1864年のマクスウェル方程式にあるローレンツ力には…
The Lorentz Force in Maxwell Equations at 1864 …

黒月樹人(Kinohito KULOTSUKI)

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 Φ(nsw495kpr8)さんからのメール

 Φさん[1] からやってきたメールに、次の3つのサイトが記されてあった。

 @ http://blog.goo.ne.jp/narudekon/e/d881f8125c63c3767f85ece79897d189
 A トーマス・ベアデン博士の書簡を翻訳したもの
   http://www4.ocn.ne.jp/~ds08pro/ARPA_Bearden_Response.pdf#page=1
 B マクスウェルの原論文
    http://www.jstor.org/stable/108892?seq=1&

 どうやら@は、AやBの「出どころ」のようである。この@については、あっさりと読み流し、Aについては印刷出力した。Bは、なるほど、「マクスウェルの原論文」が読めるようになっているが、印刷出力しにくかったので、別のサイトを調べることにした。
 「マクスウェルの原論文」の正式名がA Dynamical Theory of the Electromagnetic Field であるので、これを「検索ワード」として調べ、次の2つのサイトをチェックした。

 C http://en.wikipedia.org/wiki/A_Dynamical_Theory_of_the_Electromagnetic_Field
 D http://ia700505.us.archive.org/34/items/philtrans00041514/00041514.pdf

 Dのほうが「マクスウェルの原論文」のPDFファイルである。ブラウザの機能により、直接印刷できないときがある。このようなときには、PDFファイルを「保存」してから、あらためて呼び出し、印刷出力するとよい。
 Dは1864年に公表されたもの。いかにも古典的な論文で、数式の表現方法が、現代のベクトル表記のスタイルとなっていないし、マクスウェルの「電磁気に関する用語」も、現代のものと、微妙に異なっている。
 Cは、これらのことを整理して解説してくれている。ここに書かれている、数式や用語の対応を手掛かりとして、Dを読むことにした。

 トーマス・ベアデン博士の書簡より

 Φさんからのメールにある「A トーマス・ベアデン博士の書簡を翻訳したもの」に目をとおした。
原論文にあるマクスウェルの理論が、マクスウェルの死(1879)後、ヘビサイド(Heaviside)、ギブス、ローレンツ(Lorentz)などによって、極端に単純化され、何らかの要素が失われたとされている。
 また、ヘビサイドが発見したという、「あらゆる電池や発電機の端子から放出さる巨大な回転性電磁気エネルギー流」についての言及がある。「回転の発散はゼロ」なので、「何かと相互作用を引き起こすことも、また外部回路に発散していくこともない」とある。
 ところが、この「大な回転性電磁気エネルギー流」を「補足する方法が(ロシアには)実際にある」とも述べられている。
 これらの情報の根拠として、「マクスウェルの原論文」にあたってみる必要があると思われたわけである。そこで、上記CとDを検討したところ、「ヘビサイドらの単純化」で失われた表現が、「ローレンツ力」に関わる方程式のところにあるのではないかと思われた。

 電磁気現象における「ローレンツ力」とは

 電磁気現象における「ローレンツ力」とは、「磁場中の電流にはたらく力」だと、「電磁力学」のテキスト[2] に記されている。



 ここで、Bは磁束密度である。一般に磁場はHで表わされるが、均質等方媒質中では、透磁率をμとしたとき、B=μHであるので、Bが「磁場」と同一視されることもある。
 v ×BはベクトルvとベクトルBの外積である。電磁誘導の現象で利用される「フレミング(Fleming) 右手の法則」で、親指(v)、人さし指(B)と対応づけたとき、中指がv×Bの方向となる。このような座標系の対応から、外積が組み込まれた表現は、「回転性」と翻訳されることがある。ベクトル解析では、外積を使った∇×Aを、「Aの回転」と呼び、rot A またはcurl A と書くからであろう。∇はナブラであるが、∇×で座標の回転をともなった偏微分の操作を表わしている。
 この「電磁力学」のテキスト[2]では、上記の「式1」に続いて、次のように説明されている。



 Bが「磁場」と同一視されているが、電場Eについての説明なので、この点は流しておこう。
 これらの「式1」や「式2」について、このあと参照することになる。

 1864年のマクスウェル方程式にあるローレンツ力には…

 1864年に公表された「マクスウェル原論文」には、20個の方程式が表わされている。現代のベクトル表記では、xyz成分も含めて1つの式としているところ、1864年には、このような記法が存在していなかったため、xyz成分の、それぞれの式を数えていって、20個となるようだ。
 マクスウェルは、このような成分表現によるものを、まとめることにより、これらの20個の方程式を、(A)〜(H)の8つのグループに分類している。上記Cのサイトページでは、この8グループについて、簡潔にまとめられている。
 このグループ式の(D)が「ローレンツ力」についてのものである。上記Cのサイトページにある表現を、次に引用しよう。



