及び12日の朝と夕方に行われた」とあります。
  公転では、エーテルは朝方には頭上から降り注ぎ、夕方には四方から集まって天空に昇って行きます。これでは、回転台をどっちに回しても無駄でしょう。


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