元素名と元素記号を覚えよう(3)

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

RaN64 元素名と元素記号を覚えよう(3)

 このページでは、元素番号61のプロメチウム(Pm)から同90のトリウム(Th)までを取り扱います。

 このあたりの元素で、私が名前を知っているのは、「タンタル」「タングステン」「白金」「金」「水銀」「鉛」「ラドン」「ラジウム」だけでした。このページを読みに来られた多くの人も、ほぼそれくらいだと思われます。ただし、「タンタル」のことは知らないことでしょう。私も、知っているのは「タンタル」という名前だけで、どのような金属で、何に使われているのかなど、詳しいことは何も知りません。この「タンタル」という元素名は、スタニスワフ・レムの短編小説の中に使われていたのです。あまり有名な作品ではないのですが、「ロボット物語」というシリーズの中の「治水帝の御意見番」というものです。私は、30代の中ごろに、この作品を原作として、絵本のようなものを作ろうとしました。図1左は、その一ページです。


[1] http://www.treeman9621.com/treeman9621_picture_book_list.html
[2 ] http://www.treeman9621.com/ROBOT_STORY_PAGE_05.html   

 原子番号と元素記号の覚え方

 

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元素名

英語名

「むりやり理由」

元素記号

61無一文

プロメチウム

Promethium

無一文なので、プロにひっかかって仕事をもらう

Pm

62ムツゴロウ

サマリウム

Samarium

ムツゴロウを取った夏(サマー)の海(マリン

Sm

63無味乾燥

ユウロピウム

Europium

無味乾燥のヨーロッパ料理&気候

Eu

64虫めがね

ガドリニウム

Gadolinium

虫めがねでアブラムシを探すーデニング

Gd

65無言

テルビウム

Terbium

無言のテレビ(テルビ

Tb

 

 プロメチウムの発見物語は複雑なので割愛。名前の由来は、古代ギリシャ神話での火の神プロメチウスから。プロメチウムは安定同位体をもっておらず、すべての核種が放射性。そのため、一般に使用できる化合物はない。

 サマリウムはサマルスキー石から発見されたことから名づけられた。金属サマリウムは鉄と銀との中間の銀白色を示す。永久磁石として、サマリウム系磁石(SmCo5, Sm2Co17)がある。ただし、ネオジム磁石が現れると、強さでは、これに負けた。ただし、ネオジム磁石(Nd2Fe14B)は鉄を主成分としており錆びやすいことと、高温では磁石の性質が低下するので、サマリウム系磁石も使われている。

 ユウロピウム1896年フランスのドマルセによって発見された。そして、ヨーロッパにちなんでユウロピウムと名づけられた。1964年から、酸化ユウロピウム(Eu2O3)がカラーテレビの蛍光体に用いられる。日本で「キドカラー」と名づけられたテレビのブラウン管で利用されたそうだ。

 ガトリニウムの発見物語も複雑なので割愛。この名前は、最初に希土類元素のイットリウム(Y)を発見したガドリンの功績をたたえて名づけられた。この元素は光ファイバーや光磁気記録用ディスクなどに利用されているようだ。

 テルビウムは、スウェーデンの町イッテルビーからとれたガドリン石の研究から発見された。イッテルビーの町に関して発見された元素は、元素番号68のエルビウム(Er)、同70のイッテルビウム(Yb)に続いて3つ目らしい。テルビウムは、イッテルビーの後半の部分を受け継いでいることになる。テルビウはX線フィルムの感度をあげる増感剤として使われる。光磁気ディスクには、テルビウム・鉄・コバルト合金などが使われている。(知らなかったなあ。)

(これらの知識は、主に「元素111の新知識」桜井 弘_編、講談社ブルーバックス[3]による。一部、私の経験からの知識も含んでいる。以下同じ。)

 

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元素名

英語名

「むりやり理由」

元素記号

66ムームー

ジスプロシウム

Dysprosium

ムームー、ジスイズ、プロサイズ

Dy

67胸元

ホルミウム

Holmium

胸元のボタンホール見る

Ho

68牢屋

エルビウム

Erbium

牢屋へエラー(Error)で入れられる

Er

69ムクドリ

ツリウム

Thulium

ムクドリのクチバシにはさんだ虫をつかって、魚を釣りウム

Tm

70

イッテルビウム

Ytterbium

縄→ワイ(Y)→言っている→b生む

Yb

 

 ジスプロシウムは新元素として発見されるときの苦労を象徴して、ギリシャ語の「近づきがたい」(dysprositos)から名づけられた。光磁気記録、磁気冷却、磁歪効果に応用される。