 ここにある単語の意味はconvection(対流), induction(誘導), and by charges(電荷)だろう。「この力は、対流、誘導、電荷によって生み出される電場の影響を表わしている。」注釈文は、このような意味となろうか。
 この表現式を読み解くためには、記号についての定義を知っておく必要がある。上記Cのサイトページに、Notation として、これらの定義がまとめられている。理解しやすいように、次に、表の形で表わす。



 それでは、「ローレンツ力」についての、3つの式を見比べてみよう。



 「式3」のEは、「マクスウェルの原論文」での意図は「Electromotive Force (起電力)」なので、「式1」や「式2」の力Fと、ほぼ同一視して考えることができそうだ。
 外積の表現として、「式1」と「式2」のv×B と、「式3」のμv×Hが、「均質等方媒質中では、透磁率をμとしたとき、B=μH」ということから、完全に一致している。
 「式1」は「式2」の部分的な表現なので、「式2」と「式3」を比較しよう。すると、「式2」での電場Eと、「式3」の「− ∂A/∂t」と「−∇Φ」が対応すべきである。

 テキスト「電磁力学」[2] によれば

 テキスト「電磁力学」[2] によれば、「式2」での電場Eと、「式3」の「− ∂A/∂t」と「−∇Φ」は、うまく対応しているようだ。
 このことは、私がまとめた、次のページの、(25)とした式に表わされている。


   「マクスウェル方程式とローレンツゲージによるスカラー電磁波方程式」
   http://www.treeman9621.com/ChimeraMeam2/CMT04/LorentzGauge.html

 「−∇Φ」は「−grad Φ」とも記される。
 なるほど、現代の「電磁力学」の分野では、かなり遠まわしの説明になっているが、「マクスウェルの原論文」にある「ローレンツ力」の構成成分である、「− ∂A/∂t」と「−∇Φ」を、ベクトルポテンシャルAとスカラーポテンシャルΦによる表現によって、電場Eによる力であるとしている。
 「マクスウェルの原論文」にあった、これらの「− ∂A/∂t」と「−∇Φ」の内容は、完全に無視されているわけではなく、遠まわしに補われていることになる。

 「アハラノフ・ボーム効果」におけるベクトルポテンシャルA

 マクスウェルが原論文で「Angular Impulse (角力積)」と名づけて記していた「Magnetic Potential (磁気ポテンシャル)」は、「ベクトルポテンシャルA」という名となって、「アハラノフ・ボーム効果」の解釈で復活しようとしている。
 このことに関しての、私の説明は、次のページにある。


   http://www.treeman9621.com/RaN_2012/RaN172/2SEW_Memo4.html

 まとめ

 「マクスウェルの原論文」にあった20の方程式の中で、「ローレンツ力」に関するもののなかに、失われた要素があると見込んで調べた。



 「ローレンツ力」の表現として、このようなものがあるが、「式1」だけが表記されていることが多い。これに対しては、「マクスウェルの原論文」にある「式3」の、「− ∂A/∂t −∇Φ」の部分が失われていると考えてしまうことだろう。
 ところが、「− ∂A/∂t −∇Φ」は、
   E=−grad Φ−∂A /∂t       (25)
として、「式2」におけるEと等しい。
 このときの(25)は、トーマス・ベアデン博士が述べている、「回転の発散はゼロ」(div rot A = 0)や、述べてはいないようだが、rot grad Φ= 0 というベクトル解析の恒等式が、単純化されたマクスウェルの方程式 div B= 0 と組み合わされて生み出されている。
 「式2」を「ローレンツ力の全体」だと考えているなら、「マクスウェルの原論文」にあった「式3」の「− ∂A/∂t −∇Φ」は、「無視されたわけではない」ということになる。

 問題点

 問題は、この「− ∂A/∂t −∇Φ」にある、ベクトルポテンシャルAとスカラーポテンシャルΦが、分かりやすい物理量として認識されてこなかったというところにあるのだろう。
 (電場がないだけでなく)磁場の漏れがないところでも、ベクトルポテンシャルAによる作用があるというのが、「アハラノフ・ボーム効果」の検証実験から導かれたことであるが、これは2000年の少し前のことらしい。2012年の現在でも、ベクトルポテンシャルAのことは、それほど広く知れ渡っているわけではなさそうだ。私たちが読み進めている、電磁気学や電磁力学のテキストは、それまでに書かれたものが多い。
 これらの知識が正しく認識され、ほんとうのことが書かれているテキストを読めるようにしてほしいものである。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, March 04, 2012)

 参照資料

[1] Φさんのサイトは「弧電磁気論(解説)」
   http://www.kodenjiki.com/
[2] 「電磁力学」牟田泰三(著)、岩波書店(刊) 1992

 

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