地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS3 P波が無いから人工地震というのは誤りです

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 人工地震が起こっているのだろうか

 人工地震という言葉を意識するようになったのは、ベンジャミン・フルフォード氏の情報を知るようになってからのことでした。あまりのショックで、こんなことは忘れてしまおう、とも考え、これらの情報から遠ざかるようにしていました。
 しかし、2018年6月18日の大阪北部地震や9月6日の北海道胆振東部地震の被害を知ることになり、この夏の異常な暑さ、あまりに強すぎる台風の到来など、ここのところの自然が、単なる温暖化による気候変動とは思えない状況になってきて、これはやはり、何かおかしい、と考えざるをえなくなりました。
 ウェブをサーフィンしてみると、「これらの異常気象は気象兵器や地震兵器で起こされた」と主張するサイトが浮かび上がってきます。
 それらの情報の中には、根拠の乏しいものもありますが、可能性として全否定できないものもあります。

 人工地震にもいろいろある

 自然地震に対して人工地震とは、どのようなものか。
 そういえば私は、40歳代のころ、地質調査の会社にいて、はじめは不発弾探査のための磁気探査の技法に取り組んでいましたが、やがて、弾性波とも呼ばれる、地中をつたわる地震波を解析して、地中の様子をイメージングする技術を生み出そうとする研究に向かっていました。
 そのころ取り扱っていた地震波は、よくよく考えて見ると、人工地震波でした。ダイナマイトで起こした小さな地震を、地面にほぼ等間隔で設置した受振器で記録して調べていたわけです。
 あるいは、ボーリング孔に水を満たし、その中につるした発振器と受信器のプローブのセットで、そのボーリング孔の周囲の地層を伝わるP波速度とS波速度を、かなり厳密に調べてゆきました。
 「ベンジャミン・フルフォード 地震」で検索して、「ちきゅう」という観測船が、海底をボーリングして、その中で「人工地震を起こして地質を調べる」ということが、何か事件性のある「証拠」であるかのように取り上げられていますが [3] 、地質調査の分野では、ごくごくあたりまえの調査方法の一つにすぎません。
 ウェブで考えられている人工地震というのは、このような小規模なものではなく、おそらく、多くの国で行われてきた地下核実験によるものでしょう。
 この技術は簡単なものであり、その発震源となる核爆弾も小型化されているはずです。確認したことではありませんが、ジェット機などのミサイルとして装備するサイズがあるのなら、ボーリング孔に沈めるくらいのことは可能なことでしょう。
 もう一つあります。そのメカニズムはよく分かりませんが、そのメカニズムを生み出した人物のことはよく知られています。この世界に交流電流のシステムを導入したニコラ・テスラです。
 この手法がすでに実用化されていて、地震兵器として存在しているということのようです。
 この技術が確立していることを裏づける情報として、このような地震兵器を使わないようにしようという条約が、すでに結ばれているそうです。
 この方法のメカニズムはよく分かりませんが、ボーリング孔のようなものを必要としないとしたら、その証拠をつかむのは、かなり困難なこととなりそうです。

 自然地震と人工地震の違い(1)

 このことについて調べられたサイトがあります。気象庁でまとめられたものです。ここで取り上げられている人工地震の波形データは、インドや北朝鮮で行われた地下核実験による地震波形のようです。このときの人工地震の発震メカニズムは、地中での爆発です。
 自然地震として知られているものの発震メカニズムは、歴史地震と断層が数多く発見されていることや、地震前後の地面の動きが観測されるようになって、地中の圧縮による限界が断層を伴って動くことだとされています。このようなメカニズムのおおもととなるのが、プレートテクトニクスなのだそうです。
 このようなメカニズムの違いを考えると、いくつかの指針が得られます。
 P波とS波の振幅の比が異なるという指針があります。
 一般に自然地震では、S波の振幅に比べて、P波の振幅は小さなものとなります。
 これに対して、地下核実験などによる爆発現象では、P波のほうが、とびぬけて大きくなります。
 このような違いが誤解されて、爆発にともなう人工地震では、はじめから大きな振幅の振動が記録されるので、「P波が無い」と言われるのですが、これは間違いです。
 さいしょにある大きな振幅の振動がP波であって、そのあとに遅れてやってくるはずのS波を見つけることのほうがむつかしいことなのです。
 もうひとつ、自然地震なのに「P波が無い」ように見えるケースがあります。震源から遠くなりすぎたため、もともと小さかったP波の振幅が、観測機器で記録できないくらいに減衰してしまうというものです。しかし、いろいろと調べたところ、現代の観測機器は優秀で、しかも記録システムがデジタルなので、P波が見つからないなどということはありません。
 この逆に、P波はあるけれど「S波が無い」というケースが存在することがあります。
 これは、P波とS波の振動のメカニズム違いによる現象です。P波は地震波が伝わってゆく進行方向を軸として振動する「縦波」なので、固い地中だけでなく、液体の中でも伝わります。これに対してS波は進行方向に対して横に振動する「横波」なので、液体の中では伝わりません。マントルのような動く固体でもS波は伝わらなかったのではないでしょうか。
 地面の中に水がしみ込んでいる地層があると、S波は、その地層へ振動のエネルギーを逃がすことができなくなり、固い表層だけに閉じ込められて伝わることになります。これにもう少し条件が加わることにより、「表面波」と呼ばれている、より低周波で大きな振幅の波となることがあります。
 P波とS波は、いつも同じように伝わるというものではないのです。

