RaN255 地球人はどこにいるのか(9)物理巨大数のコインシデンス
Where is the earthian? (9)Coincidence of Physical Large numbers

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

ランダムノート2016ブランチページへもどる

 はじめに

 ずるずると先送りしてきた、このテーマについて説明します。
 タイトルも「物理巨大数のコインシデンス」とすることにしました。
 「物理巨大数」のところは、「宇宙物理巨大無次元数」まで書き下すことにすれば、さらに、このときのテーマに近づきます。
 「コインシデンス」は「偶然の一致」という意味です。
 わたしたちの周囲に広がっている宇宙を、物理学の視点から観測したときの、いろいろな物理定数から、ある種の無次元数をいくつか求めてみると、それらの値は、すべて非常に大きなものとなり、さらに、それらの無次元数の間に、偶然の一致と呼べるような、不思議な関係があるのです。

 「宇宙の定数」「幸運な宇宙」「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」

 このページでのテーマは、次の3つの本で詳しく解説されています。
 ジョン・D・バロウ「宇宙の定数」[1]、ポール・デイヴィス「幸運な宇宙」[2]、青木 薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」[3] の3冊です。
 「幸運な宇宙」[2] と「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」[3] は森の図書館で借りてきました。
 「幸運な宇宙」[2] は何年か前に借りて、その内容についてのコメントページを作ったことがあります。
[4] RaN09 ポール・デイヴィス「幸運な宇宙」 第1章〜第6章について
[5] RaN10 ポール・デイヴィス「幸運な宇宙」 第7章〜第9章について
[6] RaN11 ポール・デイヴィス「幸運な宇宙」 第10章について
 これらは2009年のもののようです。とにかく、この本を返却するまでにと、急いで読んで、内容を少しまとめ、自分の感想のようなものを添えたものです。
 「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」[3] の著者の青木 薫さんの経歴を読ませてもらうと、私と同じ大学ではありませんが、ちょうど同じころ、同じように理学部というところで学んでいたことを知りました。大学は異なりますので、出会うこともなかっただろうと思われますが、あのころ、同じように勉強していた人が、このような仕事へと進んでいるということを知り、大学に残らなくても、いろいろな可能性があったのだなあと思いました。ちなみに私は、学生時代も陸上競技というスポーツに夢中で、学校の先生になったら、このスポーツ(具体的には、その中の走高跳)を続けることができるという、かなり安直な考えで進路を決め、そのプランに沿っていったわけです。そのあとの変化は、まあ、「むちゃくちゃ」と表現されてもしかたがないものでしたが。
 「宇宙の定数」[1] は私の本棚にあったものです。どういうわけか、2005年の初版第1刷本を買ってもっていたのですが、これまで、ほんのわずかでも、開いて読んだ記憶がありません。私の本棚には、何冊か、これによく似たものがあります。粂井康孝(著)の「猫でもわかる ゲームプログラミング」という本も、2005年の初版第1刷本を買ってありました。買ったときは、何が書いてあるのか、さっぱり分からなかったのに、「すごい」あるいは「かっこいい」と感じただけで買い求めたのです。このホームページを始めたころの2008年あたりから私は画像解析のプログラムソフトを自分で作るということをやっているはずですが、C言語を独学で学ぶときのテキストの一つが、この「猫でもわかる ゲームプログラミング」でした。C言語のプログラミングについての、「中級」もしくは「上級」のためのテキストは、これ以外にほとんど無かったのです。
 「宇宙の定数」[1] のことに戻ります。
 何も読んでいないのに、関連するところだけを取り出して、今回のシリーズのために使うというのでは、私はまた何かとんでもないミスをおかしてしまうかもしれません。とりあえず、この本を通読しておくことにしました。幸いこの本は私のものです。図書館から借りてきた本については、あとで引用しようとおもうような部分のためのしるしは、紙の付箋を貼ることにしていますが、自分の本なのですから、赤鉛筆などで横に線を引くことができます。「試験に出そうなところ」につける▽マークもしるしておけます。
 「宇宙の定数」[1] を通読するには3日かかりました。そのうち、中1日は、虫歯の治療と、母の買い物のために、おおよその時間をかけることとなりましたから、実質は2日くらいです。20世紀初頭あたりまでの物理学については、これまでにもいろいろと学んできましたが、著者のジョン・D・バロウは、現役の科学者であり、その内容の大半は、最近の科学論文や、科学の世界の世界的な雑誌から集めてきたものなので、語り口は一般向けですが、その内容は、専門の学会でとりあつかわれるようなものでした。「幸運な宇宙」[2] はかなり一般向けになっていますし、「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」[3] は、さらに要約されて語られています。
 「宇宙の定数」[1] を通読してみると、この中から取り上げて、しかるべきタイトルをつけて語ってゆくことになる項目のリストが、たくさん現われてきました。しかし、いつまでも、このテーマを先のばしにしてゆくことはできません。

