1864年のマクスウェル原方程式について
On Maxwell’s Original Equations at 1864

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito, as treeman9621)

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 4つのマクスウェル方程式

 マクスウェル方程式について考える必要があったため、「電磁力学」[7] を参照し、次のページにおいて、ベクトル記法による4つのマクスウェル方程式を整理した(図1)。

   「マクスウェル方程式とローレンツゲージによるスカラー電磁波方程式」[1]
   http://www.treeman9621.com/ChimeraMeam2/CMT04/LorentzGauge.html



 ところが、この、4つのマクスウェル方程式は、マクスウェルによって構成されたものではないということを知った。そこで、1864年に公表されたマクスウェルの原方程式を確認しようと考えた。

 20のマクスウェル原方程式

 マクスウェルは1864年にA Dynamical Theory of the Electromagnetic Fieldというタイトルの論文において、これらの20の方程式を論じた。このタイトルを「検索ワード」として調べ、次の2つのサイトをチェックした。
   @[2] A Dynamical Theory of the Electromagnetic Field ? Wikipedia
      http://en.wikipedia.org/wiki/A_Dynamical_Theory_of_the_Electromagnetic_Field
   A[3] A Dynamical Theory of the Electromagnetic Field : Maxwell, J. : Free ...
      サイト http://www.archive.org/details/philtrans00041514
      PDF ファイル http://ia700505.us.archive.org/34/items/philtrans00041514/00041514.pdf
 あるいは、次サイト[4] でもPDFファイルが得られる。
    [PDF] A Dynamical Theory of the Electromagnetic Field
   http://www.stannet.ne.jp/kazumoto/maxwell_emf_1865.pdf

 これらのサイトページにある情報を利用して、マクスウェルの原方程式と現代ベクトル記法との比較を行う。
 1864年に公表されたマクスウェルの原方程式は20もあるという。しかし、これは、上記のベクトル表記のスタイルが、1864年には、まだ存在していなかったので、ベクトルのxyz成分についての、それぞれの方程式が数えられているためである。
 マクスウェルは20の方程式を、xyz成分について記したものをまとめることによって、(A)〜(H)の8つに分類している。

 記法(Notation)の対比

 次の図2は、「1864年のマクスウェル原方程式と現代ベクトル記法とにおける記法(Notation)の対比」である。



 現代ベクトル記法のほうを見て、まず、磁場である。1864年のマクスウェル原方程式ではMagnetic Intensity が磁場を表わしているようだ。よって、磁場を次のように表わすことができる。( )内は、x成分、y成分、z成分の順で並んでいる。
   
 現代ベクトル記法の電流で、全電流となる。1864年のマクスウェル原方程式ではCurrent due to conduction が電流で、Total Current が全電流となるだろう。これらの対応から、次のように記すことができる。
   
   
 現代ベクトル記法の電気変位である。1864年のマクスウェル原方程式ではElectric Displacement となっているようであるから、次のように記すことができる。
   
 現代ベクトル記法のρは(直訳すると)自由電荷密度ということになる。1864年のマクスウェル原方程式ではQuantity of free Electricity のeが、これに対しているようだ。正確には−eがρと等しいことになっている。
 現代ベクトル記法の磁気ポテンシャルである。1864年のマクスウェル原方程式ではElectromagnetic Momentum (磁気モーメント)と呼ばれている。これにより、次のように記すことができる。
   
 マクスウェルは、大文字のF, G, H と、小文字のf, g, h の記号を、まったく異なる物理量にあてはめている。また、このあと述べる、大文字のP, Q, Rと、小文字のp, q, r の記号も、まったく異なる物理量にあてはめている。注意が必要である。他にも文字はあっただろうに。これでは、まぎらわしい。
 現代ベクトル記法の電場である。1864年のマクスウェル原方程式ではElectromotive Force (起電力)となっている。よって、次のように記すことができる。
   
 現代ベクトル記法のΦは電気ポテンシャル(電位)である。1864年のマクスウェル原方程式でもElectric Potential となっているが、記号はΨである。
 現代ベクトル記法のσは電気伝導度 (electrical conductivity) である。1864年のマクスウェル原方程式では、この一覧にないが、後の方程式の(E)グループに用いられているρについての説明を原文から探してくると、「体積あたりの空間的な抵抗 (the specific resistance referred to unit of volume)」となっている。このときの説明文に、In isotropic substances と記されているので、図1に記されてある「均質等方媒質中」という条件のもとでのことであろう。

 (A)〜(H)分類の方程式

 マクスウェルがグループ分けした(A)〜(H)の方程式について、Aと@の具体的な表現における比較を行う。(A) The relation … などと記してある文章は、1864年のマクスウェル論文における説明文である。



 上記にある記法の対比より、である。 マクスウェルの微分項では導関数のdtが用いられており、現代ベクトル記法では偏導関数の∂tが用いられている。1864年には、まだ、偏微分という区別がなされていなかったようだ。