 自然地震と人工地震の違い(2)

 人工地震には、地下核実験のような爆発によるもののほかに、まだそのメカニズムはよく分かりませんが、地震兵器によるものがあることに触れました。ニコラ・テスラの本を読むと、テスラが起こした人工地震は「機械的な共振」を利用したもののようです。それが現在、どのようなメカニズムへと変わっていったのかが、まだよく分かりません。
 このときの人工地震の波形がどのようになるのかということも、まだよく分かりません。
 だから、このように、自分でデータを再構成して調べようとしているわけです。
 ひょっとすると、自然地震の波形とそっくりなものになるのでしょうか。でも、何か、どこかに、違いが隠れているという可能性は残っています。

 2016年4月14日の熊本地震について

 「HARMONIES ハーモニーズ(Ameblo版)」というサイトで、「地震波形を見ればわかる!熊本地震=人工地震」というタイトルをつけて、「2016年4月14日21時26分の熊本地震」の波形について語っています[4]。
 この「2016年4月14日21時26分の熊本地震」は、この年に起こった熊本地方の群発地震の、まさに最初の一つだったようです。
 記事では「昨晩の」とありますから、4月15日に記されたもののようです。
 防災科学技術研究所の強震観測網「K-NET」による公式データ [2] を取り上げて、「P波(初期微動)が全然なしに」と説明されています。
 これは(1)「熊本県熊本市」で観測されたものということですが、他に(2)同時刻の益城町の波形元データ」, (3)「震央から37km離れた山鹿市」, (4)「56km離れた人吉」, (5)「124km離れた鹿児島県大隅町」でも「P波が無い」とされています。
 この「2016年4月14日21時26分の熊本地震」が自然地震なのか人工地震なのかという評価あるいは判断は、とりあえずおいておき、これらの地震波形において、P波が無いのかどうかを調べようと思います。
 ただし、残念なことに、「K-NET」による公式データ [2] について地震波形の観測記録を「ダウンロード」して解凍しましたが、そのファイルの中身は大量の暗号で構成されているとしかおもえないもので、このデータを取り込んで調べることができません。
 そこで、同じときに起こった地震についての、気象庁の観測データを利用して調べることにしました。
 「防災科学技術研究所の強震観測網」と「気象庁のそれ」とは同じものではないらしく、観測地点が一致しないものがあります。しかたがないので、比較的近くの観測点のデータで代用して調べることにしたものがあります。



 209)から214)は地震波形解析ソフトのeqwaz.exe における整理番号です。

 K-NETのデータと気象庁のデータ

 次からの図では、向かって左に K-NET のサイトからコピペした画像を納めました。地震波形が描かれているグラフの横幅が何秒かを記しました。K-NET の波形図では、きょくたんに時間軸を圧縮しています。
 右には、その観測地点と対応する気象庁の観測地点のデータを探して、私が組み上げた地震波形解析ソフトのeqwaz.exe で表示したものを並べました。ただし、K-NET のグラフと比較するため、横方向だけを強制的に圧縮しています。ここまで時間軸を圧縮してしまえば、もともと小さな振幅のP波が見えなくなってしまうのは、あたりまえのことです。これらの解析図をもとの時間幅で描いたものは、下の図6から図13で表示しています。

図1 (1) 熊本県熊本市 と 209) 熊本西区春日

図2 (2) 益城市 と 214) 益城町宮園

図3 (3) 山鹿市 と 212) 玉名市築地

図4 (4) 人吉市 と 210) 人吉市西間下町

図5 (5) 鹿児島県大隅町 と 214) 鹿屋市新栄町

 K-NET の波形では、NS, EW, UD の波形ごとに最大振幅を求めて正規化しているようです。
 eqwaz.exe の波形では、それらのすべての最大振幅で正規化しています。
 このことにより、K-NET の UD(上下)の波動でP波とS波の振幅が似通ったものとなるように見えてきます。S波は横波ですが、上下方向ではエネルギーを失いやすくなり、遠方での振幅は減衰しがちです。