 微調整されているかのように見える物理定数

 これらの本でとりあげられている物理定数の中で、もっとも古くから知られていたものは、ニュートンの万有引力の公式で現われる、重力定数(万有引力定数)Gではないでしょうか。
 ウィキペディアなどで調べると、ニュートンがプリンキピア「自然哲学の数学的諸原理」という本を出して、万有引力の法則を広く示したのが1687年となっています。このGがさいしょに測定されたのは、キャヴェンディッシュによる1798年の鉛球実験(キャヴェンディッシュの実験)のことだそうです。111年もの開きがあります。このころの科学は、ずいぶんとゆっくり発展していったようです。
 重要な物理定数として、これに続くものは、おそらく、光速度cではないでしようか。光速度が有限な値をもつということは、かなり古くから知られていたそうです。たしか、ガリレイ・ガリレオが測定を試みたと記憶しています。
 光速度の測定についての歴史は「レーザーによる光速測定」にまとめられています。初めて測定されたのは「木星の衛星の食(レーマー、1676)」によるもののようです。
 この光速度cについては、19世紀の末から20世紀にかけて、いろいろ実験や、それを解釈するための理論が生み出されてきました。その集大成として考えられてきたのが、アインシュタインの「特殊相対性理論」です。
 しかし、これがまったくの空論であることは、(正式に学会などへ出していませんが)2008年ごろに、私が、その基盤となる「ローレンツ変換」についてのポアンカレによる証明の中に、数学的な処理ミスがあることに気づき、そのことを「幽霊変換」という論文に(日本語と英語で)まとめて、ウェブで公開しました。ここからアインシュタインの証明版である「特殊相対性理論」の矛盾の構造を解き明かしたものも記しました。その要点は、ポアンカレの証明においては、変数の2次式であるダ・ランベルシアンを使っていたので、矛盾(処理ミス)は1つですんだのですが、アインシュタインは2つの矛盾を(自分では気づかなかったのでしょうが)組み込むことにより、ローレンツ変換の式を生み出していたという対応が見られるということです。これらの、アインシュタインの2つの矛盾は、それまでにも指摘されていたのでしたが、それぞれ独立に取り上げられていたので、アインシュタイン擁護波の権威ある学者たちの「防波堤」を崩すことができなかったのです。
 アインシュタインの特殊相対性理論が空論であることは分かったのですが、こうして振り出しに戻った「光速度とエーテルの問題」などは、まだ解決されていないことになります。もうお亡くなりになっていますが、「超相対性理論」という、さらに空論っぽいものを生み出された清家新一氏が、マイケルソン・モーレーの実験を月面で行うべきだと提案されていました。しかし、ある情報によると(出典は記憶していません)「地球のエーテルは月の軌道を包んでいる」とありました。これだと、月面で実験しても違う結果は得られないかもしれません。
 重力定数(万有引力定数)Gと光速度c以外にも、電子の電荷eやプランク定数hなど、さらにいくつかの物理定数について、それらの性質や値、さらに、それらがたどってきた歴史について、ここで詳しく論じてしまうと、三冊の本を集めて組み直したものになってしまいますので、ここで止めておきます。
 [1] [2] [3] の本で、これらの物理定数が問題となっているのは、これらの値が、ほんの少し異なるだけで、わたしたちの物理世界がめちゃくちゃになってしまって、存在することさえ疑わしいことになるということです。
 そのような視点が、ポール・デイヴィス「幸運な宇宙」[2] の原題に盛り込まれています。その原題は THE GOLDILOCKS ENIGMA といいます。その名の由来についての物語が、この本の「まえがきと謝辞」のさいしょのところに書かれています。
 ポール・デイヴィスが博士課程で学んでいたころ、指導教官から、「息抜き」としてすすめられた、イギリスの理論物理学者であるブランドン・カーターの論文を読んだそうです。その中に「物理法則が、まるでゴルディロックスのスープのように、生物が生存するのにちょうどいいように調整されているように見えた」という文があって、ここから「ゴルディロックス」という言葉を拾い上げたということです。
 このときの「ゴルディロックスのスープ」の「ゴルディロックス」というのは、イギリスの童話「ゴルディロックスと三匹の熊」の主人公である少女の名前だそうです。
 やはり説明はここで止めますが、このカーターの論文が「引き金」となって、ポール・デイヴィスは「偶然の宇宙」という本を書き、本格的な科学者として、このような問題へのめりこんでいって、その人生にとっては、付録のようなものでしょうが、一般向けの科学解説書である「幸運な宇宙」という厚い本も生み出したということです。
 「微調整されているかのように見える物理定数」のきっかけとなるエピソードは、このようなものです。これについての本格的な解説については、これらの [1] [2] [3] に詳しくまとめられています。

