地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS18 地震波形解析ソフトの機能を拡張しました

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 地震波形のウェーブレット解析ソフトの脱皮

 EWS17で地震波形の解析ソフト eqwavelet.exe についての「今」ということで説明しましたが、この「考察」のところで、映像のスローモーションに相当する機能を組み込んでいないことにふれました。
 アルゴリズム自体はそれほどむつかしくないのですが、この解析ソフト eqwavelet.exe の問題点は、スイッチカラムのスペースが、もうほとんど無いというところにありました。
 人間や動物の進化と同じで、さいしょの基本設計がまずいと、袋小路に陥ってしまいます。まるで、節足動物が外骨格というシステムを取り入れたために、脱皮をしなければならないように、このソフトも、進化するためには、スイッチ領域をどのように確保するかということに取り組まなければなりませんでした。

 全体像とスイッチ

 新しく機能を拡張させた解析ソフトeqwavelet.exe の全体像と、スイッチの様子を示します。
 スイッチ領域の確保のため、地震波形データリスト を2行ずつ切り取って、下に移すということをしたあと、PAGE を波形表示領域の上のあたりにもってゆく、ということにしました。
 波形表示領域の片隅に間借りしていたリセットマークを、スイッチカラムのいちばん上に移し、重要度が高いと思われる項目から並べてゆくことにして、理解しやすいようにしました。

図1新しく機能を拡張させた解析ソフトeqwavelet.exe の全体像
データは 2016年熊本地震(1)「宇城市松橋町」 SGL[3C]
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図2 スイッチの配置

 EWS17の段階での機能に対して、何が変わったかというと、次の2点です。
 (1) 波形表示形式の一種として、これまで NS, EW, UDという、3つのチャンネルの地震波形を並べていましたが、これらのシングルチャンネルの地震波形だけを表示できるようにしました。
 (2) 時間幅を短くして TIME[2] から TIME[16] に変えるというのは、映像における「早送り」のようなものですが、この逆の(動いているわけではありませんが)「スローモーション」に相当する、時間軸を2倍 [1/2] と4倍 [1/4] に伸ばせるようにしました。このときの [1/1] は TIME[1] と同じです。

 シングルチャンネル

 図1のデータについて、NS, EW, UD の各チャンネル波形を、図3から図5でシングルチャンネル表示としました。振幅は4倍にしてあります。なお、このときの時間幅は TIME[1] なので SLOW[1/1] となります。

図3 2016年熊本地震(1)「宇城市松橋町」 SGL[NS], AMP[4], SLOW[1/1]
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図4 2016年熊本地震(1)「宇城市松橋町」 SGL[EW], AMP[4], SLOW[1/1]
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図5 2016年熊本地震(1)「宇城市松橋町」 SGL[UD], AMP[4], SLOW[1/1]
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 スローモーション

 上記図5のUDチャンネル波形 SLOW[1/1] について、図6では SLOW[1/2] として2倍に時間軸を伸ばし、図7では SLOW[1/4] として4倍に伸ばしました。

図6 2016年熊本地震(1)「宇城市松橋町」 SGL[UD], AMP[4], SLOW[1/2]
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図7 2016年熊本地震(1)「宇城市松橋町」 SGL[UD], AMP[4], SLOW[1/4]
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 応用A

 応用Aとして、2011年東北太平洋沖地震「岩手県大船渡市猪川町」のUD波形P波初動あたりを、シングルチャンネルのスローモーションで観察しました。

図8 2011年東北太平洋沖地震「岩手県大船渡市猪川町」のUD波形P波初動 SLOW[1/1], AMP[M]
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図9 2011年東北太平洋沖地震「岩手県大船渡市猪川町」のUD波形P波初動 SLOW[1/2], AMP[M]
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図10 2011年東北太平洋沖地震「岩手県大船渡市猪川町」のUD波形P波初動 SLOW[1/4], AMP[M]
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 これの比較として、図11を取り上げました。これは、自然な断層地震と思われる、2014年長野県北部地震「輪島市鳳至」のUN波形P波初動あたりです。さいしょに少しある小さな振動はノイズで、P波の初動は、SLOW[1/4] では低周波に見える、黒い犬歯のようなパターンのところです。

図11 2014年長野県北部地震「輪島市鳳至」のUN波形P波初動 SLOW[1/4], AMP[M]
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 図10と図11を比較すると、2011年東北太平洋沖地震の、P波の一番先についている、AMP[M]でようやく見えてくる、ノイズではない、一定の振幅の信号が、かなり異質なものだということが分かります。図10の信号は、通常の AMP[1] では見えませんし、AMP[X]でも見逃してしまうようなものです。しかし、ここに何らかの信号が隠れていたわけです。

 応用B

 応用Bとして、北海道胆振東部地震「名寄市大通」のP波前の「謎の先行波」について観察します。
 図12は、(どのチャンネルでも似たようなパターンですが)UDチャンネルのP波前の「謎の先行波」について、SLOW[1/2], AMP[XX](20倍)です。
 図13と図14は SLOW[1/4] にして、その前半と後半です。
 これらの観察から、これが「ノイズ」でもないし、「小さな地震」によるものではないと、判断できると思います。もしこれが「自然な小さな断層地震」によるものだとしたら、周波数がいろいろなものになって、ランダムな波の幅の分布になるはずです。しかし、この信号での周波数は、みごとに一定の値に収まっています。
 図15のようにして、この信号の周波数を求めたところ19 [Hz] でした。これは自然な現象によるものとは考えられません。何らかの人工的な信号だとみなせます。

図12 北海道胆振東部地震「名寄市大通」のP波前の「謎の先行波」 SLOW[1/2], AMP[XX]
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図13 北海道胆振東部地震「名寄市大通」のP波前の「謎の先行波」(前半) SLOW[1/4], AMP[XX]
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図14 北海道胆振東部地震「名寄市大通」のP波前の「謎の先行波」(後半) SLOW[1/4], AMP[XX]
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図15 赤枠は1秒間 ここでの(上下1回ずつの波についての)振動数は19回なので19 [Hz]
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  (Written by KLOTUKI Kinohito, Oct 16, 2018)

 参照資料

[1] 気象庁の「主な地震の強震観測データ」
[2] 気象庁にある北海道胆振東部地震の観測データ
長周期地震動に関する観測情報(試行)
北海道胆振東部地震
「各観測点の加速度ファイル」 ここをクリックして acc.tar.gz を保存して解凍する

 

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