定常系モデルはリアルなものではない

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 さいしょに運動系があった

 光は振動する波であることが分かった。そこで、水面を波が広がるように、地中を地震の波が伝わるように、光も、伝わるための媒体があるはずだと考えられた。この媒体はエーテルと呼ばれた。
 地球が太陽系の中で公転していることは、他の星々との関係から調べられていた(ことだろう)。
 太陽系も動いていそうだが、仮に、この太陽系を基準として考えたとき、この太陽系のエーテルに対して、地球で光の速さを調べれば、光の速さcに対する地球の公転速度vの比が求められるのではないかという解析モデルが提案された。しかし、この解析では、v/cの2乗の値となり、とても観測できるレベルではないとみなされた。
 この解析モデルとその予測について知ったマイケルソンが、光の干渉という現象を利用して、このようなレベルの違いについても観測できる技術を生み出し始めた。
 やがて、マイケルソンはモーリーとチームを組むことで、さらに技術が向上し、このような現象についての実験(マイケルソン・モーリー実験 1887年)が行われた。

図1 さいしょに運動系があった

 技術的な精度も高めながら、何度も繰り返し、実験が行われたが、このような方法では、地球の公転速度vの値は検出されなかった。
 このとき実験が行われた地球は、この解析モデルにおいては、明らかに運動系であった。

 定常系モデルが解析モデルとして使われた

 マイケルソン・モーリー実験における解析モデルは、実は、運動系の視点からのものではなく、運動系が動いているとしたときの、基準となる定常系(翻訳者の違いにより、静止系とも訳される)の視点によるものだった。つまり、このときの解析モデルは、太陽系としての定常系から見た状況をモデル化して構成されていた。
 それなのに、そこで生じる、光の経路の差に基づく時間差を、定常系ではない運動系において観測しようとしたわけである。いつしか、定常系モデルも、実験の観測者がいる現実世界の運動系でも成立すると考えられてしまった。

図2 定常系モデルが解析モデルとして使われた

 しかし、このような実験結果から、現実世界である運動系においては、その外部で作用する速度の影響を受けずに、光は、一定の速度cで走るということが認められるようになった。

図3 運動系の中でのマイケルソン・モーリー実験

 射影系モデルで考えてみると

 黒月樹人は、定常系の視点で見た解析モデルに対して、運動系の中で光が走るとき、光にはかかわりなく、この運動系の座標全体が動くということを考えて、射影系モデルを考えた。

図4 Y軸方向へ進む光についての、定常系モデルと射影系モデル

 これはただのモデルであって、リアルなものとはみなせないが、運動系の中の光について、速度や方向、経過時間、総振動数など、相対性原理を忠実に守りつつ描写することになっている。
 これに対して、定常系モデルにおいては、ここで成立すべき条件として、光速度不変の原理が強く組み込まれたため、運動系の光と同じものとしてみなされるはずの、定常系モデルにおいての光で、経過時間が異なることとなり、これに応じて、総振動数が変わってしまうことになった。これは、運動系と定常系で相対性原理が成立していないことを意味する。

 射影系モデルと同じように定常系モデルもリアルなものではない

 射影系モデルにおいては、光の動きとは関係なく運動系座標が動くとみなしてゆくので、その結果、見かけ上、これらの速度がベクトルとして合成されることになり、光速度cを上回って光が走る経路が生ずることになる。しかし、これは、別の座標系へ投影したための、見かけ上の現象であり、リアルなことではないと了解している。
 ところが、運動系での光について、相対性原理をまもることなく、異なる光として描写した、定常系モデルのほうは、マイケルソン・モーリー実験での結果を説明できないまま、特殊相対性理論 [1] [2] の中で、あたかもリアルなものであるかのように、理論構築の基盤となる数式を生み出すことに利用されている。
 そして生まれたローレンツ変換が、いくつものパラドックスを生み出しながらも、それらの矛盾の種については無視され、この現実世界を描写するものとしてみなされている。
 空想のローレンツ変換が生み出された理由は、これだけではないが、その中の一つの大きな要因は、定常系モデルでの解析モデルが、現実をリアルに描写しているものとみなされたことにある。
 射影系モデルと同じように、定常系モデルもリアルなものではないのである。
 さらに、私たち観測者は、そのどちらでもなく、まったく別のものとみなされる、リアルな運動系に存在しているのだ。

図5 射影系モデルと同じように定常系モデルもリアルなものではない

 (Written by KLOTSUKI Kinohito, Aug 2, 2018)

 参照資料

[1] 「運動している物体の電気力学について」、アインシュタイン選集1、湯川秀樹(監修)、中村誠太郎・谷川安孝・井上健(訳編)、共立出版(刊)、昭和46年3月1日
[2] 「アインシュタイン 特殊相対性理論」、内山龍雄訳・解説、岩波文庫、井波書店刊 1988-11-16

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