健康になるには、もっと食物繊維を

黒月樹人(◇田中タケシ)@黒月解析研究所

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 あなたはあなたの微生物が食べたものでできている

 これは「あなたの体は9割が細菌」[10] の第6章のタイトルです。
 これはパロディのような文章で、そのもととなったフレーズは「あなたはあなたが食べたものでできている」だと思われます。
 「あなたがたべたもの」は、英語で、What you eat(あるいは ate)となり、全文を訳してみると、You are from what you eat. 違うかもしれませんが、まあ、こんな感じです。
 ところが、ここでは、「あなた」と「食べ物」の間に、もうひとつ、「微生物」という要素が入ってきます。
 このような関係を理解するため、この本 [10] の第6章では、ヒルとチスイコウモリとパンダについてのエピソードが語られています。

 ヒルとチスイコウモリと微生物

 チスイコウモリには出会ったことはありませんが、ヒルには、昨年、さんざん血を吸われたことがあります。
 木々の苗やコケを求めて、鈴鹿山系の山道を登っていたときのことです。ちょうど、その前日にたっぷり雨が降っていて、谷筋は湿気が満ちていました。
 かすかな違和感があって、ズボンをすこし手繰り上げると、ふくらはぎのところにヒルがついていて、皮膚に食い込んで、血を吸っていました。
 小さなものでしたので、手でこすり落としましたが、その後も、少し歩くたびに、新たなヒルが靴に飛び移り、するするとすねを登って、こっそり吸いついてきました。
 コケを探すのはあきらめて下山しましたが、くさむらではなく、土の道を歩いているのに、しばらくすると、また吸いつかれています。
 飛び移られる瞬間は見ていませんが、ずうっと動き回っているのに、いつのまにか、吸いつかれているのです。
 ヒルに血を吸われた傷口では、血液が凝固しないので、血が止まりません。
 ちょっとしたホラーでした。
 ここまでは私の体験ですが、この本 [10] によると、ヒルが吸う血という食材については、「鉄分が多く(そのため金属味がする)、蛋白質も含んでいるが、炭水化物や脂肪、ビタミン、ミネラルはほとんど含まれていない」([10] p203)と評価されています。
 つまり、「血」というものは、食べ物としては、不完全栄養食なのです。
 それなのに、ヒルやチスイコウモリは、それがまるで完全栄養食であるかのように、せっせとそれだけを求めて、生きてゆきます。
 この本を読むまで、私は、血が完全栄養食であると思っていました。
 だからこそ、ヒルだけでなく、吸血鬼のような存在(ほんとうにいたかどうかは、さておき)が語られてきたのだと。
 あるいは、母乳というものの主原料が血液だということも知っていました。赤ちゃんにとって母乳は完全栄養食です。
 だから、その原料としての血液も、完全栄養食なのだろうと、考えてしまっていたのです。
 ところが、血は不完全栄養食でした。
 でも、ヒルたちは、血が完全栄養食であるかのように、せっせと血を吸おうとしています。
 このような「謎」を解き明かすのが、ヒルたちの身体の中にいる微生物なのだ、そうです。
 ヒルは、体内の微生物のために血を吸い、その微生物が血を完全栄養食へと変換し、それをまるごとヒルが利用するということです。

 ジャイアントパンダと微生物

 ジャイアントパンダが食べているのは、竹や笹です。
 これらも、私たち(雑食性の哺乳類である人間)から見ると、まったく、不完全食品そのものです。
 「カスミを食って生きる仙人」というほどでなくても、中国や日本には、あらゆるところに生えている、竹や笹だけを食べて生きてゆけるなんて、まさに「仙人のよう」です。
 ジャイアントパンダは「食肉目(ネコ目)クマ科に属する動物」([10] p203)です。
 「食肉目」なのに、肉を食べずに、植物を食べるのです。
 哺乳類の中には、ウシやヒツジのような草食動物がいますが、それらには「複雑で長い消化管」([10] p203)があるけれど、ジャイアントパンダにはありません。
 この「謎」も、ジャイアントパンダの腸内細菌叢([1]では、マイクロバイオームと表記されています)を調べることによって明らかになりました。
 パンダのうんちを嫌気性微生物が増殖できる装置で培養し、その主要な微生物の遺伝子を調べたところ、「セルロースを分解する遺伝子が見つかった」([10] p204)のだそうです。
 これは「ウシやワラビー、シロアリなど、草食動物のマイクロバイオームに見られる遺伝子」([10] p204)なのだそうです。
 パンダは遺伝子ぐるみ、身体は肉食動物(あるいは雑食動物)ですが、実態は、かんぜんな草食動物となっています。そのような変化をもたらしたものは、パンダの腸に共生している微生物だったというわけです。