 いくつかの物理定数による無次元数の巨大さ

 このテーマに関する物語は、まだまだ続きます。その物語の流れについて、鳥瞰的に眺めることにします。
 科学者たちは、このような物理定数について考えてゆくために、それらの組み合わせによって生じる無次元数というものを考えることにしました。
 無次元数というのは、単位としての次元をもたない、ただの数のことです。
 ジョン・D・バロウ「宇宙の定数」[1] によれば、さいしょにこのような無次元数をとりあげたのは、アーサー・スタンリー・エディントンだそうです。
 エディントンはアインシュタインの一般相対性理論の実験的な証拠を見つけるため、日食時の、背後のある恒星の光の曲がりを測定するチームをまとめた人です。このことについては、以前に詳しく調べ、このことはかんたんなものではなく、測定データの解釈については、ある種の偏り(データの選択にかかわるデバイス)があったのではないかと、私は分析して、ページをまとめたことがあります。あまり詳しく定量的に分析していませんが、太陽の周囲にあるはずの「太陽の大気による屈折」という問題も、まったく考察されていません。おそらく、そのような「太陽の大気」というものを測定する技術がなかったからかもしません。
 エディントンが考えた「物理定数による無次元数」は、次の4つです。
(E1) 見える範囲の宇宙にある陽子の個数
 ◇ エディントン数
 ◇    
(E2) 陽子と電子の質量の比
 ◇    
(E3) 微細構造定数の逆数
 ◇    
(E4) 陽子と電子の間に働く重力と電磁力の比
 ◇  <ほぼ等しい>    

 青木 薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」[3] では、エディントンについてもとりあげられていますが、「物理定数による無次元数」については、イギリスのハーマン・ボンディのものを詳しく取り上げています。ボンディは無次元数を4つ作ったのだそうですが、その4つ目は、3つ目までのものの組み合わせ作ることができるので、(独立した変数、もしくは要素として見ることができないので)省略されています。ボンディが作った無次元数の(B1)〜(B3)は、次のようなものです。この著書では重力定数がγで記されていますが、このページでは、混乱をさけるため、既述のGとします。
(B1) 陽子と電子の間に働く重力と電磁力の比
 ◇   
(B2) 宇宙の膨張速度の目安であるハッブル定数から導かれた長さ(◇ 宇宙の半径)と、古典的な電子の半径(◇ 核力の到達範囲)との比
 ◇  <ほぼ等しい>   
(B3) 宇宙の質量(◇ 宇宙の質量密度×半径の3乗)を、陽子の質量で割ったもの [◇] 宇宙に存在する陽子(あるいは中性子のような、電子と比べて重い粒子)の個数
 ◇  <ほぼ等しい>   

