ローレンツ変換で静止系の時が止まる

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 これは、アインシュタインの特殊相対性理論の批判ページである。
 アインシュタインの特殊相対性理論のベースであるローレンツ変換は深刻な問題を抱え込んでいた。
 時間についての数々のパラドックスである。
 これまでは、ほんのわずかなパラドックスのみが取り上げられていただけである。
 これまでの認識として、@運動系において、運動系の時間は静止系の時間より遅くなる(見える)、A静止系でも、静止系の時間は運動系の時間より遅くなる(見える)、とされていた。
 「遅くなる」と断定されていたり、「遅く見える」とあいまいに表現されていたりするのは、このことの理解があいまいだったからである。
 ところが、これらの認識が、それぞれの座標系で一様に成立していると考えられていたようだが、それは間違いである。

 三つの時間のパラドックス

 アインシュタインが@のところの関係式を導くところをしっかり読めば、@が運動系全体で成り立つことではなく、運動系の原点(ξ=0)のところでだけ成立することが分かる。
 Aについても、同様に、静止系の原点(x=0)で成り立つことが分かる。
 ここまでわかるようになれば、これらの間のどこかで、静止系の時間と運動系の時間が、対等な関係(t=τ)となる位置があるに違いないと考えることができる。
 この位置は確かにあった。[3]

 無数の時間のパラドックス

 アインシュタインが明らかにしたのは、運動系の原点における、静止系の時間tと運動系の時間τとの、げんみつな関係式であった。アインシュタインが、この関係式の意味を説明したため、意味だけが広まってしまった。
 げんみつな関係式といっても、記号が抽象的に組み合わさっているだけでは、意味はつかみにくい。そこで、v=0.8c などの値を決めて、数値計算を行うことにした。
 すると、この条件 v=0.8c の下では、運動系の原点において、τ=0.6t という関係式が現れた。
 これを静止系の原点に適用して、t=0.6τ となることも分かった。
 これらの間に t=τ となる位置がある。
 それなら、τ=0.7tやτ=0.8t もあることは明らかだし、もっと細かな実数で、τ=0.789t などの位置も存在することが分かる。
 こうして、すべての実数ではないが、t=0.6τからt=τまでと、τ=t から τ=0.6t までの間で、無数の時間関係が成立することが分かった。[4]

 時が止まるパラドックス

 運動系の時間についてアインシュタインが調べたのは、運動系の原点(ξ=0)のところだけである。
 それなら、運動系の、その先ではどのようになっているのだろうか。
 このように考えて、運動系の位置を決める工夫をして、時間の関係を調べることにした。
 導いた関係式を見ているうちに、運動系の時間τをゼロとする条件を求めることができ、そこから、運動系の位置を特定することができることが分かった。
 静止系の原点から測ると、光速度cを使って、(v=0.8cのとき)1.25ct となったが、光速度cを越えたと言っても、これは位置を決めるための関係式である。運動系の原点からなら(v=0.8cのとき、β=1/0.6となるので)、ξ=β(x−vt)=(1/0.6)(1.25−0.8)ct=0.75ct となる。
 数値計算を使って具体的な位置が決められるのだが、運動系の中に、運動系の時間τがゼロとなる位置があるというのは驚くべき発見であった。[5]

 消える運動系のパラドックス

 運動系の中に、時間τがゼロとなる位置が見つかった。それより手前のτは正の値である。
 それなら、その先はどうなっているのだろうか。
 予想にたがわず、その先のτは負の値となっていた。
 この物理世界では、ゼロの時間も負の時間も存在しない。
 よって、これらの時間の運動系は存在できず、消えてしまうことになる。[6]

 電磁波は運動座標系で飛べるか

 電磁波は光速度cで飛んでいる。電磁波そのものが運動系であると見なしてローレンツ変換を施したとき、運動系が存在しなくなる。[7]

 電磁波は静止座標系の時を止める

 電磁波は光速度cで飛んでいる。この電磁波にローレンツ変換を施すと、その影響は、運動系だけではなく、静止系にも及び、静止系の時間をゼロもしくはマイナス無限大にする。[8]

 静止系のx座標が負になる領域ではどうなるか

 ようやく、このページの主題へと進むことができる。
 「電磁波は運動座標系で飛べるか」[7] と「電磁波は静止座標系の時を止める」[8] では、電磁波について考えることにしたため、運動系の速度vが光速度cと一致するという、究極の状況について調べた。
 ここでは、それ以前の状況に戻って、vがcを越えないものとしよう。
 この状態で、これまで調べたことを概観すると、静止系の原点x=0から運動系に移るまでのところで t=τ となる位置があることを見出し、運動系のある位置で時間が止まって、それから先は時間が負になる、というところまで調べた。
 すると、静止系のx座標が負になる領域で、静止系の時間tがどのようになるか、これについては調べていない。
 「電磁波は静止座標系の時を止める」[8] では、0-∞ へと収束していったが、このときはv=c という異質な状況であった。

 ローレンツ変換で静止系の時が止まる

 αを正の値をとる未定係数として、次のように決める。
    x=−α                        (1)
 ローレンツ変換により
    ξ=β(−α−vt)
    =−β(α+vt)
                  (2)
    β=1/{1-(v/c)2}1/2                (3)
 逆変換を利用して
    t=β{τ+(v/c2)ξ}                 (4)
 (2)を(4)に代入して計算をすすめる。
    -1=τ−(v/c2)β(α+vt)
    =τ−(v/c2)βα−β(v/c)2 t
           (5)
     t [β-1+β(v/c)2] = τ−(v/c2)βα        (6)
    tβ=τ−(v/c2)βα                 (7)
    t=τβ-1−(v/c2                 (8)
 この(8)において、右辺第1項だけを残して第2項を取り除いた関係式は、静止系の原点(x=0)で成立するものである。第2項は、xの位置がマイナスとなるときに生まれるものと考えられ、負の値となるので、静止系の時間tは小さくなってゆくことが分かる。

 (8)の関係式はtについて整理されているので、このtをゼロとおいて、αがどのような値となるかを調べよう。
    τβ-1−(v/c2)α=0                 (9)
    α=τ(c2/v)β-1                   (10)
 静止系の時間tがゼロとなるαが、抽象的に決まったが、意味がつかみにくいので、数値計算しよう。
    v=0.8c                       (11)
 この(11)を(10)に代入して整理すると(12)となる。
    α=0.75cτ                      (12)
 この式を(1)に代入すると(13)となる。
    x=−0.75cτ                     (13)
 ξの値に変換しよう。このとき数値計算でβは
    β=1/0.6                      (14)
となるので
    ξ=βx
    = −0.75cτ/0.6
    = −1.25cτ
                    (15)
となる。
 時が止まるパラドックス[5] で運動系の時間が止まる位置を数値計算で求めたとき、v=0.8c で、
    x=1.25ct                      (16)
であった。
 (15)の値は、これとよく対応している。

図1 運動系と静止系で時が止まる位置

 (Written by KLOTUKI Kinohito, Aug 16, 2018)

 参照資料

[1] 「運動している物体の電気力学について」、アインシュタイン選集1、湯川秀樹(監修)、中村誠太郎・谷川安孝・井上健(訳編)、共立出版(刊)、昭和46年3月1日
[2] 「アインシュタイン 特殊相対性理論」、内山龍雄訳・解説、岩波文庫、井波書店刊 1988−11−16
[3] 三つの時間のパラドックス
[4] 無数の時間のパラドックス
[5] 時が止まるパラドックス
[6] 消える運動系のパラドックス
[7] 電磁波は運動座標系で飛べるか
[8] 電磁波は静止座標系の時を止める

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