地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS30 大阪府北部地震は「大きな音」とともに始まった

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 地震波形を調べ出して、どんどんと研究が進んでゆくうちに、解析ソフトも進化して、これまでどこにもなかったようなコンパス解析という機能も備え始めました。
 こうなると、解析した結果をまとめたページが、専門的な内容へと突き進んでゆき、使われる画像も地震波形と速度グラフばかりとなり、それらの意味についての説明文も、専門用語と記号と数字だらけになってゆきます。
 これでは、せっかく構成した「力作」も、ウェブの森のコケまじりの日陰に隠れてしまいます。
 そこで、もう少し「日当たりのよい」ところに生える雑草のような、平凡でもよいから、もう少し眺めやすいものを生み出そうと思いました。

 大阪府北部地震の「変」なところ

 2018年6月18日の朝7時58分におこった大阪府北部地震を私は、滋賀県甲賀市水口町で体験しました。このとき、たまたま徹夜していたのですが、眠れる感じではなかったものの、少しは休憩しようと、ベッドに横たわったところ、突然、はげしい揺れがはじまりました。
 9月の北海道胆振東部地震のあと、地震波形の研究を再開しようと決意し、気象庁のデータを取り込んで、自作のソフトで、とりあえず地震波形を描けるようにしました。
 北海道の地震のデータを見つけるのには時間がかかりましたが、大阪府北部の地震のデータはすぐに利用できました。そして、観測点として「甲賀市水口」のデータもあり、それも波形グラフにして観察することができました。
 さて、このような物語を語りだしたら、きりがありません。
 大阪北部地震の何が「変」で何が「異常」かということをはっきりさせるためには、「変ではない」あるいは「異常ではない」地震というものがどのようなものであるかを正しく知っておかなければなりません。そのための調査を、気象庁のデータにもとづいて、たくさん行いました。
 そして分かってきた、大阪府北部地震の「変」なところとして、「UDチャンネルの大きなひし形P波」があげられます。
 地震波形として観察してゆくと、「UDチャンネルの大きなひし形P波」は、大阪府北部地震のほかに、2016年の熊本地震の、とくに初めの1回のものに現れています。
 前回のEWS29では、これらの2つの加速度波形としての「UDチャンネルの大きなひし形P波」が、「変位波形」となったときの様子がまったく異なるということを示しました。
 加速度波形としての「UDチャンネルの大きなひし形P波」は、「変位波形」となったとき、大阪府北部地震では「上側に大きな変位(2cm)」となって現れますが、熊本(1)では変位波形としてほとんど現れません。
 これはいったい、どのようなことを意味しているのだろうか、と考えていたのですが、大阪府北部地震では、震源に近いところにおられた方が、次のような報告をしているということに気づきました。

 大阪府北部地震は「大きな音」とともに始まった

 まずは「大阪府北部地震 人工地震」とキーワードを入力して、そのあと「大阪北部地震 大きな音」とキーワードを変えて、今後の研究のヒントがないか、サーフィンしました。詳しい説明は割愛して、ここのテーマと関連するところを引用します(青い文字の部分)。太線文字になっているところは、黒月が変えました。

 [1] NEET THE WORLD!
 で、ニート太郎自身は、今回の大阪北部地震は人工地震だと思うのか。(中略)
 まぁそんなニート太郎の個人的な意見をここで発表しようと思う。(中略)
 個人的にニート太郎は、今回の大阪北部地震が、人工地震の可能性は結構ありかもしらんなとは思います。
 根拠ってほどではないけど、実際、俺は大阪に住んでて、今回の大阪北部地震を体感した被災者なわけだけど、あの揺れ方。
 はじめに爆弾が爆発したみたいにドンって音がして、そのあとすごい揺れて、じょじょにおさまったわけ。
 普通の地震とは違った。
 ただ、自然の地震でも、そういう地震もあるのかもしれないから、人工地震だって俺は断定はできないけどね。
 ま、体感した感じだと、まるでどっかで爆弾が破裂して、その波が届いたのかよ。って感じの地震だったよ。


 [2] 平成生まれももうアラサー
 20180625 大阪府北部地震から一週間が経ちました
 地震発生時の状況
 私の住んでいるところは震源地では無いものの、震源地に近い場所なので震度5強でした。
 地震発生時は息子と寝ていて、大きな音と共に物凄い揺れが来て飛び起きました。
 直下型地震なので緊急アラームも地震がきた後に鳴ったみたいです(大パニック&地震の音で鳴っていたのかよく覚えていない)


 [3] ヒロログ
 2018-06-20 大阪北部で発生した大地震のこと
 私の場合は、大阪市の鶴見区で地震に遭遇しました。震源地とされている高槻市から直線距離で約20kmくらい南に位置する場所です。
 妻と一緒に通勤途中で歩いていて、「なんか大きな音がするな」と思った瞬間に地震だということに気がつきました。


