地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS35 P波が無いから人工地震というのは誤り(5)KMM006 熊本

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 この「地震波形の研究」というシリーズの、いくつかのページで、私がこのような研究を再開しようと志した理由について語っていますが、それは、私たちの世界で起こっている地震の中に「人工地震」があるのかどうかを知りたいからです。
 すでに、この地球世界に「人工地震」というものがあるということは、よく分かっています。小さな規模の「人工地震」なら、ダイナマイトからスパークプラグまで、各種とりあつかってきました。
 自然な地震の規模と同じくらいの「人工地震」も、すでに実現されていると考えています。
 しかし問題は、現在起こっている、いろいろな地震のなかで、どれかが「人工地震」だとしても、それを識別することが、はたして可能なのかどうかということです。
 地下核実験の地震波形については、すでに識別の指標が出されています。P波とS波のスペクトルの比が指標とされています。
 爆発現象では、S波よりP波のほうが大きな振幅となって現れる、ということでしょう。しかし、これも程度の問題で、ダイナマイトで起こした人工地震では、自然な地震のようなパターンとして観測していたように思います。

 人工地震のしっぽ

 こっそり隠れているかもしれない「人工地震」という怪物の「しっぽ」の候補として、「謎の先行波」と「UDチャンネルのひし形P波」があやしいと見て、それを調べてきました。
 「謎の先行波」については、これを見出す方法に問題があったということが分かり、これまで調べて判断してきたことを、すべて白紙にもどしました。
 これについては、すべて切り捨てたというわけではなく、さらに技術を高めて、より精密な分析をして見出されるものがあるかどうかを調べているところです。
 早急な結論を求めすぎて、技術的な問題点を見極めることができずに失敗しましたから、何度も同じ失敗は繰り返せません。
 もうひとつの「しっぽ」の候補である「UDチャンネルのひし形P波」についても、さらにしんちょうな態度で調べてゆく必要があります。
 このように考えていた時点で、気象庁のサイト [1] で提供されていた地震データについての、おおまかな調査が行き詰まってしまいました。

 K-NETの地震波形データ

 「謎の先行波」も「UDチャンネルのひし形P波」も、あることはあるのですが、ほんのわずかなものだけになり、それらをどのように調べてゆけばよいか、進む道が見えなくなってきたのです。
 このあとの頼りはK-NET [2] のデータを調べることにしかないと考え、その道をすすむことにしました。
 入口は「データ利用の登録」をするということでした。無料です。正直に本名や住所を申し出て、データ利用の理由の申告をして、ユーザー名とパスワードを決めます。すると、登録されたことを告げるメールがきて、地震波形のデータを含んだ圧縮ファイルを、決めたユーザー名とパスワードでダウンロードして、それを解凍して現れたファイルの中に、各種の情報メモと、地震波形の振幅値となる数字が並んだものがありました。気象庁のデータでは、振幅値は実数で、加速度値 [gal] そのものでした。K-NET のデータでは、振幅値が正負の区別がある7桁の整数となっています。この問題は、K-NETのサイトにある「よくある質問」を調べて分かりました。情報メモの中にスケーリングファクターと呼ばれる、分母と分子に分かれた2つの整数による縮小比の数字があり、それを7桁の整数に掛けることで、加速度値 [gal] になるのだそうです。
 なんと不親切な、と思ったものの、このデータのシステムは、地震計が記録しているデータそのものなのだろうと思いつきました。未加工のデータを、そのままの形で使うことにより、これだけ多くの地震データを準備しておけるのでしょう。
 K-NETのデータを使い、P波が無いから人工地震というのは誤りの(5)つめとして、HARMONIES ハーモニーズ(Ameblo版) 地震波形を見ればわかる!熊本地震=人工地震 [3] に示されていた、熊本地震(1)の「KMM006」の観測波形について解析します。

