ローレンツ不変性はローレンツ変換だけでは生み出せない

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 ローレンツ不変性

 10年も前から、この言葉に惑わされてきました。
 この言葉は、ガリレイ不変性と対応づけられています。これらの不変性についての謎を明らかにしようとして生み出してしまったのが「幽霊変換」という解析ページでした。
 むつかしいことや間違っていたことは忘れてしまいましょう。
 でも、アインシュタインの特殊相対性理論の、枠組みとか青写真のような、内部の細かな計算のプロセスとは違った、もっと鳥瞰的な視点で考えようとするときには、ローレンツ不変性は、忘れるわけにはいかないことです。
 時空の性質が異なっているということになっている、定常系(静止系)と運動系において、ローレンツ変換を行ったとき、対象としている物理現象の「式や物理量が全く同じである」ときが「ローレンツ不変」だそうです。これに対して、「式や物理量がその形のみを変えない」ときは「ローレンツ共変」というのだそうです。
 アインシュタインの特殊相対性理論の「T. 運動学の部」については、隅から隅まで読み込んで、失敗も含めて、たっぷりと数値計算した紙束を横目に見て、その次のページから始まる「U. 電気力学の部」のところは、これまで1ページも読んでいないことが気にかかりました。
 こちらは読まなくてもよいのだろうか。
 大部分の解説書は「T. 運動学の部」のところの、長さや時間の収縮、光を越えない速度の公式などのことをとりあげています。
 「U. 電気力学の部」のところにある、マクスウェル理論や電磁気理論などは、ほとんど取り上げられていません。
 ここで、10年前に確認したことがあったものの、それっきり見なかった解析ページに、マクスウェル理論のことが取り上げられていたということを思い出しました。

 マクスウェル方程式におけるローレンツ変換不変性証明の発見

 杉岡幹生という人が「マクスウェル方程式がローレンツ変換で変換されていない」ということを主張していたはずです。この程度の情報で調べても、かんたんにヒットしました。
 「マクスウェル方程式におけるローレンツ変換不変性証明の発見」 [4]
 この解析ページは2002年5月17日にウェブにあげられているということです。
 私がホームページを立ちあげたのが2007年あたりで、誤りの「幽霊変換」ほか、アインシュタインの特殊相対性理論にかかわる、いろいろな資料を探し、英文なら、ためらわずに翻訳し、せっせせっせと、キメラミームのブランチページの葉っぱ(リーフページ)を増やしていたのが2008年のことでした。
 そのころ見たのと同じスタイルで、2018年の今でも、杉岡さんのページは存在していました。
 最近のアインシュタイン批判の解析ページは、数式なども図で作って組み込んでいるし、分かりやすい図が生み出されていて、読むというより、眺めてゆく、といったスタイルになっています。
 2008年ごろの私のページも、原則としては、読んでもらう、というものでした。
 杉岡さんのページも、そのようなスタイルですが、少し特徴的なのが、重要な部分の説明文に色が付けてあることです。
 あと、ちょっとしたクセのようなものですが、2乗を表すのに、記号の ^ を使っているということです。htmlの文法を少し知っていれば、上付文字や下付文字(添え字)など、かんたんなのですが、2002年だと、まだ、そのような知識は広まっていなかったかもしれません。
 ウェブで直接読もうとしても、文字が細かいことと、行間が詰まりすぎていることと、数式の表現にクセがあることなどが影響して、読もうとしても、いっこうに進みません。
 そこで、印刷して、ゆっくり読むことにしました。
 内容については、すぐに分かったというわけではありません。しかし、問題となっているのが、砂川重信氏の「相対性理論の考え方」(岩波書店)にあるということは読みとれます。
 さっそく、図書館へ行って、この本を借りてきました。このとき、同氏の「理論電磁気学」(紀伊国屋書店)と、牟田泰三(著)「岩波講座 現代の物理学 2 電磁力学」(岩波書店)も借りました。

 砂川重信(著)「相対性理論の考え方」(岩波書店)