ホルミウムの名前は、スウェーデンの首都ストックホルムの古名Holmiaにちなんでつけられている。金属ホルミウムは銀白色の光沢をもち、乾燥した空気中では安定。熱をかけたり湿気をおびた空気に触れると、急速に錆びる。酸化ホルミウム(Ho2O3)を添加したが分光光度計の波長校正に使われる。ホルミウムを添加した色ガラスは淡黄色。

エルビウムの発見物語も複雑である。スウェーデンのイッテルビー町のガドリン石から分離されていた「イットリウム」が、純粋な新元素ではなく、新元素の混合物であった。ここから、イットリウム(Y, 元素番号39)、テルビウム(Tb, 65)、「エルビウム」が分離された。ところが、このときの「エルビウム」も、幾つかの新元素の混合物であった。ここから、ジスプロシウム(Dy, 66) 、ホルミウム(Ho, 67)、ツリウム(Tm, 69)、イッテルビウム(Yb, 70)、ルテチウム(Lu, 71)、スカンジウム(Sc, 21)が発見された。純粋なエルビウムは、もっと後になってから得られたという。エルビウムを含ませた光ファイバーが長距離光通信材料として注目されているそうだ。

ツリウムはホルミウム(Ho)と同時に発見された。ツリウムの語源には諸説あるようだ。@スカンジナビア半島の旧地名Thule(ツーレ)、Aスウェーデンの町ツーレ、B極北の地ultimate Thule。ウェブで調べてみると、@が有力だとある。エルビウム(Er)と同様に、光増幅器の添加物として光ファイバーに利用されるそうだ。

イッテルビウムの発見物語はエルビウムのところで説明済み。名前の由来は、スウェーデンの町イッテルビーにちなむ。イッテルビウムはガラスの着色やコンデンサーに使われている。

 

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元素名

英語名

「むりやり理由」

元素記号

71ナイロン

ルテチウム

Lutetium

ナイロンパンスト製造ルーティーン

それはもちろんエルー(Lu)サイズ

Lu

72

ハフニウム

Hafnium

夏にモテモテ、ハーフHf)の娘(こ)

Hf

73

タンタル

Tantalum

波高く(Ta…短樽では沈んでしまう

Ta

74

タングステン

Tungsten

梨は(Wたくさん捨てんこと

W

75名古屋

レニウム

Rhenium

名古屋人は礼にうるさい

Re

 

 ルテチウムの発見物語のあらすじもエルビウムのところで説明済み。具体的には、1907年フランスのユルバンが分離した。パリの古名ルテチア(Lutetia)にちなんで名づけられた。ルテチウムは希土類の中では価格が一番高いこともあって、工業的にはほとんど利用されていないそうだ。原子番号57のランタン(La)から始まるランタノイドは、このルテチウム(Lu, 71)でようやく終わる。

 ハフニウム19221923年に、コペンハーゲンのボーア研究所で、コスターとヘベシーらによって、ノルウェー産の鉱石ジルコン(ZrSiO4)から発見された。ハフニウムはコペンハーゲンのラテン名Hafniaにちなんで名づけられた。ハフニウムは周期表では4族で、原子番号の小さなものとして、チタン(Ti, 22)やジルコニウム(Zr, 40)がある。これらの酸化物は釉薬の原料として使ったことがあるが、ハフニウムのことは知らなかった。きっと高価すぎるのだろう。ハフニウムは中性子吸収率がきわめて大きいため、原子炉の制御棒として用いられているそうだ。これなら採算を度外視できそうだ。化学的性質が似ているジルコニウムは、中性子吸収率が低いので、燃料棒の被覆に使われているという。

 タンタル1802年にスウェーデンのエーケベリによって発見された。名前の由来はギリシャ神話のタンタロス。単体のタンタルは光沢のある灰色金属。かなり硬いが延性に富む。金属タンタルはほとんどの試薬に侵されず、きわめて酸化されにくい。フィラメント、電子部品、真空炉の部品などに使用される。人体との反応がほとんどないので、骨のつなぎ合わせなどの医療器具に用いられている。なるほど、ここか、と私は気づく。スタニスワフ・レムは医者の免許も取得していたのだが、SF小説の世界で活躍するほうへと進んでいった。SF小説の中に「タンタル」を使ったのは、このあたりの知識からの連想であったのだろう。

 タングステンはもともと鉱石の名前だった。スウェーデン語でタングステン(tungsten) は「重い石」という意味である。このタングステンと灰重石(CaWO4)から、酸化物として単離され、鉱石の名前であったタングステンが元素名としても使われるようになった。元素記号のWは、これとは異なる由来による。スズを精錬するとき、スズ鉱石とタングステンを含む鉱石を混ぜると、スズとタングステンが化合して複雑な化合物ができることが知られていた。このことから、「スズを狼のようにむさぼり食べる」という意味で、この鉱石をwolfart(ウォルファート)と呼んだ。こちらの鉱石から、少し後になって、新元素が単離され、ウォルフラム(wolfram)と名づけられた。つまり、タングステンは、わずか2年ほどの時間差で、別々に発見され、タングステンとウォルフラムという、二つの名前がつけられたのである。元素記号のほうに、ウォルフラムの頭文字が残されたというわけ。ドイツでは現在でもWolframのほうが元素名となっているらしい。

