RaN289 地球人はどこにいるのか
(43)フレッド・ホイル & チャンドラ・ウィクラマシンゲ
「生命(DNA)は宇宙を流れる」
Where is the earthian?
(43)Fred HOYLE & Chandra WICKRAMASINGHE “COSMIC LIFE-FORCE”

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 はじめに

 フレッド・ホイル & チャンドラ・ウィクラマシンゲが記した「生命(DNA)は宇宙を流れる」[1] について語る前に、「100匹目のサル」で有名な、ライアル・ワトソンの「生命潮流」の「第一部 生命の水際」にある「第一章 種子――宇宙進化の渦中で」について触れようと思います。実は、もうひとつ前の段階として、チャネリング情報として、宇宙人の誰か(プレアデス人のサーシャかエササニ人のバシャールか?)が「100匹目のサル」の現象について語っていたと思うのですが、はっきりとした出典を覚えていないので、「生命潮流」から始めることにします。

 ライアル・ワトソン「生命潮流」

 この本は日本語での出版が1981年で、原本のLifetideは1979年となっています。私が20歳台半ばのことでした。このころ買って読んだ記憶があります。でも、たびたびの引っ越しの間に、消えてしまっていました。今回読んだ本は土の図書館から借りているものです。1993年の第36刷のものです。表紙のカバーに赤い帯で「100匹目のサル/の登場」とプリントされており、昔のものとはデザインが違うな、と感じました。でも、おそらく、内容は何も変わっていないことでしょう。
 今回読み始めて、「第一部 生命の水際」にある「第一章 種子―宇宙進化の渦中で―」のところに、フレッド・ホイル & チャンドラ・ウィクラマシンゲの「生命(DNA)は宇宙を流れる」の内容がたくさん取り入れられていることに気がつきました。若いころは、この「第一章」についての印象はあまり強くなかったと思います。なぜかというと、「生命(DNA)は宇宙を流れる」が日本語で出版されたのが1998年であり、ずうっと後のことだからです。この本をいつ買って読んだのかはっきりしませんが、2008年のころ、この本に記されている「パンスペルミア説」のことが気にかかり、接続し始めたウェブを利用して、いろいろなことを調べた記憶があります。

 反転されたテニス・ボール

 「生命潮流」第一部「生命の水際」のところに記されたエピソード
 ライアル・ワトソンは「オカルトに関する私(ワトソン)の初めての著書」となる「スーパーネイチュア」のイタリア語版を1974年に出していたそうですが、それを読んだイタリアのヴェニスに住む、ある父親が、五歳の少女クラウディアが「まったく前代未聞のことを始めた」と、ライアル・ワトソンに直接手紙を書いて送ったのだそうです。
 まるで小説家の描写のように、細かく語られてゆきますが、ここでは、ざっくりとまとめてしまいます。
 ライアル・ワトソンは、その少女の家を訪れ、「魚とポレンタの料理をつつきながらクラウディアを観察」します。このあとも、細かな描写が続きますが、起こったことの結論を述べると、クラウディアは「テニスポールの筒を開け」、ひとつを取り出し、「ボールをいとおしげに頬に近づけ、左手にのせ、(中略)右手でやさしく叩いた」そうです。すると、(ここからさらに描写がえんえんと続くのですが)「裏返しにされ、なお依然として圧搾空気を内蔵したテニス・ボール」になったのです。その「反転されたテニス・ボール」をライアル・ワトソンはホテルに持ち帰ったとあります。
 「割れ目のない球を手袋のように裏返すことなど不可能だ」とか「われわれの知る現実の世界ではありえないことなのだ」とワトソンは記し、この世界についての、これまで考えられてきたものとはまったく異なる視点について、深く考えてゆくことになったそうです。

 宇宙サナギ

 「第一章 種子――宇宙進化の渦中で」の(第一節)「呼吸する宇宙」では、「ドップラー効果」から「(遠くの銀河系の光に関する)赤方変移」を経由して「(宇宙の)ハッブル半径」へと展開してゆきます。それから「コスモスの期限」と「バックグラウンド輻射」へと進みますが、そこから一転して、「生命の起源」の問題へとつながってゆき、「地球のように恒星と関係をもつ惑星においてしか有機的進化は起こりえない」とする「暗黙の前提」にライアル・ワトソンは疑問を持ちます。