 ブルキナファソの子どもとイタリアの子ども、と微生物

 このテーマへと移る前に、少し、栄養学についての問題点が取りあげられています。
 それは、現代人の食事に問題があって、アレルギー疾患などの21世紀病が起こっているらしいということから、そのような現代病が存在していなかったころの食事との比較をしようというものです。
 その、古い時代の人類の食事を、今でも続けているサンプルとして、ブルキナファソの(ボウルポンという村の)子どもが選ばれました。
 現代人の食事を行っているほうのサンプルは、イタリアの(都市のフィレンツェに住む)子どもだそうです。

 ネットで調べたところ、ブルキナファソは西アフリカの共和国です。ボウルポンという村までは、ちょっと検索できそうもありません。
 この本 [10] によれば、「ボウルポンの人々の暮らしは、およそ1万年前の新石器革命直後に出現した、自給農民の暮らしと、それほど変わらない」([10] p207)とあります。

 食事内容について、この本 [10] から拾い上げると、次のようになります。

 (1) ボウルポンの村民が食べているもの
 アワやモロコシの雑穀を粉にして粥にし、地元で育てた野菜のソースをかける。
 ときおり、ニワトリを殺す
(そして、食べる)。
 雨季にはシロアリがご馳走になることもある。([10] p207)

 (2) イタリアの子どもが食べているもの
 ピザ、パスタ、たくさんの肉とチーズ、アイスクリーム、ソフトドリンク、朝食シリアル、スナック菓子([10] p207)

 「この二集団の子どもの腸内微生物」([10] p208)というフレーズで、(うんちを嫌気性微生物培養装置で培養し、遺伝子検査にかけるといった)間に行われたことが、一気に割愛されて、その調査結果が述べられてゆきます。
 その結論は、かんたんに述べると、「腸内微生物の組成比が違った」([10] p208)ということです。
 ここのところは、もっと詳しくのべてゆくと、生物学の専門家以外は、何がなんだか分からなくなってしまうことでしょう。
 とりあえず、その部分を引用すると、次のような違いです。

 イタリアの子どもにはフィルミクテス門の細菌が多く、ブルキナファソの子どもにはバクテロイデーテス門の細菌が多かった。([10] p208)

 このあとに、さらに詳しい説明があるのですが、これらを読んだところで、生物学の専門家以外は、きっと、その内容の意味がつかめないだろうと思われます。
 実は私は大学を理学部の生物学科で卒業しているのですが、それでも、こんな分類用語は、ちんぷんかんぷんです。

 これらの微生物の門(おおまかな分類)の違いについて補足されているところがあります。
 そこを直訳したものを引用すると、また、むつかしくなりますので、さらに意訳します。

 女性科学者のルース・レイは、ヒトの肥満者に、バクテロイデーテス門の細菌より、フィルミクテス門の細菌が多いことを発見した。([10] p208より意訳)

 つまり、イタリアの子どもの腸内細菌は、(まだ肥満に至っていないのでしょうが)肥満者の腸内細菌とよく似ていた、ということです。

 このあと、ルース・レイの、さらなる実験について、詳しく説明されていますが、これについての説明は割愛します。

 ブルキナファソの子どもは食物繊維をたくさん摂っている

 少し戻りますが、著者は次のように語っています。

 過体重と肥満は、関節炎から糖尿病まで、あらゆる病気を悪化させるうえ、心臓病、脳卒中、糖尿病、ガンといった、死につながる病気の原因となっている。([10] p206)

