RaN367 ソマチットはどこにいるのか
Where is the somatid ?

黒月樹人(◇田中タケシ)@黒月解析研究所

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 ソマチットはどこにいるのか

 この問いの基本的な回答としては「血液の血漿の中」が思い浮かぶかもしれません。
 あるいは「古代の貝化石の中」というのが、すでに商品化されているものについての、キャッチフレーズかもしれません。
 しかし、それらはいずれも、他の人が語っていることです。
 ここまで私は、科学画像を対象とした解析ソフトのゴブリンアートを開発しながら、ウェブの世界にある、いろいろな画像を調べてきました。
 それらの画像についての信ぴょう性を疑うわけではありませんが、他の人が撮影した画像では、そのときの条件も不明ですし、ウェブの世界に現れるため、画像がジェーペグ化されてしまっており、げんみつにいえば、画像の情報が欠損していることになります。
 その画像のままですと、おおきな違いは見えてきませんが、その一部を拡大し、さらに、とくしゅな解析をおこなってゆくと、ジェーペグ化のための四角いパターンが影響し始めるのです。
 また、画像をウェブにあげるとき、もとの画像をそのままのサイズで使うケースは、ほとんどありません。たいていは縮小されてしまいます。
 もとの原画像なら1000万画素あるいは何百万画素もあるはずです。
 それらを直接調べることができたら、もっと詳しいことが分かるはず。
 このような思いがつのって、私は光学顕微鏡を入手することにしました。

 光学顕微鏡のこと

 ずうっと昔のことですが、私は理科の先生でしたし、その前は理学部の生物学科にいたので、光学顕微鏡を使っていました。しかし、梱包されて届いた顕微鏡の部品を取り出して組み立てるという段になって、対物レンズや接眼レンズをはめたあと、絞りの部品の取り付け方と、いっしょに買ったデジタルカメラの取り付け方が分かりません。
 この顕微鏡は米国製(ただしMade in China)で、かんたんな説明書のパンフレットは全文英語でした。英語が読めないわけではありませんが、どうやら、基本的なことしか記されていないようです。組み立て完成画像や図のようなものも見当たりません。
 この問題は、メーカー [1] に質問メールして、参照資料などを送ってもらって解決しました。
 この顕微鏡は、通常の光学顕微鏡と暗視野顕微鏡をかねたものです。暗視野顕微鏡のモードとするには、絞りの部品を取り換えます。すこし試してみましたが、ウェブで公開されているもののレベルで撮影することは、まだできていません。
 光源は内臓ライトですが、青色フィルターをかぶせることより、赤みが抑えられて、より自然な色合いになりました。
 このときの顕微鏡用デジタルカメラは、撮影した画像データを内部メモリーに記録するものではなく、コードでコンピュータに移して、同封のソフトで記録してゆくものです。
 このソフトの表記は、さすがに日本語化されていましたが、いろいろな機能の意味が分からないこともあり、まだ、うまくあやつれません。
 しかし、ジェーペグ化しないで、直接ビットマップ画像として記録できます。
 取り込み時の最大画素は、およそ1000万画素です。
 ゴブリンアートでは1600×960=1536000 [画素] を大きなサイズの標準としていますから、1000万画素の画像は、ウインドウズOSのペイントソフトで取り込んで、その一部を切り取って、保存して使います。

 藻を観察すると

 次の図1は、光学顕微鏡が届いて、あれやこれやとなんぎして組み立て、ようやく何か見ることができるとなって、黒月解析研究所(実はただの古い町家)の研究室(うなぎの寝床のような敷地の奥にある「離れ」)から中庭を見て、そこにある池から、ではなく、その近くに置いてあった、メダカの稚魚を育てるための水槽から、ピンセットで、細い髪の毛のような藻をつまみあげて、ホールスライドガラスに入れ、(まだピペットがなかったので)指先に水滴をつけて、浸し、カバーガラスをかけて観察したものです。おそらく、対物レンズx40のものと考えられます。(まだ記録をきちんととっていませんでした)
 光学顕微鏡では、対物レンズx40と接眼レンズx10で400倍の画像として見ますが、デジタルカメラで撮影するときは、対物レンズで拡大した像を記録しているようなので、どれだけの画素で記録するかが問題となります。
 たとえば、接眼レンズで見ているときの画像を仮に500画素×200画素として10万画素とみなせば(この値の根拠はないのですが)、1000万画素は、その100倍ですから、得られた画像は400×100=40000倍となります。まあ、これくらいかもしれません。
 おおよそですが、1000万画素で記録したときは、x1000の接眼レンズで見ていることになります。
 ただし、この倍率と、分解能は違ってきます。分解能がどれくらいになるかということは、まだよく分かりません。
 これはランソウの一種だと思われますが、正式な名称は同定できていません。

