RaN114 なんでもかんでも「道しるべ記憶法」
RaN114 Guidepost Memory Method for Everything
黒月樹人(Kinohito KULOTSUKI

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 国内旅行業務取扱管理者試験[1]は、T@「旅行業法/命令」、TA「旅行業約款/運送約款/宿泊約款」、TB「運賃・料金/国内地理」の3セットで行われる。ただし、時間は、まとめて2時間なので、どれから取り組んでもよい。単に問題のまとめ方と、それに応じて、解答欄が区別されるだけである。

 私は、この試験を受けようと考えたとき、T@とTAはなんとかなるだろうが、TBについては、いろいろと手を打たなければならないと予想した。TBについての対策ノートを、このホームページで公開してゆくことで、国内地理については何も知らない状態だったところから、テレビで放映されている様々な国内地理問題について、テレビ受信機の前で、回答者よりも早く正解できるようになった。100%正解しようというのは、出題範囲が無限に広がっているとも考えられるので無理なことだが、おおよそ、この旅行試験に出題されるレベルにおいては、80点以上はとれるようになった。合格点は60点なので、これくらいで、まあまあ大丈夫だろう。

 私にとっての問題はT@だった。10問の小テストで4点だったところから本格的な学習をスタートした。旅行業界のホームページで提供されている、試験の過去問題PDFファイル[2][3]を取りこんで印刷し、それを練習問題としてやっていたが、かろうじて70点台がとれるくらいの力しかつかなかった。これは、TBやTAのように、問題となることがらのイメージが具体的なものとして描けなかったからだと考えられる。実際に、旅行業界で働いていれば、問われている法令に対応するドラマを体験することができる。私が教師だったときも、大学で教わっていたころ何も分からず苦労して試験を受けていた、同和問題とか労働基準法の問題などが、こんなことだったのかと分かり出した。火薬の試験のときも、受かってから、何年間の現場作業で、「火工所とはこれのことか」と現物を見ることができて納得した。旅行業務についている人が免除されるのは、もちろん、このT@であろう。

 しかし、私には旅行業務の経験がない。T@については、こまでの他の試験と同じように、なんとかして、無理やり覚えるしかない。試験までの日数がかぎられていたので、TBと同じようにやっている時間はなかった。「奥の手」を使うしかない。

 この「奥の手」というのは、何度も使えるものではないので、ふだんは使わないようにしている。記憶術の本を書店で見つけて、それを買って帰り、学習したのは、私が高校二年生の春のことだった。一学期の中間テストで効果を体感したあと、私は完璧な成績を上げようとは思わずに、中の上くらいのポジションの点が取れればよいとして、スポーツのトレーニングに打ち込んでいた。とりあえず学習面で努力していたのは数学ぐらいのものだった。こちらも、理論を学んで、実際の問題を解くということをやっていたので、数学トレーニングのようなものだった。このような状態だったので、高校生のときは、この「奥の手」を使わなかった。

大学入試の直前になって(すでに高校は卒業して浪人状態であった)、選択した世界史が(予備校での模擬テストで)30点ぐらいだったので、これをなんとかする必要があった。試験日まで1ヶ月あったので、そこから、他の学習はぴたりとやめて、世界史の項目を記憶することに専念した。ここで私は「奥の手」を使った。大学入試では、世界史で70点以上取れたとおもう。数学・理科・英語・国語だけで合格ラインを上回っていたので、世界史の得点は、安全圏への逃げ切りに役立った。

 この「奥の手」についてのネーミングがあったかどうか忘れてしまったので、ここであらためて考え、「道しるべ記憶法」と呼ぶことにする。記憶術がテレビなどで公開実演されるとき、よくあるケースは、100ほどの単語を出題してもらって、その番号ごとの単語を、目隠しをした記憶者が答えるというもの。これは、100までの数字のひとつひとつに、あるイメージを用意しておき、それらに、出題された単語にまつわるイメージを、記憶術のノウハウでむすびつけてゆくというもの。数字とイメージの対応リストをつくっておけば、理論的には、どのような数にも対応できるはず。しかし、人間の記憶力は、コンピュータのメモリーほどには、理論が通用しないようだ。

 「道しるべ記憶法」とは、このようなリストを、実際の「道」に並んでいる、さまざまなシンボル(道しるべ, guidepost, signpost)として利用するというものである。人間は、抽象的な世界のことより、実際に現実として目にして体験している世界のことについては、より強く記憶することができる。「よく整理された記憶のためのリスト」をどれだけ多くもつかということが、記憶術をつかった学習での、重要なポイントである。

 具体的な例を出して説明しよう。国内旅行業務取扱管理者試験の「旅行業法/命令」に、「広告」という章がある。これについてのテキスト[1]に、次のようなリストがある。

募集型企画旅行の広告の表示項目
@企画者の名称(氏名)・住所・登録番号
A旅行の目的地および日程に関する事項
B旅行者が提供を受けることができる運送宿泊または
 食事のサービス
内容に関する事項
C旅行者が旅行業者に支払うべき対価(旅行代金)に関する事項
D旅行管理業務を行う者(添乗員)の同行の有無
E企画旅行の参加者が
 あらかじめ企画者が定める人員数を下回った場合に

 当該企画旅行を実施しないこととするときは、
 その旨および最小催行人数

F取引条件の説明を行う旨
 (取引条件の説明事項をすべて表示して広告する場合は除く)

