消える運動系のパラドックス

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 これは、アインシュタインの特殊相対性理論 [1] [2] の批判ページである。
 アインシュタインはローレンツ変換の公式群を導いたあと、これの応用として、いくつものパラドックスの源泉を導いた。
 @(進行方向の)ローレンツ収縮、A(運動系の)時間の遅れ、Bローレンツ変換の合成速度
 これらのうち、@とAについては、いくつかのパラドックスが知られている。Bについてのパラドックスはあまり見当たらない。Bそのものがパラドックスなのかもしれない。
 黒月樹人は、A(運動系の)時間の遅れ について考えてゆくうちに、これまでの理解が間違っていることに気がついた。時間の遅れは、運動系全体で同じように起こるのではなく、座標の位置によって変わってくるのだ。
 アインシュタインが導いた公式は、運動系の原点ξ=0でだけ成立するものだった。

 運動系の時間τがゼロになるところより少し先は ?

 「時が止まるパラドックス」という解析ページで、未定係数法と数値計算を使って、運動系で時間τがゼロになってしまう位置を求めた。
 数値計算として選んだ v=0.8c においては、x=1.25ct の位置で τ=0 となる。
 運動系の原点ξ=0からなら、このときのβ=1/0.6なので、ξ=βx=(1.25/0.6)ct=0.75ctの位置である。
 それでは、その先は、どのようになっているのだろうか。

図1 運動系の時間τがゼロになるところより少し先は ?

 アインシュタインが導いたローレンツ変換によると、運動系の時間τは、次のように表される。
    τ=β{t-(v/c2)x}                   (1-1)
    β=1/{1-(v/c)2}1/2                (1-2)
 αを未定係数として、次の位置を考えよう。
    x=αvt                        (1-3)
 これを(1-1)に代入する。
    τ=β{t-(v/c2)αvt }
     =β{1-(v/c)2)α}t                 (1-4)
 この(1-4)でτ=0とするαを求めると、次のようになる。
    α=(c/v)2                      (1-5)
 この式の意味を理解するために、v=0.8c として数値計算し、x=1.25ct の位置で τ=0 となることが分かった。(ここまでは「時が止まるパラドックス」の復習)

 それでは、αが(1-5)より大きくなったら、(1-4)で示されるτはどのようになるだろうか。
 刄ソを、αに関する任意の微少量(正値)として、τ=0 となるときの α(1-5) に加える。
    α=(c/v)2+刄ソ                   (1-6)
 この(1-6)を(1-4)に代入しよう。
    τ=β [1-(v/c)2){(c/v)2+刄ソ}] t
     =β[1-(v/c) 2(c/v)2-(v/c)2刄ソ] t
     =β[1-1-(v/c)2刄ソ] t
     =β[-(v/c)2刄ソ] t
     =−β(v/c)2刄ソt                      (1-7)
 静止系の時間tは正である。βも(v/c)2刄ソも正である。
 よって、τは負の値となる。
 この物理世界では、負の時間はありえない。
 よって、運動系でτがゼロとなるところから先は、存在しない空間となる。

 ローレンツ変換によって運動系は消えてゆく

 次の値を仮定する。
    v=0.9c                           (2-1)
 τをゼロとするαは(1-5)である。ここに(2-1)を代入しよう。
    α=(c/0.9c)2
     =1/0.81
     =1.234567901                      (2-2)
 この(2-2)と(2-1)を(1-3)のxの式に代入しよう。
    x=1.234567901×0.9ct
     =1.11…ct                         (2-3)
 速度が v=0.8c のときは、x=1.25ct の位置で運動系が終わっていた。
 速度を v=0.9c にあげると、x=1.11ct の位置で運動系が終わることになる。
 運動系の距離ξとしては、このときのβ=1/0.436 なので、ξ=β(x-vt)=β(1.11-0.9)ct=(0.21/0.436)ct=0.48ct となる。
 静止系に対して運動系が速く動けば動くほど、運動系は先のほうからどんどん消えてしまうのである。

図2 運動系が速く動けば、先からどんどん消えてゆく

 (Written by KLOTUKI Kinohito, Aug 13, 2018)

 参照資料

[1] 「運動している物体の電気力学について」、アインシュタイン選集1、湯川秀樹(監修)、中村誠太郎・谷川安孝・井上健(訳編)、共立出版(刊)、昭和46年3月1日
[2] 「アインシュタイン 特殊相対性理論」、内山龍雄訳・解説、岩波文庫、井波書店刊 1988-11-16

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