 (第二節)「生命を育む星間雲彗星」においては、まず、「フラウンホーファー線」の発見(1814年)があり、「元素ごとに線の独特のパターンが現われること」が1859年に知られたことにより、「今日、分光学では一万種以上の線を見分けることができる」ので、どんなに遠い宇宙からの光でも、そこから元素の「指紋」を見出すことができることにふれています。
 ここから、宇宙空間はまったくの空っぽではなく、「星間には気体や塵などでできている雲」があり、炭素(C), 窒素(N), 水素(H), 酸素(O)が存在していることが分かり、「星間空間の塵粒は地球上でもっとも単純な生物のいくつか――地球上のバクテリア――と同じ大きさ、成分をもっているのだ」と語っています。

 光学的な「フラウンホーファー線」による「指紋」に続き、これと同じようでいて少し異なる、電波天文学でとりあつかう「マイクロ波」でも、明瞭な「指紋」としての「電子スペクトル」が見いだされるようになり、それによって、「星間空間にある単純に有機分子」が探知されるようになったことを取り上げています。当初分かった物質というのは、次のようなものです。シアノゲン(CN)、一酸化炭素(CO)、シアン化水素(HCN)、「そのうちに」、ギ酸アルデヒド(H2CO)、「しばらくして」、ギ酸(HCOOH)、メタノール(CH3OH)、アセトアルデヒド(HCO・H3)、「そして」、メチルギサン塩(HCOOCH3)とあります。これ以降に見つかった「星間分子」については「理科年表」の「天文」の「これまでに観測された星間分子」に記されています。

 ライアル・ワトソンによる次の展開としては、「スペクトルのいくつかの部分に見られる不可解な特徴」が「これらの複合的な有機分子」と「長鎖状の純粋な炭素」が堆積して「宇宙塵の表面上に粘着性のあるタール膜を形成していることに起因しているのではないか」と示唆されるようになったことから、このような星間の塵の雲が「複雑な炭化物の初期の進化が起こる場所」となっているのではないかと考えを進めてゆきます。
 証拠となる知識と推論が組合され、生命の「種子」となるものが、星間の塵の雲に起源をもつ隕石へ集められ、一種の「宇宙サナギ」として、この宇宙のあちこちにばらまかれているというところへと進んでゆきます。

 彗星のヒッチハイカー

 (第三節)「彗星のヒッチハイカー」のさいしょの一文のところに、フレッド・ホイル と チャンドラ・ウィクラマシンゲの名前が現われます。本としてではなく、この二人の学説としての考えが紹介されているわけです。この二人が本としてまとめて出版したのが1988年のようですので、ライアル・ワトソンがここのところを記しているときには、まだ、詳しい知識がまとめられていなかったのでしょう。
 そのかわりに、ライアル・ワトソン自身が、二人の仮説を補うような知識を集めて、ここで展開してゆきます。
 1961年、隕石の内部にミクロ化石が発見されました。
 (論文番号80を巻末の参考文献から調べて)1969年、オルグイユ隕石の不溶解部分にスポロポレニンが発見されました。これは「タスマニア島の3億5000万年前の岩石からとったプランクトン様の海藻の胞子のミクロ化石にも発見された化学物質」だということです。
 チャンドラ・ウィクラマシンゲ(「生命潮流」ではチャンドラ・ウィクラマシンジ)による、この「スポロポレニン」の位置づけは、「原始的な星間原細胞なのかもしれない」というものです。つまり、これが地球の生命の始まりとなったものだという考えです。
 さらに細かな科学知識がとりあげられ、このような考えが展開されてゆきますが、ここでも、大筋のみをたどることにします。
 宇宙のかすかな塵の雲で進化した生命の「種子」が、この広い宇宙を旅するために使った乗り物として「彗星」が考えられるわけです。このような考えをさいしょに打ち出したのはフレッド・ホイルだったようです。
 このあと、ライアル・ワトソンは「インフルエンザの謎」という節を設け、このような現象と彗星との関係について考察していますが、これらは、フレッド・ホイルとチャンドラ・ウィクラマシンゲの主張をなぞったもののようですので、ここでは説明を略します。

 「生命(DNA)は宇宙を流れる」

 この本に至るまでに、彼らは、「生命の起源が宇宙にある」という仮説を展開してゆくために、数多くの本を出しています。

 「生命の雲」(Life cloud)は「生命体を構成するセルロースなどの有機分子」が「銀河系を越えたはるか彼方の銀河にまで、広く分布しているに違いない」と主張するものだそうです。最初「少なからぬ批判を受け」「こっぴどくこきおろされ」たそうですが、「炭素質コンドライト(という名の隕石)」や「地球大気の上層で集められた地球外粒子」や「彗星の中」に、「さまざまな有機分子が見つかった」のです。そして、ハレー彗星が接近した1986年には、これの「直接探査の結果」「ついに彗星が有機物からできている」ということが分かり、「生命の雲」が正しいということが「ついに受け入れられた」ようです。

