地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS12 2018年6月18日の大阪府北部地震で不思議なこと(1)

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 このテーマにおける内容が多岐にわたるので、このページでは、それらのあらましを説明し、さらに詳しいことについては、タイトルを変えて、ひとつずつ解析してゆきたいと思います。

 不思議ではないこと ◇ 先行波がない

 不思議なことを述べるまえに、不思議ではないことを取り上げます。
 ここまでの解析で、2018年北海道胆振東部地震と、2004年新潟中越地震の地震波形において、地震が起こったときから走り出したP波の前に、P波ではありえない、謎の先行振動が記録されていることを突き止めました。
 ここで少し間をとって、2018年の大阪北部地震について解析しようというわけですが、この流れでは、やはり、この大阪北部地震でも謎の先行波が存在するのかどうかを知りたいと思うはずです。
 そして、調べてみたのですが、ここまでいろいろ試行錯誤して、解析の精度をあげてきた方法を適用したところ、次の図1のようになりました。

図1 2018大阪北部地震 高槻市桃園(震央距離)0.3km における
S波の初動時刻(読み取り)、発震時(速度グラフより)から決めた、P波の初動位置
(画像をクリック → 拡大画像へ)※引き続いて他の観測点の解析へ進みます

 まさに、これまでの解析法で求めたP波の初動位置は、P波が始まる読み取り位置と、ほぼ一致しました。
 この方法のため、あらかじめ、図2のような、横軸に震源からの距離をとり、縦軸に、P波やS波の読み取り初動時刻をプロットして、それらの回帰直線を描いたグラフを作りました。
 回帰直線は、(当然のことなのでしょうが)震源からの距離0のところで交わりました。よって、このときの時刻33秒を発震時として使います。ここで調べたP波速度とS波速度は、全体の平均速度です。それぞれの観測点までの局所平均速度は、これを基準として、少し調整して使います。

図2 大阪北部地震におけるP波とS波の平均速度

 同じ手法を使って、先行振動が無いときは、きちんと無いとして解析できるのですから、これまで見つかった「先行振動」の信ぴょう性が高まることでしょう。
 2018年の大阪北部地震では、先行波があるかないかという観点から、異常性は見出せません。
 それではいったい、何が異常なのでしょうか。

 この地震のメカニズムが分かっていない / 断層による地震として理解できない

 「大阪北部地震」と「メカニズム」で検索して、初めにリストアップされたものは、ウェブ版の新聞ニュースでした。「震源断層は特定できず 複雑な発生メカニズム 地震調査委が評価公表」[2] というタイトルのものです。
 これ読んでみると、この地震が、どの「断層」に関係して起こったのかを特定できない、という視点だと分かります。
 この地震が、通常の「断層のずれ」によって起こったものと考えるところに無理があります。
 「政府の地震調査委員会」の方々は、この地震の地震波形を見ていないのでしょうか。
 この地震の地震波形を見て、おおよそ、何が起ったかを、物語としてまとめてみれば、これが普通の「断層のずれ」によって起こったものではないことが分かるはずです。

 UD(上下)成分波形のP波が高周波かつ大きな振幅でNS, EWより先行している

 あらためて、図1で3つの矢印を入れる前の、大阪北部地震 高槻市桃園(震央距離)0.3km の3成分地震波形を、図3として観察しましょう。

図3 2018大阪北部地震 高槻市桃園(震央距離)0.3km
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 このとき、波形の振幅についての正規化の方法は[ALL] を使っています。すなわち、これらの3つの波形の中での最大振幅の値(NSの440.910 [gal])が、縦の100ピクセルとして表示されるように正規化しているのです。振幅の基準は1つです。
 すると、UD成分のP波の振幅が、異常に大きいということが、すぐに分かります。
 通常の「断層のずれ」による地震では、3つの成分におけるP波の振幅は、同じくらい小さなものです。
 もっと拡大すれば見えてきますが、UD波形のP波が、他のNS波形, EW波形より、少し先行しています。
 だから、この地震が起こったときのことを物語れば、まず最初に、何かが上下に強く、高い振動数で激しく揺れたということになり、その影響が水平面に伝わり、自然な、小さな振幅のP波として動き始め、少し遅れて、S波が活動し始めた。そのようになるかと思われます。
 このような現象を、斜めになっていることが多い断層のずれで説明するのはむつかしいことです。
 もし、垂直な断層面があったとしたら、そこでS波が生じて、UD波に記録されるはずですが、そうはなっていません。
 UD成分の初めのP波の振幅の変化が、爆発のような現象で見られる、独楽を横倒しにしたような、三角形の形ではなく、ひし形の形になっています。突然何かが爆発したというより、1秒くらいかけて、比較的ゆっくり、膨れ上がって、すとんとすぼんだかのようです。
 いったい何が起ったのでしょうか。

 UD(上下)成分波形のP波にW10ウェーブレット成分波(2.5Hz)が強く現れている

 次の図4は、2018大阪北部地震 高槻市桃園(震央距離)0.3kmにおける原波形(黒)とW10(2.5Hz)ウェーブレット波形(青) です。
 これを見ると、UD波形で、2.5HzのW10ウェーブレット成分波形が、他のNS波形やEW波形より、先行して、まさにP波の初めから強く現れています。
 これはかなり珍しいというか、異常な現象です。
 見て分かるように、これらのP波は一般に高周波で、W2ウェーブレットでもっとも取り出せます。
 ここにW10の波が初めから隠れて存在しているのは、不思議なことなのです。
 NS波形やEW波形で現われているように、W10の成分は、ここではS波の主流となるものです。
 そのW10の波がP波の初めから強く存在しているわけです。
 他の「自然な地震」の波形では、めったに、そうはなりません。
 これは一つの仮説ですが、2.5HzのW10に相当する振動が、外から加えられていたとすれば、説明できるかもしれません。
 (Written by KLOTUKI Kinohito, Oct 8, 2018)

図4 2018大阪北部地震 高槻市桃園(震央距離)0.3kmにおける
原波形(黒)とW10(2.5Hz)ウェーブレット波形(青)
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 参照資料

[1] 気象庁の強震波形(大阪府北部の地震)
[2] 震源断層は特定できず 複雑な発生メカニズム 地震調査委が評価公表
 (一部引用しました)
 大阪府北部で震度6弱の揺れを観測した地震の発生を受け政府の地震調査委員会は18日、臨時会合を開き今回の地震に関する評価をまとめ公表した。地震を起こした震源断層は特定できず、周辺の活断層帯と「関連した活動である可能性がある」との表現にとどまった。
 会見した平田直委員長は「(発生メカニズムが)非常に複雑で、どの断層に関連しているかを言うのは難しい」と述べた。

 

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