電磁波は運動座標系で飛べるか

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 これは、アインシュタインの特殊相対性理論 [1] [2] の批判ページである。
 現代では、光も電磁波の一種であることが分かっている。
 アインシュタインの特殊相対性理論のベースとなるローレンツ変換は、運動系での光のふるまいを、運動系がもつ速度と組み合わせて、静止系で表現するというモデルから生まれた。
 ローレンツ変換には、運動系の速度vと光速度cとの比が組み込まれている。しかも、ローレンツ係数と呼ばれるβは、分母に 1−(v/c)2 の平方根をもつので、vがcの値をとることができないことになっている。
 ローレンツ変換は、光を使って構成されたものであるにもかかわらず、光そのものを取り扱うことができないのだ。
 しかし、アインシュタインは、U. 電気力学の部 の §7. ドップラーの原理と光行差の理論 において、電磁波とも光ともとれる表現を組み合わせて、このような現象について論じている。
 このとき、ローレンツ変換だけではうまくいかなかったため、解析結果と理論的な目標の表現式とをむすびつけるためだけの、電磁気に関する「つなぎの変換」を使っている。
 このように、U. 電気力学の部 の §7. 以降では、証明されていない「つなぎの変換」を使っており、確かな論理で推論されているとはいいがたい。
 ここまでは、ローレンツ変換の問題点について、いくつか語って来たが、このあとの論証においては、ローレンツ変換が正しいものと仮定しよう。

 運動系の時間τがゼロとなる位置がある[3]

 ローレンツ変換の公式の応用として、アインシュタインは、運動系の時間τが、静止系の時間tに比べて、小さな値となることを示した。
 スタートとなるのは、ローレンツ変換の次の式である。
  τ=β{t−(v/c2)x}                 (1−1)
  β=1/{1−(v/c)2}1/2                (1−2)
 アインシュタインは、次の(1−3)を(1−1)に代入して(1−4)を導いた。
  x=vt                         (1−3)
  τ=β{t−(v/c2)vt} 
    =β{1−(v/c)2)}t
    =t{1−(v/c)2}1/2               (1−4)
 このとき、{1−(v/c)2}1/2 が常に1より小さいことから、次の関係が成立する。
                        (1−5)
 (1−3)を次の(1−6)に代入すれば分かるが、x=vtは運動系の原点(ξ=0)を意味する。
  ξ=β(x−vt)                     (1−6)
 (1−5)や(1−4)は、運動系の原点(ξ=0)で成立する関係なのである。
 それでは、運動系の他の位置では、どのような関係が成り立つのだろうか。
 αを未定係数として、次の(1−7)をつくり、(1−1)に代入して、(1−8)で運動系の時間τがゼロとなるαを求めると(1−9)となる。
  x=αvt                        (1−7)
  τ=β{t−(v/c2)αvt} 
   =β{1−(v/c)2α}t               (1−8)
  α=(c/v)2                     (1−9)
 (1−9)だけでは意味がつかめないので、数値計算することにした。
  v=0.8c                      (1−10)
 (1−10)を(1−9)に代入すると(1−11)となる。
  α=1.5625                     (1−11)
 この値とv=0.8cを(1−7)に代入すると(1−12)となる。
  x=1.25ct                      (1−12)
 図1に示したの位置で、運動系の時間τ=0となる。

図1 運動系の時間τがゼロとなる位置がある

 運動系の時間τが負になると…[4]

 さらに計算を続けて調べてゆくと、運動系の時間τがゼロとなる位置より先のほうでは、τの値が負になることが分かった[4]。
 △αを、αに関する任意の微少量(正値)として、τ=0となるときのα(1−9)に加える。
    α=(c/v)2+△α                 (2−1)
 この式を(1−1)に代入して整理すると(2−2)となる。
    τ=β [1−(v/c)2){(c/v)2+△α}] t
     =β[1−(v/c) 2(c/v)2−(v/c)2△α] t
     =β[1−1−(v/c)2△α] t
     =−β[(v/c)2△α] t
             (2−2)
 静止系の時間tは正である。βも(v/c)2△αも正である。
 よって、τは負の値となる。
 この物理世界で負の時間は存在しない。時間が止まるということも考えられない。
 だから、運動系で、時間τがゼロとなる位置から先は、物理学の対象として考えられない。
 運動系が存在するとみなせるのは、時間τが正の値をとる領域だけである。
 このときの速度はv=0.8cであったが、これをv=0.9cとすると、存在できる運動系の領域は狭くなっていった。

