地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS15 異常な上下振動から始まる地震波形を探す
2018年6月18日の大阪府北部地震で不思議なこと(4)

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 異常な上下振動から始まる地震波形

 異常な上下振動から始まる地震波形についての5つの条件をまとめておきます。

表1 異常な上下振動から始まる地震波形の5つの条件



 2014年石狩地方南部地震の「白老町大町」

 震源に近い観測点で「異常な上下振動から始まる地震波形」をもつ地震として、「2014年石狩地方南部地震」があるということが分かりました。
 この地震のデータは、気象庁の「主な地震の強震観測データ」[1] にはないのですが、2018年9月6日におこった北海道胆振東部地震のP波速度とS波速度を調べていたら、あまりに速かったので疑問に思い、それ以前におこった北海道の内陸地震の地震波形データがどこかにないかと調べると、同じ気象庁のサイトに「長周期地震動に関する観測情報(試行)」[2] というページがあって、その2014年の一覧表から、「石狩地方南部」[3] を見つけ、このページの「各観測点の加速度ファイル」をクリックして、acc.tar.gzを保存し、そのダウンロードしたものを適度なディレクトリに移して解凍して、調べたものです。
 図1は2014年石狩地方南部地震の「白老町大町」のAMP[2], TIME[1](1600-) です。
 2018年の大阪府北部地震では、UD成分波形の、P波のもっと初めのところに、大きな振幅でひし形のパターンがありました。
 この「白老町大町」のデータでは、UD成分波形の、P波の全体にわたって、もうすこし穏やかな変化ですが、しだいに大きな振幅となり、NS波形やEW波形で最初のS波の一群が終わるころに向かって、ゆっくり振幅を減らしています。もっと細長いひし形のパターンだと考えれば、これも、上記の5つの条件を満たしているのかもしれないと考えて、とりあげました。

図1  2014年石狩地方南部地震の「白老町大町」
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 「地震前の振動」がある

 この地震の震度は、気象庁のサイトによると、「ごく浅い」となっていました。さらに、いろいろと調べたところ、3km と記しているものがありました。この値も、どこまで信用できるか分かりませんが、とりあえず、この値の3kmを使って、公表されている「震央距離」を「震源からの距離」に変換して、図2の、2014年石狩地方南部地震の「白老町大町」のP波速度とS波速度のグラフを作りました。
 通常の地震ですと、このようにして「震源からの距離」に直したとき、P波速度の回帰直線とS波速度の回帰直線が、ぴったり、距離0のところで交わります。
 2018年の北海道胆振東部地震では、同じグラフで、距離0のところで交わりませんでした。2018年の北海道胆振東部地震で、うまく交わらなかったのは、P波初動の前に「先行波」がついていたからです。
 とすると、この2018年の北海道胆振東部地震でも、「先行波」もしくは「地震前の振動」があるのかもしれません。

図2  2014年石狩地方南部地震の「白老町大町」のP波速度とS波速度のグラフ

 ありました。次の図3は、図2のS波の回帰直線が距離0で交わる時刻(26秒)を発震時とみなして解析したものです。このときのS波速度は1.9 [km/s] となります。かなり遅いです。
 図4はP波の回帰直線が時刻0で交わる時刻(25秒)を発震時とみなして解析したものです。こうなると、S波速度は 1.5 [km/s] です。
 図2の様子から、ほんとうの発震時は、27秒あたりではないかと思えます。もし、そうだとしたら、P波の初動位置は、もっと遅いところとなります。
 いずれにしても、図3と図4では、P波の初動位置は、UN波形の振動が始まる時刻より、1秒ほど遅れたところにあります。
 この最初の1秒程度の部分が「地震前の振動」ということになります。

図3 2014年石狩地方南部地震の「白老町大町」のP波初動位置の判定(発震時26秒として)
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図4 2014年石狩地方南部地震の「白老町大町」のP波初動位置の判定(発震時25秒として)
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 考察

 2014年石狩地方南部地震の「白老町大町」のUD波形のデータでは、P波のひし形パターンは、かなり細長いものでした。
 震源の深さが浅いので、震央距離を震源からの距離にかえたとしても、あまり変わりません。その震央距離が7.1kmと、かなり近いのに、S波の初動位置(30.0秒、図中の数で20.0)の前にあるP波が、すこし長いようです。NS波形やEW波形のP波の振動より、UD波形のP波は、さらに先行しています。これはちょっと変です。
 確かめてみたところ、やはり、「地震前の振動」が見つかりました。
 もしこれが、自然な断層地震であるのなら、他の自然な断層地震のデータがそうであるように、NS, EW, UD の成分波形でのP波のはじまりがほぼ一致して、しかも、同じくらいの(S波に比べて)小さな振幅となるはずです。
 加速度の振動として、NS, EWのS波の最大振幅と、ほぼ同じ値で、UDのP波によって、大きな振幅の振動となっているというのは、やはり、自然な断層の地震ではないと考えられます。
 それでは、いったい、この2014年石狩地方南部地震や、2018年大阪府北部地震、そして、熊本地震の中で最も顕著な1回目(2016年4月14日21時26分)においては、どのようなことがおこったというのでしょうか。
 「謎の先行波」すなわち「地震前の振動」が見つかっている、2018年9月6日の北海道胆振東部地震が、ここにかかわってきます。
 さらには、EWS10で詳しく調べた、2004年新潟県中越地震でも「謎の先行波」すなわち「地震前の振動」が見つかっています。
 ここまで、こまぎれに調べてきた、「謎の先行波」と「UDひし形波」に関係する地震について、次の表2でまとめてみました。

表2 「謎の先行波」と「UDひし形波」に関係する地震



 これらの共通点はなにか。
 あまり確かなことではないのでしょうが、これらの地震には「人工地震の疑い」がかかっているということです。
 このほかに「人工地震の疑い」がかかっているものとして、「1995年の阪神・淡路大地震」と「2011年の東北地震」がありますが、1995年の阪神・淡路地震では、残されている記録が少ないこと、2001年の東北地震では、震源までが遠いということで、あまり詳しい解析は進んでいません。
 (Written by KLOTUKI Kinohito, Oct 11, 2018)

 参照資料

[1] 気象庁の「主な地震の強震観測データ」
[2] 気象庁の「長周期地震動に関する観測情報(試行)」
[3] 長周期地震動に関する観測情報(試行)の「石狩地方南部」

 

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