地震波形の研究 Earthquake Wave Study
ews1 もう一度地震波形の研究をしよう

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 かつて私は地震波形の研究をしていました

 かつて私は地震波形の研究をしていました。
 地震波形といっても、自然に起こる地震についてではなく、ダイナマイトなどの爆発を震源とした、人工地震についての波形でした。
 これを詳しく調べ、地中の様子をイメージングするという技術を開発していました。
 医療の世界にCTスキャンという技術があります。これは、もっと一般的な呼び名で、トモグラフィという技法を応用したものです。
 このトモグラフィは、人体の周囲を、いろいろな方向から調べたデータを利用して、その内部の様子をイメージングするものです。
 ところが、地面の中を対象としたときには、地中の深いところに観測機器を並べるということができないので、このトモグラフィという手法が使えません。
 そこで私が考えたのは、地中のいろいろな深さにある地層で反射してくる波をモデリングして、波形のパターンから情報を引き出す、というアイディアでした。
 この研究が進んでいたとき、世の中の仕組みが大きく変わってしまいました。
 そのため会社が縮小され、私は、このような仕事を続けることができなくなりました。
 もう20年もたっています。
 地震の波形のことなぞ、すっかり忘れてしまっていました。
 でも、2018年の6月18日に起こった大阪北部の地震の振動を体験し、9月6日の午前3時15分ごろにふと目覚め、ネットのニュースで北海道胆振東部の地震のことを知って、私は、もう一度地震波形の研究をしよう、と思い立ちました。
 これはまだ確かなことではありませんが、これらの地震が、どうも「普通ではない」と感じられるからです。でも、いったい何が「普通ではない」のか。

 6月18日の大阪北部の地震のとき

 6月18日の大阪北部の地震のとき、たまたま私は(外部の)ホームページの更新の仕事を徹夜でやっていて、大きな問題を抱えてしまい、一度ベッドに横たわって、眠れるものなら眠ってみようと思っていました。そのとき、突然、身体が左右に激しくゆすぶられました。こんなに大きな揺れを体験したのは初めてです。あとからこの体験を思い出して、P波の小さな揺れを感じなかったことに気づきました。もうひとつ不思議だと思ったのは、こんなに激しく揺れたのに、本棚の本が飛び出すこともなかったし、庭にある石灯篭や、池の周りに置いてある、干支の陶器の置物が、ひとつも倒れていないことです。震源に近い大阪では、ブロック塀が折れて倒れました。地中の水道管も壊れました。家が壊れたところもありました。確かに大地震です。

図1 6月18日の大阪北部地震の私が感じた地震波形(最大振幅は0.168[cm])

 近畿地方で生活している者にとっては、1995年の阪神淡路大震災がありました。私はこのとき、東京へ転勤していて、この地震のことは、テレビのニュースで知りました。工事の一部に関わった、西宮港あたりを通る高速道路の橋が壊れたところを見て、とても驚きました。

図2 1995年の阪神淡路大震災の地震波形(最大振幅は2.944[cm]!)

 東京では、ここしばらく(何十年か)大きな地震は起こっていませんが、小さな地震や中ぐらいの規模の地震が、よく起こっていました。
 あるとき、現場の仕事のため、旅館に泊まって、畳に敷いた布団の上に横たわっていたとき、地震の波を感じたことがあります。小さな振動のP波から始まって、やや大きな揺れのS波となり、突然、船の上にいたかのように、もっとゆっくりですが、横に大きく揺れました。「表面波」と呼ばれているものでした。このとき私は、動かない地面の上で暮らしていたわけではないということを感じたことを憶えています。小さな規模の揺れで、被害もとくになかったのでしたが、地震はこわい、と思いました。
 このような、ときどき体験する地震のことと比べて、今年(2018年)の6月18日に起こった、大阪北部の地震は、ちょっと違うと思われるものでした。
 地震の規模が大きいということと、すぐ近くというわけではありませんが、比較的近かったので、これまで体験したものと違うのかもしれないと感じたのかもしれません。

 それでは、いったい何が違うのだろうか

 それでは、いったい何が違うのだろうか。
 そのことを具体的に見極めるためには、観測されている地震波形を、自分が知りたいことを見出せるように解析できなければなりません。
 他の人が解析した地震波形からは、他の人が理解した結果しか読み取れません。
 科学的なデータといえども、解析の仕方によっては、分かるはずのものも、見逃してしまいます。
 観測機器の精度や、解析手法の技法によって、分かることが違ってくるのです。
 私は、このような地震の観測データが得られるサイトを探し、そこで得られる観測データの書式がどのようになっているのかを調べ始めました。
 新たにC言語で地震波形の解析プログラムを組み上げるため、これまで作り上げてきた画像解析ソフトではなく、もっと小さくて、余計なものがあまりない、やり投げのシミュレーションプログラムを探し出しました。そして、ここで行っていることをすべて消し去り、ただの白い画面が現れるだけのものを用意しました。
 まさに、真っ白なプログラムからスタートするのは、ひさしぶりのことでした。
  (Written by KLOTUKI Kinohito, Sep 19, 2018)

 

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