図1 2017-10-09 010A(010画像からのカットA)

 実は、このランソウという、ひとつの筒のような細胞の中にある、小さな粒子が、ぶるぶると動いていたのです。他のランソウや、このランソウのべつのあたりの粒子では、ほとんど動いていないのに、ここのあたりの粒子は「押すな押すな」状態でした。
 ブラウン運動という現象があるそうですが、そのときの動きは、ビリヤードの球があちこちにぶつかって跳ね返るようなものとみなされます。
 以前見た、ウェブでの「アメーバの運動」では、内部の粒子が「おれ先」といわんばかりに、すいすいと、他の粒子の間を動いていました。
 このような動きをブラウン運動で説明しようというのは、ピント外れです。数学的な説明ができるような動きではありません。

 あまりうまく撮影できた画像ではありませんが、これらの動く粒子について拡大し、解析することにしました。

図2 010A[4]A(図1の[4]倍拡大のA)

図3 010A[4]A[4]A(図2のさらに[4]倍拡大のA)
(図2の右上でいちばん強く光っている粒子を中心にした[4]倍拡大)

図4 010A[4]A[4]A_Ghost(L)(116-196)gost(図3のゴースト解析)
(画像をクリック → 解析原画像へ)

 ゴースト解析というのは、ゴブリンアートの新しい解析法で、色加味解析をベースとして、ある濃淡値範囲だけくっきりとさせ、他の範囲をぼんやりとさせるものです。
 図3で粒子として見えていた部分の中心に、少し丸い状態ですが、ソマチットらしいパターンがあります。

 ミジンコがランソウについてきた

 2日後の2017-10-11にも、ゴブリンアートのプログラム編集の仕事が一段落したあと、庭に出て、水槽からランソウをつまみあげて観察することにしました。
 すると、そのランソウといっしょに、ミジンコが一匹やってきたようです。
 ホールスライドガラスでしたが、それでもきゅうくつらしく、身動きができない状態でした。ただし、押しつぶされてはいず、ときどき脚や内臓を動かしています。

図5 2017-10-11(対物レンズx4) 001A(001画像からのカットA)

 撮影したときの画像では、ミジンコは下を向いていましたが、ペイントソフトで90度左回転させてから、適度に切り取ったものが図5です。
 このページにおさめるため、それなりに縮小してあります。
 くわしく同定していませんが(資料がそろっていないので、できませんが)、ごくふつうのミジンコのようです。
 この日から、光源には青いフィルターをかけてあります。また、画像を記録するとき、ホワイトバランスをきちんととって、露出時間も調整して撮影しました。

 次の図6は、レンズをx10に換えて、頭部あたりを撮影したあと、尾部を撮影したものです。この008画像は、ここにおさめるため縮小していますが、もともとは1000万画素のものです。
 右のほうに、ヘビのように見えているのが、おそらく腸ですが、それらから離れて、この画像中央のやや下のあたりに、強く光る小さな粒子があります。それを観察するため、この原画像から切り取ったのが図7で、それをゴブリンアートに取り込んで、小粒子を入れて[4]倍に拡大したのが図8です。

図6 2017-10-11(対物レンズx10) 008(008画像)

図7 008A(008画像のカットA)

図8 008A[4]A(008A画像の[4]倍A)

 008画像(の原画像)で対物x10接眼×1000として、およそ1万倍ですが、ここで[4]倍しているので、図8は(計算上の形式的なものですが)4万倍となります。
 ここまでくると、光の性質や、見るほうの目の問題で、分解能に制限がかかってしまいます。
 ここが、これまでの(常識としての)限界点でした。
 ところが、光と目にまつわる分解能の問題も、これまで区別できなかった、光のかすかな値の違いを、目が識別できる、別の(濃さの)色で表現することにより、「分解能」のようなものを、さらに上げることができるのです。
 次の図9は、上記の図8について、ゴブリンアートで解析したものです。
 このような、「分解能」(のようなもの)を高める解析法として、色加味解析やストライプ解析を生み出していましたが、ゴースト解析は、その色加味解析をベースとしたものです。

