運動系の時間 τ はどのように変化するか

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 運動系の時間τ

 静止系の空間座標の x と時間の t が、ローレンツ変換で組み合わさって、運動系の時間τとなる。
 これまでの100年間あまりの認識として、運動系の時間 τ は、静止系の時間 t に対して、常に小さくなると思われてきた。
 しかし、この認識は間違っていた。
 静止系の時間 t と運動系の時間 τ の関係は、静止系と運動系の空間位置に従って、連続的に変化するものであり、静止系と運動系の二つの原点の間にある位置で、それらの時間が等しくなるところを境に、それらの大小関係が逆転する。
 だから、静止系の領域のほうでは、運動系の時間 τ のほうが、静止系の時間 t より大きくなることもある。
 ローレンツ変換の公式だけを頼りに、このようなことを調べてゆくと、運動系において、その時間 τ がゼロとなる位置があるということが分かった。
 静止系に対して、それよりさらに遠い領域では、運動系の時間 τ が負の値をとる。
 このような、静止系と運動系の時間についての関係式が、これまで、はっきりと規定できたのは、@ t=τ となる位置、A 運動系の原点(ξ=0)、B τ=0 となる位置、これらの3つだけであった。
 今回の解析では、これらの間の領域で、静止系と運動系の時間についての関係式がどのようになるのかを調べる。

 運動系の時間τの一般式 τ(ξ, t)

 運動系の時間 τ の一般式を τ(ξ, t) の形式で求める。これは、運動系の時間 τ がゼロとなるときの形式に合わせるためである。
 運動系の時間 τ がゼロとなるときの位置は、運動系の座標 ξ と、静止系の時間 t の組み合わせで、次のように求められている [12]。

             (1-1)

 ローレンツ変換により、Y軸とZ軸での変換を略せば、次の式が成立する。

                 (1-2)
              (1-3)
              (1-4)

 (1-3) の x を消去するため、(1-2) についての逆変換を求めておこう。

                 (1-5)

 (1-5) を (1-3) に代入し、これを変形する。

    (1-6)

 ここで、次の項だけを取り出して計算すると、これは β に等しくなることが分かる。

             (1-7)

 よって、(1-6) の両辺を β で割ることができて、次のようになる。

            (1-8)

 これが、ここで求めるべき、τ(ξ, t) の形式の一般式である。このとき ξ=0 を代入すると、よく知られた「時間の遅れ(τ= tβ-1)」の式となる。

 運動系での時間 τ の変化

 上記 (1-1) は、運動系の時間 τ がゼロとなる ξ の位置である。
 α を 0 から 1 の値をとる変数として、次の (2-1) を決める。

             (2-1)

 この (2-1) を (1-8) に代入しよう。

    (2-2)

 α=0 のときは ξ=0 のときの τ に一致し、α=1 のときは τ=0 となる。
 この間は、1−α が係数となって、直線状に単調減少することが分かる。
 このような領域においては、t にはとくに条件が生じず、計算しても、t=t となるだけである [12]。
 静止系の原点 (x=0) と運動系の原点(ξ=0)の間に、t=τの位置がある。
 静止系の原点 (x=0) では、(2-3) が成り立つ。

                     (2-3)

 β は分子が 1 で、分母が常に 1 より小さいので、1 より大きな値となる。
 これらの解析結果を図1として示そう。

図1 運動系での時間 τ の変化

 運動系の時間 τ は直線にのって減少するか

 運動系の領域で、ξ=0 の原点から、τ=0 となる (1-1) の ξ の位置までは、上記の α を使った解析結果の (2-2) によって、一つの直線にのって減少することが分かる。
 運動系の負の領域となる、x=0 から ξ=0 までのところの、運動系の時間 τ が、これと同じ直線にあるかどうかは、まだ分からない。
 横軸を Ξ(ξ の大文字)軸、縦軸を Τ(τ の大文字)時間軸として、それぞれの直線の傾きを求めよう。考察をかんたんにするため、絶対値で考える。

 (1) ξ=0 の原点から、τ=0 となる (1-1) の ξ の位置まで
 横軸の ξ の距離は (1-1) の値となる。
 縦軸の時間 τ は τ=tβ-1 となる。
 ここでは、▲=τ/ξ の形で、直線の傾き ▲ を考える。