 ポール・デイヴィス「幸運な宇宙」[2] には、これらの巨大な無次元数についての記述は無いようです。
 (E1)のエディントン数については、(B3)で、より厳密なものとして求められています。
 (E4)は係数抜きで求められていますが、(B1)でこの係数が0.23と求められています。このような、1に近い数字についてこだわらないで、これらを比較することにより、次のテーマへとつながることとなります。

 巨大な無次元数の間に見られる偶然の一致(コインシデンス)

 これらの無次元数において、(E2)と(E3)を除けば、のこりのものの中に、共通の因子があることが分かります。
    
 エディントンの無次元数についての、(E1)と(E4)は、ボンディの(B3)と(B1)であらためて取り上げられていますので、この因子が含まれている、独立した巨大な無次元数としては、少なくとも(B1), (B2), (B3)の3つがあることになります。
 実は、「宇宙の定数」[1] の中に、この因子にかかわる無次元数のことが語られています。

(J1) 観測できる宇宙の「作用」について、作用に関する根本的なプランク単位で推定値を計算すると、次の値が出てくる。
  

(J2) ハッブル宇宙望遠鏡を、地上の高感度の望遠鏡と共同で動かすことによって、はるか遠方の銀河にある超新星が観測された。それらの超新星は、予想されるよりはるかに高速で遠ざかっていることが分かった。この観測結果を、アインシュタインが(たしか)一般相対性理論のテンソル式に、いったん導入したが、間違いだったとして取り消した「宇宙定数」として求めたとき、次の値が求まる。
    

 「宇宙の定数」[1] によれば、このような巨大な無次元数が出てくることに、さいしょに気づいたのは、1919年のヘルマン・ワイルだそうです。
 エディントンについても触れていますが、同じケンブリッジ大学で務めていたポール・ディラックが、この巨大数の問題について「割り込んできて」、「ディラックの巨大数仮説」(LNH, Large Numbers Hypothesis)を打ち立てたことへと進んでゆきます。それは、次のように表現されるものです。

 自然に現われる巨大な無次元数のうち二つは、単純な数学的関係でつながっていて、係数は1の程度である。

 つまり、「これらの巨大な無次元数の奥に、何らかの法則のようなものが存在する」というアイディアを仮説として提案したのです。
 さて、この続きは、というと、「宇宙の定数」[1] は、まだ全体の1/3が終わったところで、このあと、いろいろなところへ枝を伸ばし、ジョン・D・バロウの目標地点へと向かってゆくのですが、これについて説明してゆくと、このページが終わりそうもないので、このページのタイトル「物理巨大数のコインシデンス」に関する説明はここで終わっておきます。
 次回に、この続きをまとめるのではなく、この「宇宙の定数」[1] にたびたび現われた、イギリスの科学者フレッド・ホイルについて、少しまとめておきたいと考えています。「宇宙の定数」[1] のスピンオフということになります。
 「地球人はどこにいるのか」に関しては、「宇宙の定数」[1] のラストテーマより、フレッド・ホイルのエピソードのほうが、ずうっと強く関連しているものですから。
(Written by KLOTSUKI Kinohito, March 6, 2016)

 参照資料

[1] 「宇宙の定数」、ジョン・D・バロウ(著)、松浦俊輔(訳)、青土社(刊)2005
[2] 「幸運な宇宙」、ポール・デイヴィス(著)、吉田三知世(訳)、日経BP社(刊)2008
[3] 「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」人間原理と宇宙論、青木 薫(著)、講談社現代新書2219、2013年
[4] RaN09 ポール・デイヴィス「幸運な宇宙」 第1章〜第6章について
[5] RaN10 ポール・デイヴィス「幸運な宇宙」 第7章〜第9章について
[6] RaN11 ポール・デイヴィス「幸運な宇宙」 第10章について

 

ランダムノート2016ブランチページへもどる