地震波形の研究 Earthquake Wave Study
EWS7 平成30年北海道胆振東部地震の不思議な先行波

黒月解析研究所 黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 地震波形の研究の兆し

 私が20年ほどの空白期間(その間は、宇宙の画像やUFO画像を調べていました)を経て、再び地震波形の研究を始めようと思ったのは、平成30年9月6日の午前3時8分に起こった「平成30年北海道胆振東部地震」について、ネットをサーフィンしているうちに、東京大学地震研究所の「研究速報」[3] を見ることとなり、この中で、この地震には、不思議な先行波があるとコメントされていたものの、これについて、ほとんど何もコメントされていなかった(先行して、小さな地震が起こっていたのかもしれない…とか記してある)からです。
 それでは、自分で地震波形をとりこんで調べてみるしかない、と考えたわけです。私の(自称)科学者の血が騒いだわけです。
 気象庁のサイトに地震波形のデータがありましたが、今年の6月18日の7時58分におこった「大阪府北部の地震」まででした [1]。
 北海道の地震のデータはいつ公開されるのだろうと、心待ちにしていましたが、やがて、そのデータが、すでに公開されていることを知りました [2]。ただし、整理されていなくて、震央距離は分かりません[4]。

 北海道胆振東部地震の「先行波」は「小さな地震」ではない

 「北海道胆振東部地震の、不思議な先行波」をとらえている、「名寄市大通(震央距離191.9km)」の地震波形を、次に示します。
 図1はTIME[8] というモードです。横の時間幅を1/8に圧縮して表示するものです。これだけを示して、P波の初動の前に「P?」などと記号だけを添えて、それで終わりなのですから、あきれてしまいました。
 図2から図4までは、時間幅を倍にしてゆきました。データの開始位置は [0] としてありますから、データ量が半分ずつになります。前のところだけを、順に拡大したことになります。
 ここまでの振幅は AMP[2] となっています。

図1 名寄市大通(震央距離191.9km)の TIME[8], AMP[2]
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図2 名寄市大通(震央距離191.9km)の TIME[4], AMP[2]
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図3 名寄市大通(震央距離191.9km)の TIME[2], AMP[2]
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図4 名寄市大通(震央距離191.9km)の TIME[1], AMP[2]
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 この先行波を観察するため、振幅をAMP[X](10倍)にしました。
 一般に、自然な地震波形では、NS波形とEW波形は、水平面を十字に区切っただけですので、よく似たものになります。これに対して、UN(上下)の動きは、異なるのが普通です。
 ところが、このときの先行波は、NS, EW, UD で、とてもよく似たものとなっています。
 さらに、この先行波に隠されてしまっていますが、ちょうどここからP波が始まっています。そのパターンを見ると、先行波は、P波より、高い周波数の波です。
 いったい、どのようなメカニズムで、このような高周波で3成分そろった波ができるのか、よく分かりません。

図5 名寄市大通(震央距離191.9km)の TIME[1], AMP[X](10倍)
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 次の図6から図8は、NS, EW, UD の波形を一つずつ取り出して、ウェーブレット解析で、異なる周波数成分を取り出して並べたものです。
 青色で表示したW8の成分波が、(赤色のW2として取り出せている)この先行波と、UDのところで、よく連動しています。つまり、水平面より鉛直の方向で、強く連動しているということが分かります。

図6 名寄市大通(震央距離191.9km)のNSウェーブレット解析
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図7 名寄市大通(震央距離191.9km)のEWウェーブレット解析
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図8 名寄市大通(震央距離191.9km)のUDウェーブレット解析
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 次の図9はW2ウェーブレット解析です。原波形はAMP[1]ですが、ウェーブレット波形は拡大できます。この先行波の、大きな振幅部分のパターンが、微妙に違います。UDに比べて、NSやEWでは、少し間のびしているように見えます。その左の、細い部分においても、UDでは、構造的なパターンが確認できます。

図9 名寄市大通(震央距離191.9km)のW2ウェーブレット解析
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 次の図10はW8ウェーブレット解析です。この先行波に隠されていたP波が取り出せています。やはり、UD成分が、もっとも強く連動しているようです。

図10 名寄市大通(震央距離191.9km)のW8ウェーブレット解析(画像をクリック → 拡大画像へ)

 考察

 このような不思議な現象について、どのように解釈することができるのか、まだよく分かりません。
 まず、行うべきことは、他の観測地点における地震波形では、どのようなものが観測されているのかということを調べるべきです。観測データのすべてにあたったわけではありませんが、このような先行波は、他にも観測されています。北海道の白地図を自分で描いて、先行波が見つかる地点を色塗りしましたが、かなりの範囲に広がっています。
 今回の地震においては、ちょっと不思議なことが、ほかにもいろいろと見つかっています。
 まだ、確かなデータがそろっていないので、今回の報告は、ここまでとします。
 もっといろいろな調査を重ねてゆく必要があります。
 (Written by KLOTUKI Kinohito, Sep 30, 2018)

 参照資料

[1] 気象庁の「主な地震の強震観測データ」
[2] 気象庁にある北海道胆振東部地震の観測データ
長周期地震動に関する観測情報(試行)
北海道胆振東部地震
「各観測点の加速度ファイル」 ここをクリックして acc.tar.gz を保存して解凍する
[3] 平成30年北海道胆振東部地震【研究速報】 東京大学地震研究所
[4] 測量計算(距離と方位角の計算) - 国土地理院
 ◎十進法度単位 にして、観測地点の緯度と経度を入力します。
 基準となる、この地震の震源の位置は、米国地質調査所発表の、北緯42度40分15.6秒 東経141度55分58.8秒のほうを使いました。十進法度単位にすると、42.6725 と 141.9298 です。気象庁のデータで観測点の緯度と経度は、この形式になっています。

 

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