地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS37 K-NETサイトにある6チャンネルの地震波形データの見方
(2)OSKH02 此花

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 EWS36 K-NETサイトにある6チャンネルの地震波形データの見方(1)では、K-NETのサイトで「大阪」と名づけられている、3チャンネルのOSK005「大阪(柴島)」と、6チャンネルのOSKH05「大阪(長柄東)」(カッコ内の名前は黒月による識別名)について調べました。
 6チャンネルのデータとは、地下(G)のNS1, EW1, UD1と地表(S)のNS2, EW2, UD2のことです。これらの波形を描くときの正規化の基準値を外部入力できるようにソフトを改良し、地下(G)のUD1と地表(S)のUD2などを、直接見たまま比較できるようにしたところ、地下(G)の波形は、これまで(私が)思っていた以上に小さな振幅だということが分かりました。
 地下(G)の地震計での波形と、地表(S)の地震計での波形とで、P波やS波の現れ方に偏りがあるということも、最後は地震波が地下から地表に向かって進むことになるということとあわせて考えることで理解できることが分かりました。
 緯度経度が同じ、地下(G)の波形と地表(S)の波形を見比べることにより、さらに分かることがあります。

 OSKH02 此花

 大阪には、もうひとつ、注目しておくべき観測点があります。これは「此花」(OSKH02)と記されていました。緯度経度の値で調べたところ、図1の位置だと分かりました。明らかに埋め立て地です。 

図1 6チャンネルOSKH02「此花」観測点の位置
※国土地理院のサイト「距離と方位角の計算」[3] による図

 この6チャンネル(OSKH02)「此花」の地表の地震計の海抜は6.68mで、地下の地震計の海抜は-2001.32mだそうです。

 K-NETサイトにあるOSKH02「此花」のサンプル画像

 図2は6チャンネルOSKH02「此花」のK-NETサンプル画像です。6つ並んでいる上の3つが地下(G)の波形で、下の3つが地表(S)の波形です。
 地下(G)の波形と地表(S)の波形とでは、かなり違うということが、このサンプル画像でも分かるかもしれません。
 K-NETのサンプル画像では、6チャンネルの振幅は(私のソフトにおける分類で) [EACH] という正規化法を使っているので、振幅の大きさについて、このサンプル図で比較することは出来ません。原画像には、それぞれのチャンネルの最大振幅が数字で表示されていますから、その値を読んで、振幅の違いを換算できればよいわけですが、想像するだけということになってしまいます。

図2 6チャンネルOSKH02「此花」のK-NETサンプル画像

 数値で各チャンネルの最大振幅値が表されているとはいえ、人間の脳のコンピューターでは、正確な縮尺変換ができません。
 やはり、機械のコンピューターに助けてもらって、これらの振幅を、統一された基準のもとで表現してながめる必要がありそうです。

 6チャンネルOSKH02「此花」のeqk6.exe解析波形

 次の図3と図4では、いずれも [ALL] の最大振幅値を100 [gal] として表示しました。

図3  OSKH02「此花」の地下(G)のeqk6.exe解析波形
(画像をクリック → 拡大画像へ)

図4  OSKH02「此花」の地表(S)のeqk6.exe解析波形
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 これらが同じ緯度経度での観測波形なのかと思ってしまうかもしれません。距離として2kmほど上下に離れているということが、これほどの違いとなって現れてくるという意味で、この観測点を上回る解析例は見出せません。ほかのHつき観測点での、地表と地下の距離の差は、200mくらいがおおよそで、短いときは100mくらいのケースもあります。観測点OSKH02「此花」では、地下の海抜が-2001.32 [m] で、地表の海抜が6.68 [m] ですから、その差は2008.00 [m] です。センチメートルの数字がこのように細かくなっているのは、距離の差をメートル単位で合わせるためのようです。
 地表(S)と地下(G)の地震計の高度差が2008 [m] というのは、かなりきょくたんなケースのようです。

 同じチャンネルどうしで、地下(G)と地表(S)の地震波形を比較する

 OSKH02「此花」の地下(G)と地表(S)のデータについて、NSチャンネル、EWチャンネル、UDチャンネルどうしの波形を、同じ基準振幅値(100 [gal])のもとで表示したものが、次の図5〜図7です。 