 「宇宙からの病原体」(Diseases from Space)でも「憎悪の雨ともいうべき反響」を呼んだそうです。これは「ウイルスやバクテリアが地球外に起源をもち」「宇宙からやってきた微生物」によって「伝染病」という現象が起こされるということを主張したものです。

 「宇宙からの進化」(Evolution from Space)も「批判者の神経を逆なでした」そうです。これは「地球上の生物が進化する――遺伝子が変化する――のは、も宇宙からきたウイルスやバクテリアが新たな遺伝子を持ち込むため」だとする仮説についての本です。

 これらのことの「集大成」が、この「生命(DNA)は宇宙を流れる」という本として、総合的に語られます。全部で11章ありますが、それらのタイトルを並べると、次のようになり、このことの意味が推察できます。

第1章 彗星の正体
第2章 地球大気への侵入
第3章 地球における生命の誕生
第4章 進化のメカニズム
第5章 宇宙からきた病原体
第6章 太陽系の生命探査
第7章 星を生み出すもの
第8章 宇宙の生命サイクル
第9章 宇宙塵がコントロールする宇宙
第10章 地球外知的生命体
第11章 コズミック・インテリジェンス

 「生命(DNA)は宇宙を流れる」第1章 彗星の正体

 いくらかの導入の知識が示されたあとに「彗星の構造の研究」についての歴史的な事実が述べられてゆきます。
 1835年に現れたハレー彗星の観察から、「固体粒子や何かの分子などが核から放出されて」「コマ(彗星の核の周りに広がる希薄な大気)として見えているのではないか」と推測されました。
 1864年「テンペル彗星の尾からの光を分光器にかけて、三つの弱い輝線スペクトルが見えることが発見され、これらは、炭素の二量体(C2)とシアノゲン((CN) 2)が存在することを示唆します。
 1866年、別の彗星についての、より詳しい観測により、他の輝線スペクトルの他に、「いろいろな波長が混ざった連続スペクトル」も見えることが発見されました。このような「連続スペクトル」は「何らかの物質によって太陽光が反射されていること」を意味します。こうして、「太陽光を反射するような固体の微粒子(ダスト)」も存在することが確認されました。
 ここからしばらくは「彗星の核のモデル」が議論されてゆきます。観測データも増えてゆき、このようなモデルも変化してゆきます。これらについての詳しい経過については省略して、決定的な発見につながった1986年のハレー彗星の観測について述べます。

 1986年のハレー彗星の接近に対して「ヨーロッパの探査機ジオットがハレー彗星のコマに突入し、核に大接近」しました。このとき撮影された画像により、「気化は核の全体で起きているのではなく、特定の場所でしか起きていない」ということが分かりました。さらにダストの隙間から核を観察することができ、「その表面が恐ろしく黒かった」ことや、彗星のダスト粒子の化学的な組成や、これらのダスト粒子の温度が50℃ぐらいであることが分かりました。
 フレッド・ホイル と チャンドラ・ウィクラマシンゲは、「ジオットの調査で明らかになったダスト粒子の大きさや密度が、凍結乾燥したバクテリアのそれに近い」ということに着目し、「彗星のダスト粒子の赤外線スペクトル」と「実験室で凍結乾燥させたバクテリアの赤外線スペクトル」とを調べ、これらが「酷似して」いることを見出しました。
 このとき、「凍結乾燥したバクテリアの他にも、さまざまな有機物を用いて同じ実験をした」ものの、他に「見事に一致する」ものは見いだせなかったそうです。
 このような科学的な推論により、彗星の核に含まれるダストの正体が凍結乾燥されたバクテリアであるという見解にたどりついたわけです。

 「生命(DNA)は宇宙を流れる」第2章 地球大気への侵入

 ここの章では、「彗星のダストが凍結乾燥したバクテリアである可能性が高い」との、ひかえめな表現からスタートしているものの、このようなモデルとして、そのバクテリアが地球の大気圏に突入し、「地上に軟着陸できる」かどうかについて考察しています。
 そのときの最も大きな問題は、地球大気との摩擦による熱の見積もりと、乾燥バクテリアの温度や熱に対する耐性についてです。この前半は推論ですが、後半は実験によって調べられています。それによると「乾燥したバクテリアは、700℃までの加熱にさえ、1秒どころか数秒間も耐えられる」ということが確認されました。この1秒という時間は、大気圏突入時に、バクテリアが熱にさらされる時間の見積もりだということです。彗星や隕石が地球大気圏に突入しても、バクテリアがいつまでも塊でくっついているのではなく、小さな粒子として拡散してしまえば、大気との摩擦はあまり生じないとも考えられます。