 熊本地震(1)の「KMM006」のサンプル画像

 HARMONIES ハーモニーズ(Ameblo版) 地震波形を見ればわかる!熊本地震=人工地震 [3] に示されていた、熊本地震(1)の「KMM006」の観測波形というのは、次の図1です。
 赤い矢印で示して、大きな赤文字で「P波が無い!」と表してありますが、私には、この赤い矢印の先に「P波がある」ことが見えています。
 この図に関して、「HARMONIES ハーモニーズ(Ameblo版)」がコメントされていますが、これは、かなり恥ずかしい言動なので、ここで取り上げません。他の部分の内容の中には、貴重な情報も多くあり、興味深いページでしたが、この K-NET からのコピペの地震波形に関する解釈と判断だけで、すべての内容の評価が地に落ちてしまいまいます。残念なことです。

図1  HARMONIES ハーモニーズ(Ameblo版)での
K-NET熊本地震(1)のKMM006 熊本のサンプル画像

 熊本地震(1)の「KMM006 熊本」の地震波形(eqk.exe)

 図1の原画像で調べたところ、波形の0秒から300秒が描かれている横幅は、ピクセル値では410ピクセルでした。1秒のデータが描かれている幅は1.37ピクセルとなります。
 私の地震波形解析ソフトでは、デフォルトのTIME[1]において、1秒は100データあり、これを100ピクセルで表しています。TIME[2]だと1秒が50ピクセルとなります。100÷50=2という関係から、100÷1.37=73となりますから、図1はTIME[73]と求められます。すごい圧縮率です。
 次の図2は、K-NETから、熊本(1)の地震について、「KMM006 熊本」を探してダウンロードし、それを地震波形解析ソフトの eqk.exe に取り込んで描いたものです。
 図1はTIME[73]でしたが、一気にTIME[1]に変えます。図1では正規化法が [EACH] となっていますが、これではUDチャンネルの波形が強調されすぎてしまうので、全体で統一して振幅を比較できる [ALL] に戻しました。波形の表現方式は、古典的なライン [line] としました。
 P波の初動とS波の初動は矢印の位置として認められます。UDチャンネルのS波の確認は難しいので、していません。

図2 熊本地震(1)の「KMM006 熊本」の地震波形(eqk.exe)
[ALL], AMP[2], Time[1], [line]
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 図4は中央の基準軸からの棒グラフで波形を描いたものです。
 S波が低周波になっているとき、黒い牙のようなパターンになって、それなりに見やすくなります。
 この表現法は、プログラムを組み立ててゆくときに、アルゴリズムとして簡単だったので、とりあえず採用して使って、かなり見慣れたあとから、古典的なラインで描くことに気づいたのでした。ラインの波形だけを見てきた人には違和感があるかもしれませんが、棒グラフの表現法を使っていなければ、(発見もしくは発明に近い)コンパス解析を生み出すことはできなかったと思われます。

図3 熊本地震(1)の「KMM006 熊本」の地震波形(eqk.exe)
[ALL], AMP[2], Time[1], [black]
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 解説

 このように、K-NET のサンプル画像で「P波が無い」と誤って判断される地震波形でも、TIME[73] を TIME[1] にして観察すると、P波だけが存在する区間が見えてきます。
 時間軸を適度に伸ばすということに加え、正規化法に [ALL] と [EACH] の区別があるということを知っておくことが大切です。
 これらのことを理解しないで、すべての観測波形を同じように評価して判断しようとすると、誤った解釈をすることになります。
 実際に、間違っている解釈が数多く見られます。
 (Written by KLOTUKI Kinohito, Dec 5 2018)

図4 K-NET熊本地震(1)のKMM006 熊本のサンプル画像
(注釈は黒月樹人による)

 参照資料

[1] 気象庁の主な地震の強震観測データ
[2] 防災科学技術研究所 強震観測網 K-NET
[3] HARMONIES ハーモニーズ(Ameblo版) 地震波形を見ればわかる!熊本地震=人工地震

 

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