 この「広告」の章には、ほかにも、「募集型企画旅行の広告の表示方法(2項目)」と「誇大広告の禁止事項(8項目)」というリストがある。2項目のリストくらいなら、直接読んで、模擬問題をこなしてゆけば、あれとあれだったなと思いだすことができるが、8項目もあると、何かが欠けているとか、何かが紛れ込んでいるとしても、はっきりとは分からないという状態になる。実際の問題では、このような問われ方をしている。よって、上記の7項目のリストと、「誇大広告の禁止事項(8項目)」は、同じ「広告」についてのことでもあるし、合計して、これらの15項目については、しっかり記憶しておく必要がある。

 「道しるべ記憶法」によって、上記「募集型企画旅行の広告の表示項目」の7項目を記憶することにしよう。ここから用いる「記憶のためのリスト」は私個人のものである。他の人の記憶リストとしては使えないだろう。しかし、他の人は、その人にとって使いやすい、別のリストを用意できるはずなので、このまま説明文を読んでいってほしい。

 私が用いた「道しるべ」は、図書館から始まる。図書館の駐車場の出口に「@大きな看板」がある。少しゆくと、「A芝生広場」がある。さらに進むと、「B交差点」があって、そこで直角に曲がる。坂を下ってゆく途中に、「C商店を集めたモール」がある。やがて、バイパスと交差するが、私は自転車を乗っているので、スロープのついている「D歩道橋」を登る。さらに坂を下ってゆくと、コンビニの手前のところに、小学生が車の道路を横断するポイントがあって、毎朝、それを指導する「Eボランティアの人」がいる。あいさつをしてゆくのであるが、小学生たちが夏休みのときは姿が見えなかった。さらに行くと「Fタコ焼き屋とタイ焼き屋」がある。以上の7つの「道しるべ」を、上記「募集型企画旅行の広告の表示項目」の7項目の記憶のために使う。

道しるべ

むすびつけかた

記憶したい単語

@大きな看板

→看板に書いておくものといったら→

名称・住所・登録番号

A芝生広場

→広場に目と日のシンボルマークを描く→

目的地および日程

B交差点

→トラック(運送)と
キャンピングカー(宿泊)と
デリバリーカー(食事)が三重衝突→

運送宿泊または食事

C商店モール

→¥(レジがいっぱい)→

対価(旅行代金)

D歩道橋

→案内の旗をかかげた添乗員が
歩道橋の階段を登っている
(飛行機のタラップのつもり)→

添乗員の同行の有無

Eボランティア

→夏休みのときは、小学生0人なので、
やらない→

最小催行人数

Fタコ焼き屋と
 タイ焼き屋

→「タコ焼き一皿350円ですぅ、
いかがですかぁ」と
取引条件を連呼して説明→

→タイ焼きのほうは、価格のすべて
表示されていて、何も言わない→

取引条件の説明
すべて表示して広告する場合は除く

 実際に、このような表を作ったわけではない。もちろん、作ってもよいが、私は、「道しるべ」の単語を、テキスト[1]のリストの横にある余白にメモして、「むすびつけかた」を空(そら)でイメージしただけである。何度か、これらの対応を思い出すトレーニングをして、すでに覚えている、忘れっこない「道しるべ」から、「記憶したい単語」へとつながるようにする。「むすびつけかた」がよくなくて、うまくつながらないのであれば、もっとよいものに取り換える。しかし、できるだけ混乱を呼ばないため、後からの変更は、極力やらないほうがよい。

 さて、テキストの「広告」の章には、これと紛らわしい、次のような項目がある。

誇大広告の禁止事項
@旅行に関するサービス品質その他の内容に関する事項
A旅行地における旅行者の安全の確保に関する事項
B感染症の発生の状況その他の旅行地における衛生に関する事項
C観光地の景観環境その他の状況に関する事項
D旅行者が旅行業者に支払うべき対価に関する事項
E旅行中の旅行者の負担に関する事項
F旅行者に関する損害の補償に関する事項
G旅行業者等の業務の範囲資力または信用に関する事項

 他の章にも、このような記憶すべきリストがたくさんある。それらについて、他の「道」を選び、そこに並んでいる「道しるべ」を手掛かりとして、記憶してゆく。

人生の体験をいろいろ重ねてゆくと、生まれた家から学校まで、駅まで、郵便局まで、あるいは、仕事のために移り住んだ都市での通勤経路、休みの日に出掛けたときに立ち寄ったポイントなどなど、思いだして整理すれば、自分が決して忘れない「道しるべ」のリストは、いくらでも作ることができる。

 この「道しるべ記憶法」は「なんでもかんでもに適用できる。そのためのリストは、日常生活で注意して観察していれば、驚くほど多くのものをストックしておける。問題は、すでに使った「道しるべ」を、他の記憶のために使うと混乱すること。

旅行の試験が終わった後も、私は、上記の「道しるべ」があるところを自転車で通るたびに、「添乗員」とか「最小催行人数」という言葉を思い出して、何度も何度も「記憶を強化」してしまう。こんなこと、もう忘れてしまってもよいのになあ、とつぶやきながら。

 (2010.09.18 Written by Kinohito KULOTSUKI [@] KULOTSUKI ANALYSIS INSTITUTION)

参照資料
[1] 「国内旅行業務取扱管理者試験 テキスト&問題集」児山寛子著 ナツメ社刊2010(第4版)
[2] 全国旅行業協会(ANTA  http://www.anta.or.jp/
[3] 国内旅行業務取扱管理者試験の問題 http://www.anta.or.jp/exam/index.html

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