 気象庁のデータでeqwaz.exe

 気象庁のデータを eqwaz.exe で詳しく調べます。
 次の図6は209) 熊本西春日 についての、時間幅が TIME(1) で、サンプリングレート100Hzの1秒のデータが100ピクセルの幅となるように、棒グラフの方式で描いたものです。
 100Hzというのは振動数のことで、1秒間に100回振動するということです。
 振幅は AMP[2] としてあります。AMP[1] だと、最大振幅が縦の100ピクセルとなります。AMP[2] だと、その2倍です。
 このくらいの震央距離の地震波形でP波の初動を見つけるのは、かんたんです。最近の観測データはすべてデジタル値で記録されているので、振幅値(AMP)を大きくしてゆけば、ベースのノイズベルを上回る振幅の信号を見つけることができます。
 むつかしいのはS波の初動位置のほうですが、このデータでは、S波の一般的な特徴として知られている、P波に比べ低周波になることと、振幅が大きくなることを利用して判定することができました。
 P波もS波も、確かに存在しています。

図6 209) 熊本西春日 TIME(1) AMP[2] 1800-3336
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 次の図7は 214) 益城町宮園 の TIME(1) AMP[2] 1600-3136 という設定での地震波形です。NSとEWのS波がかなり低周波となっていますが、他の地域での地震波形をたくさん観察してゆくと、ちょうどこれらいで普通とも言えます。自然な地震波形のパターンです。
NSとEWのS波が低周波で振幅も大きいので、その前にあるP波が識別しやすくなっています。P波は確かに存在しています。
 上下動の振動を記録しているUD のP波の振幅が、かなり大きなものとなっています。これは、ちょっと異常とも思えるものです。このときの正規化の方法はALLであり、すべての最大値を使っています。遠方であって、EACH の正規化を行えば、UD のP波の振幅が大きく目立って見えることもありますが、こんなに近くで UDのP波部分の振幅が大きいというのは、「自然な断層のずれによる地震」と考えにくいものです。
 このUDの波形においては、S波が存在していないのかもしません。震央距離が5.2kmとなっており、このときの地震の深度が11kmとされていますので、まさに、深いところからの縦波だけがやってくるような状態なのかもしれません。このときの地震は、いったい、どのようなメカニズムで起こったのでしょうか。

図7 214) 益城町宮園 TIME(1) AMP[2] 1600-3136
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 次の図8は 212) 玉名市築地 の TIME(1) AMP[2] 1000-2536 というものですが、上の、自然な NS, EW 地震波形に比べて、すべてが高周波の振動です。これも異常なことだと考えられます。断層のずれによる地震では、もっと低周波の波になるものです。

図8 212) 玉名市築地 TIME(1) AMP[2] 1000-2536
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 次の図9は210) 人吉市西間下町TIME(1) AMP[2] 1500-3036 の地震波形です。これも全体的に高周波です。S波が始まるのは、中央からやや右のあたりようです。このケースはかなり判別しにくいものとなっています。

図9 210) 人吉市西間下町 TIME(1) AMP[2] 1500-3036
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 次の図10は、これまでのものと時間幅が違っています。211) 鹿屋市新栄町 TIME(8) AMP{2} 0-12288 という表示です。
 震源からかなり遠くになると、P波やS波が通過してきた地層の性質により、振幅の減衰の様子が複雑に変わることとなります。NS, EW, UDの最大振幅の値がずいぶんと小さくなっています。
 今回少し内容を訂正しながら編集をしています。
 以前のデータ表示では、この「鹿屋市新栄町」の震央距離を138kmとしていました。これは、グーグルの地図を使って、震源からの距離を物差しで測って、地図につけられてある距離の基準長で計算したものでした。ところが、他のデータを調べてゆくうちに、この方法では誤差が大きくなってしまうということが分かりました。原因はグーグルの地図における距離の基準長が不正確だったことです。このときの計算値も、「鹿屋市新栄町」が「鹿児島県大隅町(124km)」より北にあって、震央のある熊本市に近いのに、138kmとなるのはおかしいと気づくべきでした。地図で読み取る距離分の長さの比は、そんなに大きな誤差はないので、「鹿児島県大隅町(124km)」の値を信用して比例によって求めたところ、「鹿屋市新栄町(100km)」というのが、妥当な距離となりました。
 もうひとつ重要なテクニックとして、この地震における他のデータをもっと調べ、それらのP波とS波の速度グラフ(図14)を作って、震央距離100kmのとき、P波とS波が、どれくらいの時刻に到達するのかという予測をたてたことです。
 このような検討を重ねたところ、「HARMONIES ハーモニーズ(Ameblo版)」というサイトで、このデータについて判断されていたことが、半分当たっていたということが分かりました。
 ただし、P波は「無かった」のではなく、「見えなかった」のです。