      (3-1)

 (2) x=0 のところの τ と ξ=0 のところの τ について
 静止系の原点 x=0 の位置を ξ で表すと

                        (3-2)

となる。絶対値をとって

                          (3-3)

を使う。
 τ 時間の差 刄ム は

     (3-4)

 △=τ/ξ の形で、直線の傾き △ を考える。

                    (3-5)

 計算が煩雑になるので、ここではとりあげないが、τ=t のプロットがこの直線にのるかを調べたところ、やはり、同じ傾きの値が求まった。
 これらのことから、運動系の時間 τ は、運動系の ξ 位置に対して、一つの直線にのって、τ=0 となるところまで、単調に減少してゆくことが分かる。

 考察

 静止系の時間 t を基準として、運動系の時間 τ は、図2のように、x=0 で τ=tβ となる状態から、τ=0 となるところへと、一直線に減少してゆく。
 しかし、はたして、このように考えてよいのだろうか。
 一つ目の疑問として、静止系の時間tが、どのような影響を及ぼすかということが分からない。

図2 運動系での時間 τ の変化(一つの直線にのっている)

 これまでの何回にもわたる解析の経験から、運動系の時間と空間の変化は、τ=t のあたりに鏡を立てたかのように、対称的な様相を見せてきた。
 まだ完全な証明は行っていないが、静止系の時間 t についても、図3 のような対応が見出されると推定できる。
 ただし、分かるのは、ここまでなのである。
 静止系の x が正であり、運動系の ξ が負である、x=0 から ξ=0 までの領域では、運動系の時間の直線と、静止系の時間の直線がクロスしているが、これらの関係式を見ると分かるように、これは、表示の仕方を変えたことによる、見かけ上のことであって、矛盾しているわけではない。

図3 運動系での時間 τ の変化と静止系での時間 t の変化(推定)

 逆変換により、静止系の時間 t については、運動系の時間 τ と位置座標 ξ を使って、次のように求められる。

                 (4-1)

 運動系の ξ が正の領域で、0 から 1 の値をとる変数として α を使って、(2-1) と (2-2) より、直線上の (ξ, τ) の値を、次のように表すことができる。

                 (4-2)
                    (4-3)

 これらの値を (3-6) に代入しよう。

     (4-4)

 おそらく、t を決める条件が不足しているので、循環論法になってしまうようだ。
 このように調べてきたが、ここで使っている条件式は、ローンツ変換とその逆変換だけである。
 ローレンツ変換の体系において、これまで、その性質のほんの一部だけが取り出され、何の矛盾もなく、この物理世界の体系を変えてきたとされていたが、上記の解析で示したような、運動系の時間 τ や静止系の時間 t の変化について考えると、まったく矛盾だらけであり、これらの矛盾を無視して、物理世界のいろいろな現象を説明することはできない。
 たとえば、今回詳しく調べた、運動系の時間 τ が、運動系の空間において、進行方向の先のほうに行くにつれて、少しずつ遅くなってゆき、やがて止まるというのは、自然現象として理解しがたいことである。
  (Written by KLOTUKI Kinohito, Sep 4, 2018)

 参照資料

[1] 「運動している物体の電気力学について」、アインシュタイン選集1、湯川秀樹(監修)、中村誠太郎・谷川安孝・井上健(訳編)、共立出版(刊)、昭和46年3月1日
[2] 「アインシュタイン 特殊相対性理論」、内山龍雄訳・解説、岩波文庫、井波書店刊 1988−11−16
[3] 三つの時間のパラドックス
[4] 無数の時間のパラドックス
[5] 時が止まるパラドックス
[6] 消える運動系のパラドックス
[7] 電磁波は運動座標系で飛べるか
[8] 電磁波は静止座標系の時を止める
[9] ローレンツ変換で静止系の時が止まる
[10] ローレンツ変換で静止系が消えてゆく
[11] ローレンツ収縮は運動系と静止系で逆になる
[12] ローレンツ変換で時間と空間を混ぜると世界が消滅
[13] 「相対性理論」、内山龍雄(著)、岩波全書、1977年3月24日(刊)

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