 タングステンはすべての金属の中で最も融点が高い。蒸気圧も低く、細い線に加工できるので、白熱電球のフィラメントに使われている。鉄鋼にタングステンを加えると著しく硬度が増す。炭化タングステン(WC)は、ダイヤモンド、炭化ホウ素(B4C)に次いで硬く、機械材料や切削工具材料として使われている。

 レニウム1925年にドイツのノダックらによって発見された。発見者らの国にあるライン川のラテン名Rhenusにちなんでレニウム(Rhenium)と名づけられた。レニウムは地殻中の存在量が非常に少ない。工業的な用途としては、質量分析計のフィラメント、ペン先、高温熱電対などがある。

 

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元素名

英語名

「むりやり理由」

元素記号

76ナムアミダブツ

オスミウム

Osmium

ナムアミダブツと唱えるお坊さんは、ほとんどオス(雄Os

Os

77→七夕

イリジウム

Iridium

77日→七夕→夕日

→地面に太陽が入る(いるIr

Ir

78那覇

白金

Platinum

那覇の豚はの味、PTAもおすすめ

Pt

79泣く

Gold

泣く泣くおが逃げてゆくAuフォンの使いすぎ

Au

80晴れ

水銀

Mercury

晴れ→気温上昇→(温度計の)水銀柱

水銀は水(H2O)と銀(gin)と書く

Hg

 

 オスミウム1803年にイギリスのテナントによって、(原子番号77)イリジウムとともに発見された。オスミウムの酸化物である四酸化オスミウム(OsO4)が強い臭いをもっていることから、ギリシャ語の「臭い」(osme)より、オスミウム(Osmium)と名づけられた。単体のオスミウム金属は青白色で、かたくてもろい。比重は22.6であり、最も重い物質(次の原子番号77のイリジウムIrも同じ比重)

 イリジウム1803年にイギリスのテナントによって、(原子番号76)オスミウムとともに発見された。イリジウムの塩類が虹のように多彩な美しい色を示すので、ギリシャ神話の「虹の女神Iris」より、イリジウム(Iridium)と名づけられた。イリジウムと白金の合金が、キログラム原器とメートル原器の材料となっている。ただし、現在の長さの単位は、クリプトン8686Kr)が放つ光の波長にもとづいて定められているそうだ。

 白金は銀に似ていたので、スペイン語の銀plataの縮小詞platina「かわいい小粒の銀」として名づけられた。日本語の「白金」は、この金属がヨーロッパでwhite gold と呼ばれていたことに由来する。

 白金は装飾品として用いられる。また、触媒として、硝酸の製造や自動車の排気ガスの浄化などに用いられる。

 は銅に次いで人類が古くから知っていた金属である。金の英語名goldは、インド・ヨーロッパ語の「黄金ghel」に由来する。元素記号のAuは、ラテン語の「金aurum」から名づけられた。「オーロラ」という言葉の語源も、この「金aurum」である。

 水銀も古代から知られていた金属の一つである。元素名のmercuryは、ローマ神話の商売の神メリクリウスmercuriusに由来する。この神は翼をもち、神々の使者として、天地を駆けめぐったという。このイメージから、太陽系の第一惑星である水星にもMercuryという名がつけられた。水銀は流動性に富み、まるで生物であるかのように駆けめぐるので、やはりMercuryと名づけられた。

 元素記号のHgは、ラテン語で「水のような銀」を表現する、「水hydro」と「銀argyrum」から一文字ずつとって組み合わされたもの。日本語の「水銀」は、中国古代から使われていたもの。

 

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元素名

英語名

「むりやり理由」

元素記号

81歯医者

タリウム

Thallium

歯医者が街に足りすぎている

Tl

82初孫

Lead

初孫も大きくなったらプレイボーイ(Pb

Pb

83ハサミ

ビスマス

Bismuth

ハサミで切るのはBサイズのマス(鱒)

Bi

84

ポロニウム

Polonium

橋が端からポロポロ壊れる

Po

85羽子板

アスタチン

Astatine

羽子板に羽根をあてAt)て明日発ちぬ

At

 