図10 211) 鹿屋市新栄町 TIME(8) AMP{2} 0-12288
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 図14の予想で、このデータの場合、P波の到達時刻は、およそ26分50秒の時刻です。
 ところが、このデータでは、26分50秒から始まっており、しばらくは何も信号がないと見なされていました。しかし、この区間に、何らかの信号がやって来ていたことは、振幅値を大きくすることにより、分かっていました。ただ、これが何かということが理解できなかったので、このデータの解析を保留していたのです。
 次の図11は、100Hzのデータで[0]から[1536]のところを、AMP[L](50倍)にしたものです。
 ここに信号とみなせるものがあります。これがP波だったのです。
 残念ながら、26分50秒からのデータでは、正確なP波の初動位置が決められませんが、すくなくとも26分50秒より前なので、26分50秒としておきます。

図11 211) 鹿屋市新栄町 TIME(1) AMP{L} 0-1536
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 それではS波の到来位置はどこかというと、グラフの予測では63秒(27分03秒)のあたりです。
 図12のような設定で、そのあたりを調べたところ、ほんの少しP波が残って現れているあとに、S波としての、少し周波数が低くなっている波がありました。

図12 211) 鹿屋市新栄町 TIME(2) AMP{2} 0-3072
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 ここまでの解析結果を、はじめの、TIME[8] による波形に書き込んだものが図13です。
 これだけを見て「P波が無い」というのは、なかなか見事な判断です。
 振幅を拡大するという技法が使えないのでは、そう考えても無理はありません。
 もちろん、正しくは「P波が無い」のではなく、距離による減衰によって「P波が見えない」状態になっていたということです。
 ですから、このケースでの地震波形は、人工地震の証拠となるものではありません。

図13 図10 211) 鹿屋市新栄町 TIME(8) AMP{2} 0-12288
P波とS波初動位置を矢印で記入(画像をクリック → 拡大画面へ)

図14 この地震におけるP波とS波の速度グラフ

 考察

 K-NET や気象庁のサイトで表示される、地震波形のグラフでは、その地震の全体像を示すため、横軸の時間が、200秒とか300秒という、とても長いものとなっています。
 しかし、主な地震のP波初動あたりから、S波の「尻尾」のような部分までは、20秒ほどもあれば、おさめることができます。
 地震波形から情報を引き出そうとするとき、その目的に合わせて、時間軸を短くしたり長くしたりしたいものです。ところが、K-NET や気象庁のサイトでは、長い時間のものしか見せてくれていません。
 もっと細かな情報を得たい人は、提供している観測データを使って、各自で調べてくださいという、暗黙の了解があるのでしょう。
 問題となっていたデータのうち、震央距離が比較的短いケースでは、P波の区間が短いだけで、P波とS波の区別はかんたんについて、P波もS波も、確かにありました。
 震央距離が長くなると、P波やS波の性質が違ってゆき、それらの識別もむつかしくなりますが、P波とS波は、やはりありました。
 今回取り上げられていたデータの中で、もっとも遠いケースでは、P波がS波より強く減衰したため、S波に合わせた振幅値では見えなくなっていました。
 これを「P波が無い」と判断するのは、なかなかのパターン認識力です。
 しかし、詳しく調べることにより、このケースでは「P波が無い」のではなく、「P波が見えない」状態になっていたということでした。
 このため、このケースで「P波が見えない」としても、このことで、この地震が人工地震であるとは言えません。
 自然の世界で起こっているはずの地震のいくつかが、何らかの意味で人工地震であると判断できるためには、もっと慎重な態度で、どんな科学者が検証したとしても、ゆらがないような、確かな証拠となることを見出す必要があります。
 しかし、これは、そんなにかんたんなことではありません。
  (Written by KLOTUKI Kinohito, Sep 24 2018)

 参照資料

[1] 気象庁の地震波形サイト 強震波形 2016年4月14日の熊本地震
[1-1] 気象庁による強震波形(熊本県熊本地方の地震)
[1-2] 地方公共団体震度計の波形データ
[1-3] 気象庁による長周期地震動に関する観測情報(試行)
[2] 防災科学技術研究所 K-NETの地震波形サイト
[3] 「新・ほんとうがいちばん」
  地下深部掘削船「ちきゅう」関係者の「人工地震」発言箇所切抜き
[4] HARMONIES ハーモニーズ(Ameblo版)
  地震波形を見ればわかる!熊本地震=人工地震

 

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