 この本の「6 マクスウェルの方程式の共変性」というところが、杉岡さんが問題とするところです。
 この本はB5サイズですが、左1/3は、注釈などのために空けてあり、右2/3だけで、縦長に説明や数式が示されてゆきます。これはけっこう読みやすいスタイルです。もともと学生相手の授業のテキストとして作られたものらしく、章の最後に演習問題があります。この本の巻末にその解答もあるので、学習するにはもってこいです。
 A4の用紙を2枚縦長に糊付けしたものをノート代わりにして、重要な数式などを、手書きで書き込み、必要な式の変形などを自分で行いながら、半日もかからずに、ここのところを読み切ってしまいました。
 なるほど、杉岡さんが批判するとおりだ。大学生に教えるのに、このやり方はないだろう。
 確かではないことを仮定しているだけであるのに、あたかも当然のこととして成立するかのように使って、ローレンツ変換を行ったあと、電荷量の不変性や、電荷保存則の共変性、電磁ポテンシャルの共変性、波動方程式の共変性が、うまくいったから、これで「示された」とくくっている。
 「示す」ために必要な変換式が最後に分かるのを、さいしょのところで仮定として提示しておく。それを使えば、最後の難所はらくらくクリアーできる。論理がつながって、これで「示された」と騙されてしまう。
 これは映画でよくやる「伏線」のパクリだ。
 電場と磁場の変換性のところでは、論じるスタイルを変えて、これらのトリックの種明かしをしようというのか、電場と磁場の共変性が成立するための、電場と磁場の変換式が、どのように導けるのかを説明している。ここのところの方法は、まさに、アインシュタインが「U. 電気力学の部」の§6で行ったことと同じであった。
 ノートをとりながら読み進んでいったので、よく分かった。
 この本のここのところを読んでおいたので、アインシュタインの特殊相対性理論の「U. 電気力学の部」の§6を読みこむことができた。

 砂川重信(著)「理論電磁気学」(紀伊国屋書店)

 この本の該当箇所は、ノートをつくる必要もなかった。
 上記の本で学習したので、この本で行われているトリックが、ただちに読み取れた。
 たとえば、「電流密度と電荷密度の変換は (数式が示されて)(2.6) で与えられるものとする」とあるが、この式は証明されていない。
 おっと、その前のところにも、「Lorentz変換にともなって、DHとが次のように変換するものとする (2.5) 」となっている。これも証明も観測もされていない、勝手につくった「つなぎの変換」でしかない。
 そうして、何が行われたのか分からないまま、数ページ先で、「…Maxwellの方程式 (2.13) が正確になりたつことが証明された」とされる。
 ここでの論理は「証明ではない」のだから、このような記述をするというのは、大きな問題を生むことになる。
 私たちがウェブで勝手なことを書いたりしているのとはわけが違う。
 本にして売っているし、対価を受け取って教えているはずだ。

 牟田泰三(著)「岩波講座 現代の物理学 2 電磁力学」(岩波書店)

 この本では、ポアンカレがダランベルシアンを使って、未定係数法でローンツ変換の公式群を導くところを(2008年に)学んだ。
 今回は、Maxwell方程式の、いろいろな表現の仕方を、基礎的な項目から学ぶことができた。電磁場のポテンシャルで表現することや、ゲージ不変性という視点で、それらをもっとシンプルな表現にすることも分かった。ここまでやって、ようやく、Maxwell の方程式がダランベルシアンで表現できるわけだ。
 ところで、この本では、上記の「つなぎの変換」について、どのように説明しているかを調べた。
 「ポテンシャルΦとAは、Lorentz変換 (7.17) の下で、変換則 (7.21) に従うものとしてみよう。」とあって、(7.21) の数式も表記され、Maxwell 方程式の一つが運動系で、もとの静止系でのものと同じスタイルとして表記される。
 このあとの一言がひどい。
 「式 (7.21) もLorentz 変換(ポテンシャルに対する)という。」
 これでは、証明も観測もされていない「つなぎの変換 (7.21) 」も、Lorentz 変換と同格ということになってしまって、証明されたかのように言いくるめられてしまうことだろう。
 その同じページの下の方に、もう一つの「つなぎ変換」についての説明がある。
 電荷と電流がある場合のMaxwell 方程式が示され、このときの「拡張は容易である」とされる。なぜか。
 「この方程式がLorentz 不変であるためには、電荷密度ρと電流密度 j も、ΦやA と同じように変換しなければならない、その変換は (7.26) であればよいことは明らかである。」
 このあとの一言もひどい。
 「式 (7.26) もLorentz 変換という。」
 考えてみれば、Lorentz 変換も、それが証明されたとされているが、その方法は決して論理的なものではない。
 しかし、「ポテンシャルΦとAのつなぎの変換」と「電荷密度ρと電流密度 jのつなぎの変換」は、いずれも、このように変換できれば、ミッシングリングがつながるから、これを使うことにしておこう、というくらいの、まったく何の証明もなく、ただ単に好都合だというだけで、作られたものである。
 そんなことが、まかり通ってゆくのが、現代物理学という世界なのだろうか。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, Aug 9, 2018)

 追記 途中から感情的になっていったらしく、文体が変わってしまいました。ちよっと読み返してみましたが、これを直すことはしないことにしました。悪しからず。

 参照資料

[1] 砂川重信(著)「相対性理論の考え方」(岩波書店)
[2] 砂川重信(著)「理論電磁気学」(紀伊国屋書店)
[3] 牟田泰三(著)「岩波講座 現代の物理学 2 電磁力学」(岩波書店)
[4] 「マクスウェル方程式におけるローレンツ変換不変性証明の発見」

 

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