 タリウム1861年イギリスのクルックスにより、硫酸工場の残留物を分光分析より調べ、緑色の炎光スペクトルを発する物質として発見された。ギリシャ語の「新緑の若々しい小枝(thallos)」にちなんでタリウム(Thallium)と名づけられた。タリウムは、外観・性質・比重などが鉛によく似ていて、ナイフで切れるくらいに軟らかい。タリウム化合物は、一般に毒性が強い。硫酸タリウム(Tl2SO4)は殺鼠剤・殺蟻剤として使用されていたが、臭いも味もなく、人にも危険であるため、現在ではあまり使われていない。

 は古代からよく知られていた金属の一つである。元素記号のPbの由来は、「鉛」のラテン語plumbumより。鉛は水道管として使用されてきた。酸化被膜をつくるので鉛が溶け出すことはないと考えられていたためである。しかし、分析技術が向上すると、微量の鉛が溶け出すことが分かり、現在では、合成樹脂やステンレスの水道管へと置き換えられている。かつては、「おしろい」に炭酸鉛が含まれていて、「おしろい中毒」が発生したという。これも、現在では、亜鉛華、酸化マグネシウム、二酸化チタンなどが材料として使われているという。なるほど、これらは白い粉末である。亜鉛華は少し黄味をおびている。いずれも釉薬の原料として使うことがある。釉薬の原料としても、現在では酸化鉛は使わなくなっている。

 ビスマスは光沢のある銀白色の金属。十五世紀ごろからビスマスという名称で知られていたが、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、スズ(Sn)と混同されていた。18世紀になってから、これらの違いが区別され、単体ビスマスが分離された。英語名のbismuthは古代ドイツ語のWissmuthに由来するらしい。ビスマスは、鉛、スズ、カドミウム(Cd)、インジウム(In)などと合金をつくる。これらの合金は、特殊なハンダ、ボンベの安全弁、火災報知機などに用いられる。

 ポロニウム1898年にキュリー夫妻によって発見された。ポーランド生まれのマリー・キュリーにより、ポーランドの名前から名づけられた。ポロニウムはアルファ線を放射する、天然から得られた最初の放射性元素である。

 アスタチン1940年にサイクロトンを用いて人工合成されて作られた。数時間の半減期をもつものであり、きわめて不安定であったため、ギリシャ語の「不安定」(astatos)にちなんで名づけられた。

 

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元素名

英語名

「むりやり理由」

元素記号

86ハム

ラドン

Radon

ハムを焼くためラード(ン)をひく

Rn

87花火

フランシウム

Francium

花火→電気花火→フランケンシュタイン

Fr

88

ラジウム

Radium

母→裸人で裸人を生む

Ra

89ハクション

アクチニウム

Actinium

ハクション→アクションaction

Ac

90クレヨン

トリウム

Thorium

クレヨンでトリ(鳥)を描けば、卵産む

Th

 

 ラドンはラジウムの崩壊で生成する放射性の気体である。ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)の下にくる、最も重い希ガスである。1923年の国際会議で、ラジウムの壊変によって生成されることから、ラドンと名づけられた。

 フランシウム1939年にパリのキュリー研究所のペレーによって発見された。ペレーの祖国フランスにちなんで名づけられた。このフランシウムは半減期が20分程度の放射性元素として存在する。

 ラジウム1898年キュリー夫妻によって発見された。放射線を放出していることから、ラテン語の「放射」(radius)から名づけられた。このとき、同時に、「放射能」(radioactivity)という言葉も創られた。1903年にキュリー夫妻はノーベル物理学賞を受賞した。1906年、夫のピエール・キュリーが、暴走した馬車にはねられて命を落とした。享年48歳であった。妻のマリー・キュリーは、このショックで重い病に倒れたが、その後も研究を続け、1911年にノーベル化学賞を受けた。そからも研究を続けたマリー・キュリーは、放射能を浴び続けることとなり、1934年に白血病のため、この世を去った。

 アクチニウム1899年ドビエルヌによって発見された。放射能を持っている元素であったため、ギリシャ語の「光線」(aktis, aktions)からアクチニウム(actinium)と名づけられた。

 トリウム1828年にスウェーデンの化学者ベルセーリウスによって、ノルウェーの鉱物であるトール石の中から発見された。スカンジナビア神話の雷神トール(Thor)にちなんでトリウム(thorium)と名づけられた。トリウムの同位体は25核種知られているが、すべて放射性である。最も寿命の長い核種の232Thの半減期は141億年。かなり永い。このため、二酸化トリウムがタングステンランプのフィラメントのコーティング剤として使われるなど、いくつかの実用的な用途がある。

 (2010.06.09 Written by Kinohito KULOTSUKI [@] KULOTSUKI ANALYSIS INSTITUTION)

 参照資料

[1] http://www.treeman9621.com/treeman9621_picture_book_list.html

[2 ] http://www.treeman9621.com/ROBOT_STORY_PAGE_05.html

[3] 「元素111の新知識」桜井 弘_編、講談社ブルーバック1997