 [4] LINE NEWS
 大阪・高槻在住の織田信成、地震の衝撃明かす「膝から崩れて…」
 近畿地方で18日午前7時58分ごろに発生し、大阪府北部で震度6弱を記録した地震を受け、被害の大きかった大阪・高槻市在住のプロフィギュアスケーター織田信成が自身のTwitterを更新しました。(中略)
 (そのTwitter本文)織田信成 nobunari oda
 朝のこの時間の高槻北部、ズドーンて大きな音がして数十秒揺れて、膝から崩れて立てなくなって、1時間立ってもまだ足ガクガク心臓バクバク、家の中めちゃくちゃ、余震にビビりまくる。でも今は少し落ち着いて、なんとかみんな無事です。ご心配おかけしました。


 [5] kikky-mouse のブログ
 地震発生当日は、5時半起床のkikky
 リビングにて朝ごはんの支度など のんびり始めておりました
 朝ごはんを食べない相方さんは 既に車で出勤済みでした
 ドンッ  ドンッ 突然の大きな音(ガク!! ガガガガ!)とハッ
 普通には歩けない程の揺れが!ギザギザ


 [6] ひろし歯科本通クリニック ブログ
 地震から1週間… 2018/06/25 ブログ
 こんにちは、ひろし歯科本通クリニックです。(中略)
 私は大阪北部の県境に近い京都に住んでいますが、こちらもかなり揺れました。
 (体感的には阪神大震災よりも揺れたような気がしました…)
 出勤で家を出た瞬間の地震で「ドン」という大きな音がした後に、視界に入るものすべてがすごく揺れ始めて、立っていられなくて、すごく怖い思いをしました。


 [7] しんぶん赤旗
 ブロック塀が崩れた民家の家主の女性(74)は、「台所にいたらどーんという大きな音がしてから揺れがきたので驚いた。

 [8] 朝日学生新聞
 学校の代休で家にいました。「ドンという大きな音がした。ダンプカーが倒れたのかと思いました」

 [9] ブルーノ+スタッフ+ブログ= B.P.B
 いつもより30分早く娘を学校に送り出し、愛犬と共に自宅に戻って身支度を始めた瞬間に大きな音と地面から突き上げられるような振動と共に自宅が揺れ天井からパラパラと砂利のようなものが落ち、キッチンからガラスが割れる音や物が落ちる音が響きました。

 [10] Ret's
 私も子供達と一緒に学校まで登校している途中で『ドン!!!』という大きな音と共に大きな揺れを感じました。

 [11] 細越工務店
 さて弊社は、震源地の高槻に作業場と、事務所があり、私も従業員の皆様も住まいは高槻です。
 その日は朝早くから大工職人さんたちと荷積みをしている最中でした。
 いきなり大きな音とともに、激しく揺れ始めまして、倉庫の荷物が落下してくると思ったので「全員、道路に出ろ〜」っと大きく叫びました。何とか落下物で怪我をすることは無かったのですが、大きな音と共に大きな揺れを感じました。


 [12] 先見経済 SENKEN KEIZAI
 2018年6月18日(月)7時58分、私は清話会関西支局事務所にいた。
 ドンと大きな音がし、激しい揺れを感じると、書籍ラックが揺らぎ棚の本や書類がバタバタと床に散った。咄嗟に机の下に身を隠した。


 黒月樹人のコメント

 貴重な観測事実が、このように、数多く公開されていました。ありがとうございます。
 ふつうの自然な断層地震では、地震が起こったことが伝わってくるときのP波の振動は、のちに伝わるS波のものに比べ、かなり小さなものです。あっ、何か揺れ始めている、と感じたあとに、来たぁーと分かる、大きなS波が始まります。
 甲賀市水口の自作ベッドの上に横たわって、大阪府北部地震を感じたとき、P波とS波の違いが分からずにいました。甲賀市は震源のある高槻市から50km以上離れているので、P波は何秒間か続くはずです。あとから地震波形をしらべてみると、S波の振幅がかなり減衰していて、あまり大きな揺れとならなかったことによると分かりました。
 話を戻します。
 震源地の高槻市に近いところで、この地震を体験された方の報告によると、この大阪府北部地震は、ゆれ始める前に「大きな音」がしていたということは、確かなことのようです。
 このことから、地震波形として記録されている、「UDチャンネルの大きなひし形P波」で、かつ、「変位波形となったとき確かな変位がある」ものは、現象として「大きな音」と結びついている、と考えられます。
 P波は縦波です。音も縦波なので、本質的に変わりません。地震のP波が、これまで音として観測されてこなかったのは、P波の加速度波形の振幅が小さかったからでしょう。ところが、大阪府北部地震の「UDチャンネルひし形P波」部分の加速度振幅は、とても大きなものです。数字で述べても想像できないかもしれません。このときの変位は 2cm ほどあります。これはつまり、深さ 13km のところで何かがその上の厚み 13km の地面をたたいて、2cm 押し上げるようなことをしたと考えられます。高槻を中心とした、厚いシンバルか太鼓のようなものを、下からたたいて振動させたと考えてください。大きな音がするはずです。
 ちなみに、ピアノの鍵盤番号1の音の周波数は 27.5[Hz] です。大阪府北部地震の「高槻市桃園町」の「UDチャンネルひし形P波」のところの振幅を数えると、1秒間で上下に17回なので、17[Hz] となります。かなり低い音のようです。
 このような現象は、@「大きな音」から始まるということも、A地震波形として「UDチャンネルの大きなひし形P波」かつ「変位波形となったとき確かな変位がある」ということも、ほかに類例が見当たらない、「特異な」ものです。
 Aについて、ここ最近調べてきたわけですが、「UDチャンネルの大きなひし形P波」をもつ地震は、熊本(1)のほかにも、いくつか見つかります。しかし、「変位波形となったとき確かな変位がある」かどうかを調べてゆくと、大阪府北部地震の「高槻市桃園町」や「高槻消防本部」の「変位波形」に肩を並べるような解析例は見つかりません。
 これらのことから、「UDチャンネルの大きなひし形P波」かつ「変位波形となったとき確かな変位がある」と、「大きな音」の結びつきが理解できます。
 大阪府北部地震は、これまでに観測されたたの地震のどれとも同じメカニズムで発生したとは考えられないものです。これまでよく知られている「断層のずれによる地震」ではないといえそうです。
 だからと言って、ただちにこれが「人工地震」であると判断できるような、論理的な筋道は見いだせません。問題は、このような「大きな音」を生み出し、真上の地表面を2cm押し上げるだけの「爆発的なエネルギー」を、いったいどのようなメカニズムが可能にするかということです。たとえ爆発の一種としても、高槻市の市街の真下13kmの地点ですから、ボーリングで穴をあけて、小型の核爆弾などを入れるというのは考えられません。巨大な電子レンジなら、それができるというのでしょうか。これもまだ、よく分からないことです。

