ローレンツ収縮は運動系と静止系で逆になる

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 これはアインシュタインの特殊相対性理論の批判ページである。
 アインシュタインの特殊相対性理論の原論文 [1] [2] は、ローレンツ収縮に関する説明のところで、「半径Rの剛体の球を考えよう」と切り出し、球の方程式に対してローレンツ変換をほどこし、その結果について、球が「回転楕円体」になると言い、かなり難解なものとなっている。
 しかし、ローレンツ収縮は、ローレンツ変換から、かんたんな手続きによって導かれることである。内山龍雄の「相対性理論」(岩波全書)[10] における説明を参照して、まとめてみよう。

 ローレンツ収縮

 静止系に対してX軸に沿った方向に、速度vで動いている運動系を考える。
 静止系の座標は x, y, z, t で、運動系の座標は ξ, η, ζ, τ で表す。
 この記号に準じて、静止系での長さを L とし、これに対する運動系の長さを Λ(ラムダ)とする。
 静止系におけるx=a と x=b (aよりbが大きい)の位置に対する、ローレンツ変換後の運動系の位置を、ξ(a) と ξ(b)と表そう。これらの関係として L=b-a, Λ=ξ(b)−ξ(a) としよう。
 このとき、次の関係式が成り立つ。
    ξ(a) = β(a−vt)                   (1)
    ξ(b) = β(b−vt)                   (2)
    β  = 1/{1-(v/c)2}1/2                (3)
 差をとって
    ξ(b)−ξ(a) = β[ b−vt−{ a−vt } ]
           = β [b−a]                 (4)
 長さの記号で置き換えると
    Λ = βL                           (5)
    L = Λβ-1                          (6)
 ここで、β-1 が常に1より小さいことから、静止系の長さ L は運動系の長さ Λ より小さいということになる。
 これがローレンツ収縮である。
 長さが短くなるのは、静止系の長さ L のほうである。

 逆変換によるローレンツ収縮

 運動系から静止系を見たとき、−v で静止系が動いているとみなせる。
 これについて、ローレンツ変換の公式から、次の逆変換の公式が導かれる。
    x = β(ξ+vτ)                   (11)
 このとき、次の関係式が成り立つ。
    a = β(ξ(a)+vτ)                 (12)
    b = β(ξ(b)+vτ)                 (13)
 差をとると
    b−a = β[ ξ(b)−vτ−{ ξ(a)−vτ } ]
       = β[ξ(b)−ξ(a) ]               (14)
 長さの記号で置き換えると
    L = βΛ                        (15)
    Λ = Lβ-1                        (16)
となる。
 長さが短くなるのは、運動系の長さ Λ となる。

 考察

 (6)の L を(15)へ代入しよう。
    Λβ-1 = βΛ
    β-2 = 1
    1−(v/c)2= 1
    −(v/c)2 = 0
    v = 0                          (21)
 これでは運動系が存在できない。
 上記の解析は、ローレンツ変換が正しいものと仮定して行った。
 しかし、このような矛盾が導かれた。
 運動系と静止系では、 L=b-a と Λ=ξ(b)−ξ(a) の大小関係が逆になる。このことが、この矛盾を生み出した。
 このような矛盾が生じたとき、これまでの説明では、「そのように見える」という表現が用いられ、あたかも、ほんとうの現象ではないようにされてきた。
 静止系での数式表現と、運動系での数式表現を、組み合わせて解析するということは、アインシュタインが得意としていることである。これらについて禁じるというのなら、まず、アインシュタインの数式処理をほとんど禁じることになる。
 それなら、運動系の現象と静止系の現象とを共通の表現として解釈するために生み出されたはずの、ローレンツ変換の意味はどこにあるというのだろう。
 ローレンツ変換に伴って、静止系の時間 t と運動系の時間τの関係が多様なものとなることが分かってきたが、これは、これらの座標系の位置に従って変わるものである。
 ところが、長さに関するローレンツ収縮は、位置というより、領域で一様に起こるものとされている。
 これらのことを考えても、静止系からと運動系からの、二つの視点で、まったく逆の関係が成立する、というのは、やはり、うまく解釈できることではない。
 こんなにシンプルな矛盾が、どうして、これまで問題視されなかったのだろうか。
  (Written by KLOTUKI Kinohito, Aug 20, 2018)

 参照資料

[1] 「運動している物体の電気力学について」、アインシュタイン選集1、湯川秀樹(監修)、中村誠太郎・谷川安孝・井上健(訳編)、共立出版(刊)、昭和46年3月1日
[2] 「アインシュタイン 特殊相対性理論」、内山龍雄訳・解説、岩波文庫、井波書店刊 1988−11−16
[3] 三つの時間のパラドックス
[4] 無数の時間のパラドックス
[5] 時が止まるパラドックス
[6] 消える運動系のパラドックス
[7] 電磁波は運動座標系で飛べるか
[8] 電磁波は静止座標系の時を止める
[9] ローレンツ変換で静止系の時が止まる
[10] 「相対性理論」、内山龍雄(著)、岩波全書、1977年3月24日(刊)

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