ベクトル解析における「勾配」「発散」「ラプラシアン」「回転」の定義式
grad f, div A, div grad f, rot A, or curl A on Vector Analysis

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito, treeman9621)

PDF ベクトル解析における「勾配」「発散」「ラプラシアン」「回転」の定義式

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 スカラー場fの勾配(grad)

 直交座標系(O; i, j, k)に関する座標をP(x, y, z) とする。空間のある領域で定義されたスカラー場f に対して、次の(1)で定義される「ベクトル場grad f」を「fの勾配」という。

   grad f =(∂f /∂x) i+(∂f /∂y) j+(∂f /∂z) k
       =(∂f /∂x, ∂f /∂y, ∂f /∂z)         (1)

 grad f は、f(x, y, z)に、次の(2)の演算子∇(ハミルトンの演算子、ナブラ、デル)をほどこしたものとみることができる。

   ∇=i (∂ /∂x)+j (∂f /∂y) +k (∂f /∂z)         (2)

 単位ベクトルのi, j, k は、偏微分の演算子∂ /∂xを係数とみなしているだけなので、(1)のように、後ろについたり、(2)のように、前についたりするが、これらの表現に違いはない。

 ベクトル場Aの発散(div)

 空間のある領域で定義されたベクトル場Aの、直交座標系(O; i, j, k)に関する、点P(x, y, z)における成分表示を、次の(3)とする。

   A(P)=( Ax(x, y, z), Ay(x, y, z), Az(x, y, z) )    (3)

 このとき、「ベクトル場Aの発散」と呼ばれる「スカラー場 div A」は、次の(4)として定義される。

   div A=∂Ax /∂x+∂Ay /∂y+∂Az /∂z      (4)

 div A は∇・Aと書かれることもある。

   div A
   =∇・A
   =(i (∂ /∂x)+j (∂ /∂y) +k (∂ /∂z))・(Ax i+Ay j+Az k
   =∂Ax /∂x+∂Ay /∂y+∂Az /∂z       (5)

 この(5)において、ii=|i|=1, ij=0, ik=0 などが用いられている。これらの単位ベクトルは互いに直交しており、ベクトルの内積で現れるcos θ=cos 90 = 0 となって、異なる単位ベクトルの内積はゼロ(0)となる。

 スカラー場fのラプラシアン

 スカラー場fに対して、次の(6)によって定義されるものを、「スカラー場fのラプラシアン」と言う。

   div (grad f ) =(∂f /∂x) i+(∂f /∂y) j+(∂f /∂z) k・∇f
          =(i (∂ /∂x)+j (∂f /∂y) +k (∂f /∂z))
           ・((∂f /∂x) i+(∂f /∂y) j+(∂f /∂z) k)
          =∂2f /∂x2+∂2f /∂y2+∂2f /∂z2     (6)

 このような操作を意味するラプラス(Laplace)の演算子を、次の(7)のように表現する。

   ∇2=Δ=∂2 /∂x2+∂2 /∂y2+∂2 /∂z2     (7)

 これらの三角記号は、げんみつに表記するとしたとき、▽の場合、右斜めの辺を除く、上と左斜めの辺を太く描き、△の場合は、左斜めの辺を除く、下と右斜めの線を太くえがくことになっているようだ。

 ベクトルの回転(rot, curl)

 座標系(O; i, j, k)を、右手系の直交座標系とする。つまり、右手の親指の向きが単位ベクトルiで、人差し指の向きが単位ベクトルj、中指の向きが単位ベクトルkの、それぞれの向きとなる。
 次の(8)に規定したベクトル場Aに対して、(9)により定義されるベクトル場をrot A もしくはcurl A と書いて、「ベクトル場Aの回転」と呼ぶ。また、ベクトルの外積を意味する「×」を用いて、∇×Aと書かれることもある。