図9 08A[4]A_Ghost(L)(191-255)elf
(画像をクリック → 解析原画像へ)

 図8で強く光っている粒子は、図9において、ソマチットパターンとなっています。
 おそらく、ソマチットと考えられます。
 最近ふと思ったのですが、このような写真画像を解析して、ソマチットパターンを調べるというのは、考古学者が石の中から化石を見つけて、それが、どのような生物の化石なのかを調べることに似ています。ここ最近の技術によって、炭素などの同位体を調べて、生物由来かどうかを判定するということもできるようですが、基本は、「形」を調べるということです。
 ゴブリンアートも、色は勝手につけているので、判定のための「手がかり」は「形」だけです。かすかなグラデーションの違いを「形」として見るわけです。

 プランクトンを観察していると

 図10は2017-10-14(対物レンズx4)の6回目の撮影画像(1000万画素のもの)です。この日採取したのは、金魚とフナを入れてある池に沈めてある、穴あきコンクリートブロックにくっついている、藻のあたりを、スポイトで吸い込んだものです。金魚たちが、そのあたりを、もぐもぐしているのを見ていたので、餌となるプランクトンがいそうだと思ったからです。
 中央に緑色したプランクトンがいますが、図鑑を調べると、ウチワヒゲムシ属のエナガウチワヒゲムシ(オナガウチワビムシ)と分かりました。中央の丸いものは「パラミロン体」というそうです。その右にある赤いものが、ミドリムシで有名な「眼点」のようです。
 その左上にある、丸いプランクトンの名前は分かりません。くるくると回っていたかと思うと、とつぜん形を変えて、中に漏斗状の空洞を作ります。アメーバの一種かなあとも思いますが、くわしい資料がないので調べられません。
 今回解析するのは、これらのプランクトンではなく、右上の水の中にある、2つの光る粒子です。

図10 2017-10-14(対物レンズx4) 06(6回目の撮影画像)

図11 06A(06画像のカットA)

図12 (図11の)[4]倍拡大のA code=06A[4]A

図13 (図11の)[4]倍拡大のB code=06A[4]B

 これらの図12と図13について、ゴブリンアートで、ゴースト解析したものが、次の図14と図15です。
 中心にやはり、ソマチットパターンが見られます。
 図14で言えば、その周囲に、水色で取り囲む領域があります。これは光のハローのようなものかとも思いましたが、図15を見ると、欠損部分もあり、ハローとしての広がり方ではないようです。
 ソマチットが周囲に作る緩衝領域のようなものかもしれません。

図14 06A[4]A_Ghost(J)(0-256)ghost
(画像をクリック → 解析原画像へ)

図15 06A[4]B_Ghost(J)(0-256)ghost
(画像をクリック → 解析原画像へ)

 まとめ

 今回解析した、光る小粒子がソマチットなのかどうかは、まだはっきりと確定することはできません。
 そもそも、ソマチットというものが、いったい何であるか、ということが分かっていないからです。

 生物の体の中や、外の水の中に、光る粒子があって、それらを解析すると、ソマチットパターンが認められるということは、分かってきました。
 これまでの観察では、このような光る小粒子が記録されていたとしても、それは何らかの無機的な粒子だろうと思い込んで、きっと無視してきたことでしょう。

 ガストン・ネサンは血液の血漿の中で動く粒子を観察して、これは生きているものだとみなし、ソマチットと名づけました。
 今回観察した、(1)ランソウ細胞の中の粒子、(2)ミジンコの体内の粒子、(3)水中の粒子、のうち、(1)は確実に動いていました。
 (2)と(3)の「形」としての解析パターンは、ソマチットパターンとして認められるものでした。

 これらの光る粒子のサイズは、これまで言い伝えられていたほど小さくありません。
 ガストン・ネサンが開発したソマトスコープでなくても見ることができます。
 最新のデジタルカメラで撮影できるなら、対物レンズはx10やx40くらいでじゅうぶんです。X100のレンズでも撮影しましたが、分解能の「壁」に近づきすぎて、あまり、見やすいものとはなりませんでした。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, October 18, 2017)

 参照資料

[1] 誠報堂科学館
   https://microscope.seihodo.jp/

 

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