地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS23 コンパス解析で大阪府北部地震波形のP波を観察する(2)

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 コンパス解析とは、地震波形を水平面での動きで記録した、NS(北南)チャンネルとEW(東西)チャンネルのデータをベクトル合成して、地震波形が来る方角と振幅を求めて、ともに表示できるようにしたものです。
 詳しくは、EWS21やEWS22を参照してください。
 このEWS23はEWS22の続きです。
 2018年6月18日7時58分におこった大阪府北部地震について解析します。

 震央から1km以内の「高槻市桃園(市役所)」と「高槻消防本部」のP波

 EWS22では、震源から最も近い観測点の「高槻市桃園」(震央距離)0.3kmについて調べました。「高槻市桃園」に何があるかというと、市役所です。多くの地震計は市役所や消防の建物に設置されているようです。同じ「高槻市桃園」の区画内に、「高槻消防本部」の地震波形記録がありました。
 気象庁のデータでは、震央距離が0.3km(市役所)と0.6km(消防本部)とされていますが、緯度と経度の情報を使って、国土地理院の「距離と方位角の計算」のサイトで計算したところ、市役所は0.5kmで、消防本部は0.7kmとなりました。図1の地図によれば、こちらの値の方が近いようです。  この地震の震源の深さは13kmだそうですから、これを考慮すると、震源からは、ほとんど違わない距離のようです。

図1 震央近くの地図(国土地理院による[4])
左上のマークは高槻消防本部、その右の◎が市役所、城内町のマークが震央
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 図2はEWS22で示した、「高槻市桃園(市役所)」(震央距離)0.3kmのP波についての解析です。このときの設定と同じようにして解析した、「高槻消防本部」(震央距離)0.6kmのP波についての解析が図3です。

図2  「高槻市桃園(市役所)」(震央距離)0.3kmのP波についての解析
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図3 「高槻消防本部」(震央距離)0.6kmのP波についての解析
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 P波が来た方角については、あまり違いは見られません。
 しかし、わずかな距離の差であるものの、S波のパターンは微妙に違ってきています。

 震央から10km以内の観測点のP波

 あまり細かなところまで議論できるかどうか、まだはっきりしていません。
 震源から、もう少し遠いところにある観測点の地震波形を4つ調べます。いずれも震央距離が10km以内です。
 その4つの観測点がある位置を、図4の地図に赤丸で記しました。赤色の×マークが震央です。

図4 震央(×)と震央から10km以内の観測点(○)

 次の図5から図8で、これらの4観測点における地震波形から構成したコンパス解析の波形において、P波の部分を(振幅を大きくし、時間を遅くすることによって)拡大し、P波が来た方向を推定しました。
 コンパス解析では、横の時間軸に沿った方向に振幅が描かれるとき、その様子が分かりにくくなります。この問題を避けるため、方角を90度回転させて描くモードを作ってあります。北が上にあるのがデフォルトですが、方角を90度左回転して、北が向かって左となることがあります。
 図4の地図と対応させるためには、解析図を90度右回転して見比べてください。

図5 「枚方市大垣内」(震央距離)4.7km
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図6 「茨木市東中条町」(震央距離)5.8km
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図7 「寝屋川市役所」(震央距離)9.1km
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図8 「島本町若山台」(震央距離)5.7km
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 まとめ

 方角が変わった解析については、90度回転することにより、北が上になるような図を作り、図4の地図に組み込んで、対応が見やすくなるようなものを作りました。次の図9です。
 P波の来た方角は、おおよそ、うまく対応しているようです。震央から観測点への直線を引いて比べたとき、これとぴったり合うわけではありませんが、おおよその方角はとらえられているようです。
 この地震は大阪と京都の境目あたりで起こっており、内陸で人口密集地点のため、いろいろな観測点が設けられています。
 ここまで調べた観測点のデータでは、ほぼ想定どおりの解析結果となりましたが、さらに調べてゆくと、かんたんには解釈できないようなケースがあるようです。

図9 震央から10km以内の観測点の方角とP波が来た方角
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  (Written by KLOTUKI Kinohito, Oct 27, 2018)

 参照資料

[1] 長周期地震動に関する観測情報(試行)
北海道胆振東部地震
「各観測点の加速度ファイル」 ここをクリックして acc.tar.gz を保存して解凍する
[3] 大阪府北部地震
[4] 距離と方位角の計算 国土土地理院の地図

 

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