   A(x, y, z)=Ax(x, y, z) i +Ay(x, y, z) j +Az(x, y, z) k      (8)
   rot A =curl A=∇×A
   =(∂Az /∂y−∂Ay /∂z) i +(∂Ax /∂z−∂Az /∂x) j +(∂Ay /∂x−∂Ax /∂y) k     (9)

 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Jan 3, 2012)

 ベクトルの「勾配grad」「発散div」「回転rot」に関する公式(一部)

 grad, div, rot を組み合わせた公式(恒等式)を記しておく。
 fをスカラー場、Aをベクトル場とする。

   div grad f = ∇・(∇f ) =∇2f            (10)
   rot grad f = ∇×∇f =O               (11)
   div rot A = ∇・(∇×A)=0              (12)
   rot rot A =∇×(∇×A)=∇(∇・A)−∇2A     (13)

 (10)の証明は(6)にある。
 (11)の証明をしよう。(rot grad f)xをrot grad f のx成分とする。次のように、成分ごとに計算すると、それぞれ0となるので、ベクトル(0, 0, 0)=O(成分がすべて0のベクトル)である。

   (rot grad f)x = ∂(∂f/∂z)/∂y−∂(∂f/∂y)/∂z=0
   (rot grad f)y = ∂(∂f/∂x)/∂z−∂(∂f/∂z)/∂x=0
   (rot grad f)z = ∂(∂f/∂y)/∂x−∂(∂f/∂x)/∂y=0   [証明終わり]

 (12)の証明をしよう。このとき、全角の/の右にある項はすべて分母にあるものとする。つまり、∂2Az /(∂y∂x)=∂2Az /∂y∂x と見なす。偏微分の順序は入れ替えることができるので、∂2Az /∂y∂xと∂2Az /∂x∂yは同じものとなる。よって、次の計算の結果、全ての項は消えてしまい、0という値になる。

   div rot A =∂(∂Az /∂y−∂Ay /∂z) /∂x
         +∂(∂Ax /∂z−∂Az /∂x) /∂y
         +∂(∂Ay /∂x−∂Ax /∂y) /∂z
        =∂2Az /∂y∂x−∂2Ay /∂z∂x
         +∂2Ax /∂z∂y−∂2Az /∂x∂y
         +∂2Ay /∂x∂z−∂2Ax /∂y∂z
        =0   [証明終わり]

 (13)を証明しよう。(rot rot A)x をrot rot A のx成分とする。

   (rot rot A)x=∂(∂Ay /∂x−∂Ax /∂y) /∂y−∂(∂Ax /∂z−∂Az /∂x) /∂z
         =∂2Ay /∂x∂y−∂2Ax /∂y∂y−∂2Ax /∂z∂z+∂2Az /∂x∂z
         =∂2Ay /∂x∂y+∂2Az /∂x∂z−∂2Ax /∂2y−∂2Ax /∂2z
         =∂2Ay /∂x∂y+∂2Az /∂x∂z
          +∂2Ax /∂x∂x−∂2Ax /∂2x−∂2Ax /∂2y−∂2Ax /∂2z
         =∂2Ay /∂x∂y+∂2Az /∂x∂z+∂2Ax /∂x∂x
          −∂2Ax /∂2x−∂2Ax /∂2y−∂2Ax /∂2z
         =∂(∂Ay /∂y+∂Az /∂z+∂Ax /∂x )∂x
          −(∂2/∂2x−∂2 /∂2y−∂2/∂2z) Ax
         =∂(∇・A) /∂x−∇2 Ax
         =(∇(∇・A)))x−(∇2 A)x   [証明終わり]

 なかなか大変な計算となるが、なんとかなった。赤文字の部分は0となるものであるから、そこで組み込むことができる。
 y成分とz成分については、x, y, zの記号をサイクリックに入れ替えればよいだけだから、同じようにして求めることができる。

 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Jan 4, 2012)

 参照資料

[1] 「線形代数 ベクトル解析」、小西栄一、深見哲造、遠藤静男 (共著)、培風館1992(改訂第22刷発行)より

 

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