 大阪府北部地震の震源近くのUDチャンネルひし形P波の観察

 大阪府北部地震の震源近くの5つの観測点における地震波形の、UDチャンネルひし形P波を観察します。
 次の図1は、震源から近いベスト5の観測点のUDチャンネル加速度波形を並べたものです。
 @桃園とA消防本部は、震源のほとんど真上と言ってもよい位置のデータです。B枚方だと、震央距離で4.7kmとなり、少し離れてしまいます。
 C島本に比べD茨木が全体的に低周波になっているのは、淀川の下流になるので、地質が軟弱気味になっているためと考えられます。
 この地震の発震時に何が起ったかとの情報は、@桃園とA消防本部の、最初の0.3秒あたりの、上向きの加速度振幅にありそうです。
 つまり、0.3秒ほどの間に、3回の上向き加速度振動が生じた、と言うことになりそうです。A消防本部のデータでは、2つ目と3つ目の上向きのスパイク状加速が合わさって、ひとつの振動のようになっています。B枚方より遠いデータでは、これに対応する部分の振動は減衰しているようです。
 @桃園とA消防本部に戻って、このさいしょの0.3秒に、上向きの振動が生じているというところが、少し異質な特徴として観察されるわけです。

図1 大阪府北部地震の震源近くの加速度波形UDチャンネルひし形P波(SLOW[1/4]
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 先端から1秒間くらいの高周波ひし形部分が「大きな音」の由来のようです。
 @桃園とA消防本部のデータから、この振動は「ドン」ではなく、「ドッドォン」のように2つが並んでいます。
 もう少し震源から離れると、1秒間続く「ドォーン」と聞こえるかもしれません。

 次の図2は「大阪府北部地震の震源近くの変位波形UDチャンネルひし形P波」です。
 図1での時間軸はSLOW[1/4]となっていて、通常の100データ100ピクセルのSLOW[1/1]=TIME[1] に対して、100データ400ピクセルとしてあります。
 これに対して、図2では SLOW[1/2] なので、100データ200ピクセルです。あまりスローにしすぎると、さいしょのところにある上向き変位の特徴がつかみにくくなるので、この値としました。
 震源のほぼ真上である@桃園とA消防本部に対して、B枚方など、数km離れてしまうと、この上向き変位が目立たなくなってゆきます。
 仮に、地下の断層のようなものが上に動いたとしたら、もっと広い範囲で、この変位が現れると考えられますが、そうはなっていません。
 このことから、地下深くの震源あたりで、かなり狭い範囲でだけ、上向きの動きが生まれたものと考えられます。
 ほぼ1秒の、この時間で、NSチャンネルとEWチャンネルには何も動きがありませんから、やはり、このとき、何か爆発的な現象が起こって、その圧力のはけぐちを上に向けたと考えるべきではないでしょうか。
 それでは、地下13kmの深さで、いったい何が起ったのでしょうか。

図2 大阪府北部地震の震源近くの変位波形UDチャンネルひし形P波(SLOW[1/2]
(画像をクリック → 拡大画像へ)

  (Written by KLOTUKI Kinohito, Nov 29, 2018)

 参照資料

[1] NEET THE WORLD!
[2] 平成生まれももうアラサー
[3] ヒロログ
[4] LINE NEWS
[5] kikky-mouse のブログ
[6] ひろし歯科本通クリニック ブログ
[7] しんぶん赤旗
[8] 朝日学生新聞
[9] ブルーノ+スタッフ+ブログ= B.P.B
[10] Ret's
[11] 細越工務店
[12] 先見経済 SENKEN KEIZAI

 

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