図2 運動系の時間がゼロとなる先は存在できない

 速度v=0.99c としたとき

 運動系の速度を(3−1)としたとき、これを(1−9)に代入すると(3−2)となる。
  v=0.99c                       (3−1)
  α=(1/0.99)2  
   =1.2030405                    (3−2)
 これらの値を(1−7)に代入すると(3−3)となる。
  x=1.010101010…                  (3−3)
 このときの運動系の状況を図3として示した。
 運動系はまだ少しばかり存在している。

図3 速度v=0.99cのときの運動系

 速度 v=c としたとき

 アインシュタインの特殊相対性理論では、電磁波を運動系から見たとして、この方程式について、ローレンツ変換と「つなぎの変換」が処理されている。
 しかし、このような変換が、はたして可能なのかどうかについては、まったく考察されていない。
 上記の考察で、運動系の速度が v=0.99c までは、とくに何の問題もなく、運動系の時間τがゼロとなる位置を決めることができた。
 では、v=c のときは、どのようになるのだろうか。
 このとき、αを使った方法は使えない。それを使って τ=0 のときのαを求めるとき、βが式にかかっているからである。この状態で v=c としてしまうと、βの分母がゼロになってしまって、βが無限大となってしまう。
 このことを避けるため、アインシュタインが x=vt として求めた (1−4) からスタートしよう。
   τ=t{1−(v/c)2}1/2                   (1−4)
 ここに v=c を代入すると、τ=0 となる。
 運動系の原点 ξ=0 において、運動系の時間 τ=0 となったわけである。

 さて、このとき、運動系の原点以外のところの時間τは、どのような値となるだろうか。
  ξ=β(x−vt)                         (4−1)
  τ=β{t−(v/c2)x}                      (4−2)
 ξ=0 は x=vt であったから、微少量の Δ (正値)を加えて
  x=vt+                          (4−3)
を考える。xがこの値のときの運動系の時間を τ と記すことにする。
  τ=β{t−(v/c2)(vt+)}
   =β[{1−(v/c)2} t − v/c2 ]
   = tβ−1 − (v/c)/{c2 − v2}1/2            (4−4)
 ここで v → c とすると
  τ → 0 − ∞                         (4−5)
となる。
 運動系の時間は、ある値として確定はしないが、ゼロより小さな負の値を取りながら、マイナスの無限大へと向かってゆくことになる。
 運動座標系の入口となる ξ=0 では τ=0 であり、そこを越えるとマイナスの無限大の時間となる。
 現代物理学では、ゼロであろうと、マイナスの無限大であろうと、このような時間は存在しない。
 よって、ローレンツ変換のルールに従う限り、光速度 c で飛ぶことになる電磁波は、運動座標系で飛ぶことはできない。

図4 v=cのとき運動系は存在しない

 電磁波は自由に飛んでいる

 電磁波は光速度cで伝わる。
 電磁波そのものが運動系としてみなせるかもしないが、ローレンツ変換に従って、それなりの変換を受けて、運動系で走ろうとしても、その運動系では、時間のτがゼロか負になってしまうので、物理現象としてふるまうことができなくなる。
 光速度で動く座標系は存在できないのだ。
 しかし、電磁波は何も困っていない。
 光も飛びまくっているし、ラジオ電波、携帯電話のマイクロ波、医療機器でのX線も役立っている。
 この現実世界では、運動系が消えようが消えまいが、そんなこととは無関係に、電磁波は自由に飛んでいる。
 この矛盾は、ローレンツ変換がこの世界で作用していると考えた仮説が間違っていたことを示している。
 (Written by KLOTUKI Kinohito, Aug 13, 2018)

 参照資料

[1] 「運動している物体の電気力学について」、アインシュタイン選集1、湯川秀樹(監修)、中村誠太郎・谷川安孝・井上健(訳編)、共立出版(刊)、昭和46年3月1日
[2] 「アインシュタイン 特殊相対性理論」、内山龍雄訳・解説、岩波文庫、井波書店刊 1988−11−16
[3] 時が止まるパラドックス
[4] 消える運動系のパラドックス

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