 この次の考察は、それでは地球の大気圏に、宇宙からやってきたと考えられるバクテリアが実際に存在するか、ということを調べることです。
 このような観測を実験的に行うとき、地球の地表近くにいるバクテリアが混入するという可能性をなくしておく必要があります。このため、「滅菌した気球のパッケージを十分な高度まで飛ばして」から測定し、それを固定するという手法がとられます。これが1960年代にアメリカの科学者たちがとった方法です。
 1970年代にソ連がとった方法は、成層圏の上の中間圏までロケットを打ち上げ、高度50キロメートル以上の高さで、パラシュートにくくりつけた検出装置を放出し、落下するにつれて、「次々にフィルムが露出され、粒子を付着させては密封」するというものです。
 アメリカの実験では「高度が高いほど多くのバクテリアがいる」という結果が出ました。
 ソ連の実験でも、成層圏より上の中間圏で多くのバクテリアの(培養)コロニーが確認されました。

 あと2つエピソードが語られます。その一つ目のエピソードとなる現象のキーワードは「氷晶核」です。よく似ていますが「水晶」ではなく「氷」の結「晶」の「核」です。これは、雨や雪の粒として水蒸気が集まるために必要な、小さな核となる固体粒子のことです。
 1965年に、オーストラリアの物理学者E・C・ボウエンによって、「雨雲の中の氷晶核の個数」と「流星群」とのあいだに「驚くべき相関関係があること」が発見されました。このとき、時間的なずれがあって、「流星群」があった日から、およそ4週間が経過した日に、「雨雲の中の氷晶核の個数」のピークがくるというものです。ボウエンは論文で「流星群期限のダストが大気圏の下層に落ちてきて氷晶核となり、ダストが大気に突入した日から数えて30日後に、特別激しい雨を降らせるという仮説がたてられるだろう」と説明し、@流星群のダストがなぜ氷晶核の形成において有能なのか、A雨になるまでの日数がなぜいつも一定なのか、という疑問を投げかけています。
 これに対して、ホイルらは、@について、人工雨の研究者から聞いた話として、「ヨウ化銀のような無機物よりもバクテリアのほうが、はるかに有能だ」という知識を添えています。そして、Aについては、「バクテリアの胞子の大きさ」が「種類を問わず1ミクロン前後である」ことから、大気中での落下時間がそろうのだと説明しています。

 もう一つのエピソードは1982年の発見で、南極海の上空7キロメートルまでのサンプルを集め、「そこに10種のバクテリアと31種の菌類の胞子を見つけた」ということです。そこで重要なことは、「南極海近くの土壌の表面および土中で観測されたものをはるかに上回っている」ということと、「雲の中」では「雲の外の大気中」の約10倍の密度で微生物が見つかったということです。
 さらに実験が続き、これらのバクテリアが宇宙からやってきたという仮説が、強く示唆されることになります。

 あとがき

 フレッド・ホイルとチャンドラ・ウィクラマシンゲによる「生命(DNA)は宇宙を流れる」の、全11章のうち、ここまででまだ2章にすぎませんが、ここのところが、もっとも科学的な検証に耐えうる部分です。
 この本の印象として記憶していた部分は、第一章にある、「彗星のダスト粒子の赤外線スペクトル」と「実験室で凍結乾燥させたバクテリアの赤外線スペクトル」とが「酷似して」いるというところでした。この本には、その解析図([1] p24, 図1-2)も載っています。上下に誤差の範囲を見込んだ縦線のプロットが「ハレー彗星」についての観測値で、実線としてつながっている曲線が「320°K(47℃)での乾燥バクテリア」についての実験値です。曲線が縦線の中心あたりを見事になぞっています。
 今回ゆっくり読んでみて、このあたりの他の知識も、しっかりとした科学知識となるものだと分かりました。
 ライアル・ワトソンという研究者が、これらの内容を引用するのは、ごくごく当然のことだと理解できます。
 「生命(DNA)は宇宙を流れる」の本はまだ9章分も残っていますが、全部要約してしまうと、この本に対して失礼だし、ほかにもリーフページとして取り上げたいテーマがたくさんありますので、今回は、ここのところで止めておくことにします。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, April 13, 2016)

 参照資料

[1] 「生命(DNA)は宇宙を流れる」、フレッド・ホイル & チャンドラ・ウィクラマシンゲ(著)、茂木健一郎(監修)、小沢元彦(訳)、徳間書店(刊)1998
[2] 「生命潮流」, Lifetide, 来たるべきものの予感、ライアル・ワトソン(Lyall WATSON)(著)、木幡和枝 & 村田恵子 & 中野恵津子(訳)、工作舎(刊)1981

 

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