 さらに、次のような表現もあります。

 過体重と肥満は、パンデミックと呼ぶにふさわしいほど、世界中で増え続けている。([10] p206)

 その原因や理由を突き詰めようとしている著者がとりあげているのが、腸内細菌の違いです。
 将来大人になって、イタリアの子どもも、パンデミックの中に組み込まれ、太って、やがて、いろいろな病気になってゆく、ということが、腸内細菌の違いから「予言」されているわけです。
 イタリアの子どもというのは、ヨーロッパの子どもの代表であり、アメリカや、そして日本も含まれる、西洋文明食の世界の子どもの代表でもあるわけです。
 日本人の大人も子どもも、その多くは、イタリアの子どもと同じような食生活をしています。

 そこで、このパンデミックから逃れる手がかりとなる、ブルキナファソの子どもたちのような、肥満につながらない腸内細菌は、どのようにして得られるのか。
 その一つの手がかりについて述べられているところがありますので、引用します。

 2地域の子どもの食事をあらためて比べてみると、摂取量が明らかに違う栄養素が見つかる。それは食物繊維だ。([10] p214)

 これが記されているページの、もう少し後に、ちょっと重要な知識が、さらりと、専門用語を交えて記されています。生物学の専門用語です。
 これを、そのまま引用すると、微生物の名まえの意味がつかめないため、ピンとこないと思われますので、大胆に意訳して説明します。

 ブルキナファソの子どもたちの腸内細菌の遺伝子解析をしたところ、植物の細胞壁を形成しているキシランとセルロースを分解する遺伝子が見つかったのです。([10] p214より意訳)

 これはどういうことかというと、ブルキナファソの子どもたちは、パンダと同じように、食物繊維を分解して栄養に変える遺伝子をもった細菌を、腸内細菌としてもっているということです。
 このタイプの細菌は、イタリアの子どもの腸内からは見つからなかったそうです。

 まとめると、ブルキナファソの子どもたちのように、食物繊維の豊富な、穀物や豆類を食べて、腸内細菌を変えれば、それらの食物繊維から分解された栄養が吸収できるようになり、しかも、パンデミックともいわれる肥満におちいらず、(死につながるような)かずかずの現代病へと進んでゆかないようになるかもしれない、ということでしょうか。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, April 9, 2017)

 参照資料

[1]「長生きしたけりゃ パンは食べるな」、フォーブス 弥生(著)、稲島 司(監修)、SBクリエイティブ株式会社(刊)2016-11-15
[2]「いつものパン」があなたを殺す、Grain Brain、デイビッド・パールマター&クリスティン・ロバーグ(著)、白澤卓二(訳)、三笠書房(刊)2015年1月
[3] 「小麦は食べるな!」 原題WHEAT BELLY(小麦腹)、Dr. ウイリアム・デイビス(著)、白澤卓二(訳)、日本文芸社(刊)2013-7-10
[4] 「白米中毒」、白澤卓二(著)、アスペクト(刊)2013年2月5日
[5] 「食べ物を変えれば脳が変わる」、生田 哲(著)、株式会社PHP研究所(刊)2008-10-29
[6] 「薬をやめれば病気は治る」、岡本 裕(著)、株式会社幻冬舎(刊)2013-3-30
[7] 「ガンを消す食事 完全レシピ166」、済陽高穂(監修)、主婦と生活社(刊), 2014-2-3
[8] 「日本人だけ なぜ、がんで命を落とす人が 増え続けるのか」、済陽高穂(著)、主婦と生活社(刊)、2007年12月31日
[9] 「がん患者は玄米を食べなさい」、伊藤悦男(著)、現代書林(刊)、2009年3月16日 [10] 「あなたの体は9割が細菌」 原タイトル10% HUMAN、アランナ・コリン(著)、矢野真知子(訳)、河出書房新社(刊)、2016-8-30
[11] 「植物は気づいている」、バクスター氏の不思議な実験、クリーヴ・バクスター(著)、穂積由利子(訳)、日本教文社(刊)、平成17(西暦2005年)年7月20日
[12] 「うつ」は食べ物が原因だった! 溝口 徹(著)、青春出版社(刊)、2009-6-15

 

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