 ここのところは、左右で見事に対応している。しかし、これが「磁気ポテンシャルの定義」と記されていることには問題がある。これでは、「磁場H」のほうだけが実在する物理量で、「磁気ポテンシャルA」は、そこから形式的に定義されたものということにもなりかねない。
 「磁気ポテンシャルA」は「アハラノフ・ボーム効果」の検証実験によって、実在するものとして確認された [5] わけであるから、ここのところは、ただの定義式として見過ごすことはできない。



 図1にある、4つのマクスウェル方程式で、これらに対応しそうなものは、次のものである。
   
 現代ベクトル記法における∇×Hはrot H とも記される。
これは、上記(A)の を、に代入することによって導くことができる。
 1864年のマクスウェル原方程式の(A)と(C)が組み合わさって、上記図1のとなっていることになる。



 ここに現れるμは均質等方媒質中での透磁率であろう。
 図1にある、4つのマクスウェル方程式で、これらに対応しそうなものは、次のものである。
   
 しかし、これは、うまく対応していない。
 (4) では、電磁誘導の法則を、電場Eの回転 ( rot E) と磁束密度Bの変化 (∂B /∂t) の関係として記述している。
 「宇宙がわかる17の方程式」[6] の「5 電磁気力 ローレンツ力の法則」に記されている数式は次のようなものである。
   
 この式でのqは電荷のようだ。均質等方媒質中での透磁率μの値は、光速度cの逆数1/cとなっているらしい。ここでは、「ローレンツ力」がと記され、電場Eと区別されている。この数式と見比べれば、次の関係式が得られる。
   
 「電磁力学」のテキスト[7] では、この関係式が記述されているものの、4つのマクスウェル方程式では、完全に無視されている。







 現代ベクトル記法における記号と書かれることもあるので、
   
となる。上記図1の と一致する。



 もうひとつ、図1の4つのマクスウェル方程式の中で、1864年のマクスウェル原方程式と対応していないものがある。次のものである。
   
 確かに、磁気モノポールは発見されておらず、いまのところ、存在しないとしておくべきだろう。

 オリヴァー・ヘヴィサイドと「マクスウェルの方程式」

 20もあった1864年のマクスウェル原方程式が、ベクトル表記としてxyz成分の3つが1つにまとめられたとはいえ、4つの方程式になったのは、1884年のことらしい。
 「世界でもっとも美しい10の物理方程式」[8] の「第6章 一九世紀最大の出来事 マクスウェルの方程式」に、このあたりの事情が詳しく述べられている。
 1864年のマクスウェル原方程式にあった「ベクトルポテンシャルA」と「静電ポテンシャルΨ(プサイ)」は、ヘヴィサイドによって切り捨てられたようだ。
 「世界でもっとも美しい10の物理方程式」では、このことにより、「マクスウェルの方程式が使いやすい形に標準化された」としている。「マクスウェルの研究成果は、一気に四つの方程式へと凝縮された」との表現もある。
 このころには、「ベクトルポテンシャルA」と「静電ポテンシャルΨ(プサイ)」にかかわる現象が、まったく知られていなかったので、しかたがないことだったのかもしれない。
 しかし、2000年のころ、「アハラノフ・ボーム効果」の検証実験が行われ、「ベクトルポテンシャルA」のみによる作用が確認された[5]。このことを考慮すれば、「ベクトルポテンシャルA」を無視するわけにはいかなくなった。また、「静電ポテンシャルΨ(プサイ)」のほうも、まだ確かなものではないかもしれないが、このスカラー値にかかわる現象が存在する可能性がある。
 「マクスウェルの方程式」は「ベクトルポテンシャルA」と「静電ポテンシャルΨ(プサイ)」を切り捨てることなく、もう一度、整理される必要があるだろう。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, March 11, 2012)

 参照資料

[1] 「マクスウェル方程式とローレンツゲージによるスカラー電磁波方程式」
  http://www.treeman9621.com/ChimeraMeam2/CMT04/LorentzGauge.html
[2] @ A Dynamical Theory of the Electromagnetic Field ? Wikipedia
  http://en.wikipedia.org/wiki/A_Dynamical_Theory_of_the_Electromagnetic_Field
[3] A A Dynamical Theory of the Electromagnetic Field : Maxwell, J. : Free ...
  サイト http://www.archive.org/details/philtrans00041514
  PDF ファイル http://ia700505.us.archive.org/34/items/philtrans00041514/00041514.pdf
[4] [PDF] A Dynamical Theory of the Electromagnetic Field
  http://www.stannet.ne.jp/kazumoto/maxwell_emf_1865.pdf
[5] 会誌2000年12月
  http://www.ieice.org/jpn/books/kaishikiji/200012/20001201-1.html
[6] 「宇宙がわかる17の方程式」サンダー・バイス(著)、寺嶋英志(訳)、青土社(刊) 2006
[7] 「電磁力学」牟田泰三(著)、岩波書店(刊) 1992
[8] 「世界でもっとも美しい10の物理方程式」ロバート・P・クリース(著)、吉田三知世(訳)、日経BP社(刊) 2010

 

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