ローレンツ変換だけでマックスウェル−ヘルツ方程式は変換できない

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 前回まとめた「ローレンツ変換はマクスウェル方程式を変換していない」では、アインシュタインの特殊相対性理論 [1] [2] の「U. 電気力学の部」の「§6. 真空中におけるマックスウェル−ヘルツの方程式の変換. 磁場内にある物体の運動に伴って生ずる起電力の性質について」のところにある、大量の数式群の意味をつかむため、これらの数式群のうち、さいしょに現れる一つについて、ローレンツ変換を行って、どのようになってゆくかをたどった。
 かんたんにまとめたかったが、アインシュタインが行っていることは、かなり複雑なことなので、とても長くなってしまった。しかも、ローレンツ変換にともなう、偏微分の計算を、かなりたくさん続けてゆく必要があった。
 それらの計算を終えて、これらの計算によって現われた数式群の意味について論じたが、この意味が分かってもらえるかどうか、心もとない。
 そこで、今回の解析ページでは、このような数式の変化をたどってゆくことは避けて、全体像を眺めながら、鳥瞰的な視点で、アインシュタインがここで行ったことの意味を理解できるようにと、完全に(中に数式は入っているが)画像と説明のみでまとめることにした。

 電磁気学のマクスウェル理論

 電磁気学のマクスウェル理論について図1にまとめた。

1 電磁気学のマクスウェル理論

 静止系(定常系)でのマックスウェル−ヘルツ方程式

 アインシュタインが解析のために取り上げた静止系(定常系)でのマックスウェル−ヘルツ方程式を図2とする。
 アインシュタインは、上記の(M3)で電流密度をゼロとし、真空中での事象として、誘電率や透磁率と光速度の関係も利用して、向かって左の列を構成した。右の列は((M4)そのものである。(M1)と(M2)については、あとの計算で利用しているが、とくに取り上げるほどのこともないと考えていたのだろう。

図2 静止系(定常系)でのマックスウェル−ヘルツ方程式

 ローレンツ変換

「T. 運動学の部」で導かれたローレンツ変換の意味は、定常系に対して速度vで動いている運動系を考えたとき、ある物理現象を、これらの二つの座標系から観察したときの、座標値を変換するということであった。
 運動系から定常系に向かっては、逆解析という変換式を導くことができる。
 このように、定常系の座標値と運動系の座標値が、相対性原理にもとづき、同じ現象について記述するように変換するものであった。

図3 ローレンツ変換の意味

 運動系でのマックスウェル−ヘルツ方程式

 運動系でのマックスウェル−ヘルツ方程式を図4にまとめた。
 これは、定常系と運動系との相対性原理に基づき、物理現象の表現式が、変数を読みかえるだけで、同じ形になるとしたものである。ダッシュがつけてあるEやBは、運動系での電場や磁束密度(ベクトルの成分)である。

図4 運動系でのマックスウェル−ヘルツ方程式

 ローレンツ変換は定常系と運動系を相対性原理でつなぐはず(?)

 「T. 運動学の部」で導かれたローレンツ変換の役割を考えると、次の図5のようになるはずであった。

図5 ローレンツ変換は定常系と運動系を相対性原理でつなぐはず(?)

 実際に計算してみると…

 実際に計算してみると、これまでの考えとは相いれないことがおこった。
 図6に従って説明する。
 @定常系でのマックスウェル-ヘルツ方程式に、Aローレンツ変換をほどこすと、D運動系のマックスウェル-ヘルツ方程式にはならず、Bローレンツ変換したマックスウェル-ヘルツ方程式になったのである。Dに比べBはかなり複雑な表現式となっている。
 そこでアインシュタインは、BとDを見比べ、Cのような「つなぎの変換」(この名前は黒月樹人がつけたもの。アインシュタインは、ただの「変換」としている)というものを生み出した。
 このC「つなぎの変換」は、BとDをつないで、同じ値を表現するためには、どのようであればよいかという視点で導かれたものである。
 この変換が正しいという証明や観測はなされていない。
 定常系と運動系をローレンツ変換で関係づけようとしてローレンツ変換を行ったとき、自動的にCも行われて、BとDをつなぐという保証は、どこにもない。

図6 実際に計算してみると…







 考察

 アインシュタインは、定常系と運動系の間でマックスウェル-ヘルツ方程式で表現される現象が同時に観測されたとき、@→A→B→C→Dのルートが、必ず正しく働くと考えてしまい、「U. 電気力学の部」の、このあとの解析で、何の疑いもなく、AとCが共同して働くと見なして解析を進めている。
 これは論理的な思考とは呼べない。
 ここでの「つなぎの変換」は、電場Eと磁束密度Bであったが、他の電磁気の現象を考えたときは、電流密度iと電荷密度ρのための「つなぎの変換」が必要となり、電磁気現象をベクトル・ポテンシャルAとスカラー・ポテンシャルΦで表現するときには、これまた別の「つなぎの変換」というものが必要となる。
 アインシュタインをはじめとする物理学者たちは、これらの「つなぎの変換」が証明されたものでも、実験によって観測実証されたものでもないということを知りながら、電磁気現象についてローレンツ変換を行うときの「仮定」と言いつつ、これらの「つなぎの変換」が成立するとして、@→A→B→C→Dのルートが、いつも正しく機能すると考えているらしい。
 まったく、理解に苦しむ。
 (Written by KLOTUKI Kinohito, Aug 8, 2018)

 参照資料

[1] 「運動している物体の電気力学について」、アインシュタイン選集1、湯川秀樹(監修)、中村誠太郎・谷川安孝・井上健(訳編)、共立出版(刊)、昭和46年3月1日
[2] 「アインシュタイン 特殊相対性理論」、内山龍雄訳・解説、岩波文庫、井波書店刊 1988-11-16

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