図5  OSKH02「此花」のNSチャンネルの地下(G)と地表(S)の波形
(画像をクリック → 拡大画像へ)

図6  OSKH02「此花」のEWチャンネルの地下(G)と地表(S)の波形
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図7  OSKH02「此花」のUDチャンネルの地下(G)と地表(S)の波形
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 これらの解析図を見て、NSチャンネルとEWチャンネルで、S波の時間位置がこんなにも違ってくるのかと、驚いてしまいました。
 図中に記した数字は、データ開始時からの秒数です。データの開始時刻は7時58分24秒なので、この数字に24秒を足すと、現実の時刻となります。
 NSチャンネルとEWチャンネルでは、P波の初動時刻の差は16.6-15.7=0.9 [秒] で、S波の初動時刻の差は(EWチャンネルで) 21.8-19.3=2.5 [秒] です。
 地下(G)と地表(S)の距離の差は2008 [m] = 2.008 [km] です。
 これらの値から、地下(G)と地表(S)の区間を進む、P波の平均速度は 2.008÷0.9=2.23 [km/s] となり、S波の平均速度は 2.008÷2.5=0.80 [km/s] となります。
 P波の速度もかなり遅くなっていますが、S波の速度は 1 [km/s] を切っています。
 埋め立て地の土壌では、このような値になるということが分かりました。

 図7のOSKH02「此花」のUDチャンネルで、S波の到来位置を特定できず、クエスチョンマークをつけた記号を、NS, EWチャンネルでのS波の到来位置あたりに記しています。
 その少し前に、少し大きな振幅をもっているところがあります。はじめ、これがS波かと思ってしまいましたが、そうすると、速度値などで矛盾が生じてしまいます。

 次の図8は、上記の図4の OSKH02「此花」の地表(S) の振幅をもう少し大きくして、3つのチャンネルの波形パターンを見比べ、対応する部分をマークしたものです。
 NSチャンネルとEWチャンネルでのP波の振幅に対して、UDチャンネルでは、オレンジとグリーンの部分で大きな振幅となっていますが、ダークブルーの部分ではあまり大きくなっていません。
 このことから、オレンジとグリーンの部分でのP波は上下方向の振動が優越していたが、ダークブルーの部分のP波は少し違う向きに振動していたのではないかと推定されます。
 ともあれ、UDチャンネルのグリーンのところの大きな振幅は、S波ではなくP波と見なせます。

図8  OSKH02「此花」の地表(S)のeqk6.exe解析波形(対応マークつき)
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 図8ではP波の初動とS波の初動のところに青と赤の線を引きました。
 P波については3つのチャンネルで、ほぼそろっています。ただし、さらに拡大して調べると、UDチャンネルでのP波が少し先行しているようです。
 S波に関しては、NSチャンネルとEWチャンネルではっきりと現れている時刻あたりに、UDチャンネルでは、ここからがS波だと分かりそうな特徴が現れていません。
 地表(S)へとやってくる地震波の伝わる向きが、地下から地表への鉛直方向であり、S波は横波なので、水平面と平行な面の方向で振動すると考えると、この現象をうまく説明することができます。

 まとめ

 OSKH02「此花」の地下(G)と地表(S)の海抜差は2008 [m] と、大きな値です。
 この観測点がある場所は、もともと海だったところを埋め立てたところです。
 地下(G)から地表(S)の区間での、P波の平均速度は2.23 [km/s] で、S波の平均速度は 0.80 [km/s] でした。
 地下(G)での3つのチャンネルの波形パターンはよく似ています(図3)が、地表(S)ではUDチャンネルで、P波の振幅が区間ごとに大きくなることがあり、S波の影響が現れないようです(図4, 図8)。
 (Written by KLOTUKI Kinohito, Dec 8, 2018)

 参照資料

[1] 気象庁の主な地震の強震観測データ
[2] 防災科学技術研究所 強震観測網 K-NET
[3] 国土地理院のサイト「距離と方位角の計算」

 

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