地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS45 2019年1月26日の熊本地震「山鹿」は爆発型地震波形

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 はじめに

 2019年1月3日に熊本の和水町で震度6弱を記録した地震がありました。
 この地震では、大きく揺れた領域が、ほぼこの和水町に限定されていました。
 震央から8kmほど東に離れた観測点「山鹿」で記録された地震波形が、断層のずれによるものとは、まったく異なるパターンとなっていました。
 EWS44「2019年1月3日の熊本地震の異常性(2)P波とS波の振幅比」において、このような「異常性」について、科学的な手順を踏んで、詳しく論じましたが、論理的には正しくても、そのプロセスをたどるのがむつかしいらしく、ほとんど注目されませんでした。
 さて、同じ月の26日、まったく同じ震央位置で、震源の深さも同じ10kmと、ほぼ同じ震源での地震が起こりました。今回も激しく揺れたのは和水町あたりに限定されています。震度は5弱です。
 防災科学研究所(NIED)の強震観測網(K-NET.KiK-net)[1] に、そのデータが取り上げられたのは28日の朝でした。
 多くの観測点のサンプル波形をチェックしながら、「玉名」「山鹿」「柳川」「矢部」「八女」「宇土」「久留米」「甘木」「大津」「大牟田」の10観測点についてデータをダウンロードし、地震波形を解析できるようにしました。

 2019年1月3日熊本地震の「山鹿」の地震波形

 2019年1月3日熊本地震の「山鹿」の地震波形を図1として示します。
 P波の位置は明らかです。S波の位置をNSチャンネルとEWチャンネルで入れましたが、S波の特徴である(1)大きな振幅、(2)低周波数のうち、かすかに、この地点から(2)低周波数となっています。
 この地震波形は折れ線表示ではなく、棒グラフ表示なので、(2)低周波数だと、黒く太いスパイクとなり、分かりやすくなります。
 このときの地震波形についても、P波とS波の振幅比を調べると、ほとんど変わらないということが、他の地震波形には見られない異常性なのでした。
 UDチャンネルは地表での上下運動を記録します。一般に地下深くからあがってくる地震波動のP波は、このUDチャンネルを揺らしやすいのですが、仮にS波があったとき、S波はその進行軸と垂直な方向で揺れることになりますから、UDチャンネルではとらえられないことになります。
 このため、多くの地震波形で見られるように、UDチャンネルは、さいしょが大きな振幅で、それからしだいに小さな振幅となってゆきます。この波形を見て「P波がない」と判断するのは初歩的な誤りで、どちらかというと「S波がない」と判断すべきなのです。

図1 2019年1月3日熊本地震の「山鹿」の地震波形
code=kmm2019-ymg240-A2T1
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 2019年1月26日熊本地震の「山鹿」の地震波形

 2019年1月26日熊本地震の「山鹿」の地震波形を図2として示します。
 P波の初動位置は明らかです。しかし、S波の初動位置は、容易には特定できません。
 S波の特徴である(1)大きな振幅、(2)低周波数、の2要素にもとづいて判定することができないのです。
 もうひとつの(3)P波の振動方向に対して(原則として)90度異なる振動方向をもつ、という要素について調べようとしたのですが、この地震波形では調べることができませんでした。

図2 2019年1月26日熊本地震の「山鹿」の地震波形
code=kmm126-ymg247-A2T1
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 仮にS波が発生しているとすれば、震源からの距離も同じなので、1月3日のデータから推定することができて、P波の初動位置からおよそ2秒後あたりからとなります。
 このように考えてP波とS波の振幅比を調べるとしたら、ほぼ同じくらいとなり、完全に異常な値と判定できます。
 図2に示した2019年1月26日熊本地震の「山鹿」の地震波形は、次の特徴をもつということから 爆発型地震波形だと考えられます。

 (1) NSチャンネルやEWチャンネルにおいて、大きな振幅のP波から始まっている。
 (2) S波の振幅に対してP波の振幅が、相対的に大きい。
 (3) UDチャンネルだけではなく、NSチャンネルやEWチャンネルにおいても、高周波のP波が卓越しており、低周波のS波が観測されない。

 考察

 観測点「山鹿」以外の地震波形では、多様なパターンとなっています。
 これは、このときの地震を起こした、何らかの爆発的な現象が局所的なものであったためと理解できるかもしれません。
 26日の地震波形では、「八女」「宇土」「久留米」などでも、部分的に爆発型地震波形の特徴が現れています。
 これらについては、次回のEWS46で示そうと思います。
  (Written by KLOTUKI Kinohito, Jan 28, 2019)

 参照資料

[1] 防災科学研究所(NIED)の強震観測網(K-NET.KiK-net)

 

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