地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS38 P波とS波の振幅比を調べるための解析(1)

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 地震の波の性質を調べる方法として、フーリエスペクトル解析という方法があります。
 気象庁のサイト [1] やK-NETのサイト [2] を覗いてみると、「強震記録波形」だけでなく、「フーリエスペクトル」や「相対速度応答スペクトル」のグラフも示されています。
 ところで、地下核実験などによる人工地震の波形と、自然な地震の波形とでは、P波の振幅と、S波の振幅の比が異なるという解析がなされているそうです。
 このことをヒントとして、P波の振幅と、S波の振幅の比を調べてみようと考えたのですが、フーリエスペクトルでは「時系列」の情報を無視して解析しているので、うまくゆかないようです。
 そこで、もっと直接的に、観測された地震波形の記録から、P波やS波の振幅を調べる手順を組み立てようと考えました。

 (1) 地震波形を折れ線で表示して、ピークの位置の情報を読み取る

 まず試みたことは「地震波形を折れ線で表示して、ピークの位置の情報を読み取る」ということです。
 次の図1は、「えびの北地震(K-NET 2018-12-11 01時05分)」[3] の観測点「宮之城」(地表)の3チャンネル地震波形です。いつもの棒グラフ表示ではなく、折れ線で表示しています。「えびの北地震」という名称は、私が仮につけたものです。マグニチュード3.2という小さな規模の地震なので、正式な名称はつかないと思われます。九州の鹿児島県と宮崎県と熊本県の境界あたりの、地下10kmで起こった地震とされています。
 これまで、大阪府北部地震や北海道胆振東部地震など、「異常な大きさ」だけでなく、なんとなく「異常な特徴」をもつとされるものについて調べてきましたが、それらの「異常さ」を評価するためには、「平凡な」地震とはどういうものかを知っておく必要があります。
 この解析の少し前に、「奈良の地震(K-NET 2018-10-27 20時51分)」や「愛知の地震(K-NET 2018-10-07 10時14分)」などについて調べてみたのですが、震源の深さが40〜60kmぐらいで、大阪の地震の13kmとはかなり異なります。そこで、震源の深さが浅く、マグニチューの小さな、あまり目立たない地震を探して、この「えびの北地震」を知ったわけです。

図1 えびの北地震の「宮之城」(地表)の3チャンネル地震波形
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 解析の手順を説明するため、また、解析の効果をチェックするためにも、これらの一つをシングルチャンネル表示で表すことにしました。
 次の図2は、図1の3つのチャンネルの中から、EW(東西)チャンネルを取り出したものです。

図2 えびの北地震の「宮之城」(地表)のEWチャンネル地震波形(シングル表示)
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 詳しいアルゴリズムの説明は省略しますが、このようなライン表示の地震波形を眺め、ピークの時間座標と振幅の値とを判定して、データとして保存するようにしました。
 最大振幅の値を100として、中央の基準線からの閾値を、5〜1パーセントで設定できるようにしました。この基準線をまたがないで、正や負の領域で細かく振動しているときは、それらの中での最大振幅のところだけをピークとします。
 おおよそ、このような考え方によるアルゴリズムで、読み取ったピーク位置を、小さな〇で表して確認できるようにしました。次の図3です。

図3 えびの北地震の「宮之城」(地表)のEWチャンネル地震波形のピーク位置解析
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 (2) P波とS波の主要な範囲を指定して、P波とS波の平均振幅値を求める

 地震波形でピークとなるところの、横軸位置(時間)を先頭からのデータ数として保存し、そのときのピークの振幅値を保存してあります。
 次にすることは、P波として数え上げる範囲と、S波の範囲を指定することです。ここでは、表示画像の中をマウスでクリックして指定することにしました。ここのところの操作が、かなり恣意的なので、この範囲の取り方次第で、解析結果は変わります。
 EチャンネルとNSチャンネルで、これらの範囲を決めたら、その位置のままで、UDチャンネルも解析します。
 このときのデータは、この観測点の「地表」に置かれた地震計によるものですが、「地下」の地震計のデータに変えたときは、あらためて、EWチャンネルやNSチャンネルでP波とS波の範囲を決めます。

図4 EWチャンネルのP波とS波の平均振幅
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図5  NSチャンネルのP波とS波の平均振幅
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図6  UDチャンネルのP波とS波の平均振幅
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 このようにして求めた、P波の平均振幅値とS波の平均振幅値から、これらの値による比を求めます。
 ここから先の手順を説明しようとすると、かなり長くなってしまいますので、このページでの説明は、ここまでとします。
 (Written by KLOTUKI Kinohito, Dec 14, 2018)

 参照資料

[1] 気象庁の主な地震の強震観測データ
[2] 防災科学技術研究所 強震観測網 K-NET
[3] えびの北地震(仮称)(K-NET 2018-12-11 01時05分)

図A えびの北地震(仮称) K-NET

 

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