地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS25 地震波形コンパスウェーブレット解析ソフト(eqcw.exe)

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 地震波形を調べる解析ソフトを、もう一度組み上げようと考えました。9月中旬のころです。
 第一段階は、気象庁から提供されている地震波形の数値データを読み込んで、コンピューターのディスプレイの画面に、波形のグラフとして描くことでした。振幅を自由に変えるというのは、かんたんにできます。ちょっとむつかしいのは、時間幅を変えることです。これだけで、気象庁やK-NET のサイトで見る地震波形が、きょくたんに時間圧縮されたものであり、単位時間(1/100秒)の波形データをコンピューターのディスプレイの1ピクセルごとに表示するという、「生の」あるいは「リアルタイムの」地震波形を見ることができます。
 次に取り組んだのは、ウェーブレット解析により、地震波形を周波数ごとに分けることでした。この技術は20世紀の終わりごろに現れました。
 このあと、コンパス解析というものを生み出しました。さいしょにコンパス解析で調べ始めたのはP波についてです。なぜかというと、S波のところのパターンは、あまりに複雑すぎて、どのように情報を読みとってゆけばよいのか、まったく考えが浮かばなかったからです。
 ウェーブレット波形でコンパス解析する、というアイディアがわいてきました。
 これまでのプログラムの設計方針がよくなかったので、このアイディアを実現するために、何度も考え方を変えてゆかなければなりませんでした。しかし、なんとか、この機能も組み込むことができました。このバージョンから「地震波形(earthquake wave)コンパス(compass)ウェーブレット(wavelet)解析」をシンボライズして、eqcw.exe とすることにしました。

 地震波形コンパスウェーブレット解析ソフト(全体像)

 地震波形コンパスウェーブレット解析ソフト eqcw.exe の解析画像のひとつを図1として示します。
 これは2018年6月18日7時58分におこった大阪府北部地震を観測点「枚方市大垣内」で記録した原波形データ(Org)[1] を、W40ウェーブレット波形で解析したものについての、NS(北南)成分波形とEW(東西)波形成分と、それらから構成したコンパス解析波形(CPS2)です。

図1 地震波形コンパスウェーブレット解析ソフト(全体像)
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 スイッチ

 地震波形コンパスウェーブレット解析ソフト eqcw.exe のスイッチについてまとめたものを図2として示します。これだけのスイッチすべてについて説明してゆくと、ここのページが終わりそうにありませんので、このページに関係のあるものについて、かんたんにふれることにします。

図2 地震波形コンパスウェーブレット解析ソフトのスイッチ
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 共通に指定したスイッチで重要なのは、波形のモード [le](変位)、正規化 [ALL]、時間はスローモーションのほうが優先して SLOW[1/2] となります。振幅はAMP[4]、あとは、ざっと飛ばして、コンパス解析の種類が [2S](2チャンネルデータを使ったシングル表示)ということです。
 この後の図を生み出すための主なスイッチは「コンパスウェーブレット解析」のところの9つです。
 [O→] はもとの波形(Org)をそのまま使うという意味です。この矢印の右にはOがくるのですが、多くのスイッチでは省略しています。
 [W2→] から [W80→] は、これらのウェーブレット関数で取り出した波形を、もとの波形の代わりとして使うという意味です。
 [4W→O] は4つのウェーブレット波形を組み合わせてから、もとの波形と置き換えたことを意味しています。このときの4つの波形を生み出したウェーブレット関数は、W10, W20, W40, W80です。低周波成分を取り出したものです。
 [W2W5→] は、W2とW5のウェーブレット波形を組み合わせたもので、もとの波形と置き換えたものです。こちらは高周波成分です。

 もとの波形(Org)のコンパス解析

 もとの波形(Org)についてコンパス解析したもの(シングル表示)が図3です。
鳥の頭とくちばしのように見えるP波の部分に続いて、S波のところが鳥の翼のように見えます。
 暗い青色の線は、鳥の頭に見える青い部分のP波変位を起こした波が来た方角を示しています。
 この方角についての詳しい情報は、図2の「コンパス解析の方角表示」のところに示してあります。
 このデータでは北が向かって左に位置しています。

図3 もとの波形(Org)のコンパス解析
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 ウェーブレット解析した波形の低周波成分だけを再構成したものについてのコンパス解析

 ウェーブレット解析した波形の低周波成分だけを再構成したものについてのコンパス解析が図4です。このときの低周波成分とは、W10, W20, W40, W80 を合成したものです。
 図3のパターンと見比べると、鳥の翼か羽根に見えるところが、より抽象的な、何らかの数式で表現できそうな、きれいな形になっています。

図4 ウェーブレット解析した波形の低周波成分だけを再構成したものについてのコンパス解析
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 ウェーブレット解析波形のコンパス解析

 図4は4つのウェーブレット波形を組み合わせたものですが、それらの成分について、ひとつずつ観察してゆくことができます。
 図4には使っていませんが、高周波成分のW2から観察しましょう。

図5 もとの波形のW2ウェーブレット解析波形のコンパス解析
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図6 もとの波形のW5ウェーブレット解析波形のコンパス解析
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図7 もとの波形のW10ウェーブレット解析波形のコンパス解析
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図8 もとの波形のW20ウェーブレット解析波形のコンパス解析
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図9 もとの波形のW40ウェーブレット解析波形のコンパス解析
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図10 もとの波形のW80ウェーブレット解析波形のコンパス解析
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 図9のW40や図10のW80になると、コンパス解析によるS波の変化が、かなり分かりやすいものとなってきます。
 ウェーブレット解析の性質として、低周波の場合、もとの波形情報がない部分に、低い高さの波があるように出てきます。図3と図4を見比べると、図4で左端に下への波があるように現れていますが、これは、図10のW80の解析による偽像だと考えられます。

 ウェーブレット解析した波形の高周波成分だけを再構成したもののコンパス解析

 S波についての理解は低周波の解析で理解できそうですが、P波については、高周波のほうが理解しやすいのではないかと考え、W2とW5を組み合わせた [W2W5→] のスイッチとそれに対応した解析を準備しました。
 これによって何が分かるか、と、結論を急ぐのは、まだ早すぎます。このツールはいま生まれたばかりです。これで何が分かるかは、さらに多くのデータについて調べてからでないと、何も言えません。

図11 ウェーブレット解析した波形の高周波成分だけを再構成したもののコンパス解析
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 ウェーブレットコンパス解析の可能性

 よくよく考えてみると、ウェーブレット解析の機能がすでにあり、新たにコンパス解析という機能をつけくわえたのであれば、原波形についてコンパス解析を行っていたところの、原波形のところを、ウェーブレット解析による周波数成分波形に置き換えるというのは、自然な研究の流れだったのかもしません。
 ひとつひとつの周波数成分についてコンパス解析を行うことにより、とくに、S波が周波数成分ごとにどのような動きをしているのかを理解することができます。
 これまでS波は、地震が起こってP波が放射状に広がるとき、その進行軸に垂直な横方向に軸をもって、振動しながら伝わると考えられてきました。
 くわしいことは、これから分かってゆくと思われますが、実際の地震波において、はたして、そのようなことが起こっているのかどうかということは、これまで分かっていなかったのではないでしょうか。
 ウェーブレットコンパス解析にどのような可能性があるかということは、これから、このウェーブレットコンパス解析で地震波形を調べてゆくことにより、すこしずつ明らかになってゆくのかもしれません。
  (Written by KLOTUKI Kinohito, Nov 2, 2018)

 参照資料

[1] 2018-06-18大阪府北部地震

 

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