RaN377 ダントツ長野県のデータを無視して意味のある解析はできない

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 みんなのカーライフの解析グラフ

 みんなのカーライフ ブログ 横断歩行者妨害 検挙数と停止率の関係[2] に次の解析グラフが掲載されている。

図1 みんなのカーライフの解析グラフ

 JAFのサイトページ[1] に次の図2の一覧表がある。
 これを見ると、なんといっても、全国のベストワンは長野県である。
 しかし、上の図1には、この長野県のデータがない。
 ここに大きな問題がある。

図2  信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止率

 ダントツ長野県のデータを無視して意味のある解析はできない

 図1の解析グラフと、その解説を読むと、このときの横軸の指標「取り締まり件数」と、縦軸の指標「横断歩道 停止率」とは、強い相関をもっているかのように思えてしまうかもしれない。
 しかし、このような統計解析では、「横断歩道 停止率」のベストワンである長野県の「取り締まり件数」の数値によるプロットの位置がどこにあるかで、相関係数の値が大きく異なってしまう。
 数学的な統計処理を甘く見てはいけない。
 このことを直感的に読み取った私は、警察のルートをたどって、長野県のデータを知ろうとしたのだが、説明不足のため、具体的に必要な指標(「取り締まり件数」)を指定することを忘れてしまった。
 そのため長野県警の応答は、まさに儀礼的な表現のものでしかなかった。
 その後、このようなデータはインターネットで公開されているのではないかと気づき、さっそく調べてみた。
 滋賀の交通H29(2017)/滋賀県警察の広場[4]によれば、H29年度では「歩行者妨害665」の違反検挙数である。
 長野県 平成29年交通統計[5] には、いろいろな統計が並べられていて、その中に第6交通指導取締状況(PDF:229KB)[6] がある。ここに「(3)主要違反取締検挙状況の推移(件数)」の表があり、「歩行者妨害」について、平成25年から平成29年までの、年間取締件数が示されている。順に、1578, 1760, 1526, 1764, 2272(H29) となっている。
 滋賀県の665件と長野県の2272件を、そのまま比較する前に、何らかの正規化を行う必要がある。同じサイトに、人口、車の台数、免許人口などが示されていたので、この時の解析に見合うものとして、免許人口を使って正規化することにした。
 免許人口は、滋賀県が961,249であり、長野県が1,486,221である。滋賀県の値で長野県の値を割ると、1.55 となる。
 長野県の2272の値をこの1.55で割ると、1466となる。滋賀県の665と比較するための正規化された値は、この1466である。
 1466を665で割ると2.20である。つまり、長野県では滋賀県の2.20倍、横断歩道での歩行者妨害違反を検挙したということになる。
 ここで、この値を使って、図1に長野県をプロットしてみよう。

図3 長野県のデータを入れた解析グラフ

 統計的な処理をするまでもなく、この図3の解析グラフでは、横軸と縦軸に強い(正の)相関は見られない。

 [検証] 図1や図3で、滋賀県のプロット位置が、もし横軸の真ん中あたりだったら、長野県のプロット位置は右端となり、強い正の相関が得られることになる。
 よって、滋賀県のプロット位置が、これで正しいのか、検証しておくべきである。
 上記の滋賀県の取り締まり件数665はH29(2017)の一年間のもので、滋賀県の人口は1,412,956人となっている。およそ141万人である。よって、この665件を図1や図3の横軸の単位 [件/(月・百万人)] として表すには、665÷12÷1.41=39.3 となる。図1と図3では目測で50あたりであるから、さらに左だということになる。
 同様の計算を、長野県のH29(2017)一年間の取り締まり件数2272について実行しよう。長野県の人口は 2,076,377 ということなので、2272÷12÷2.076=91.2 である。図3のプロット位置はドンピシャリだった。

 考察

 (かつての私がそうだったように)誰でも思いつく指標として「取り締まり件数」が考えられることだろう。
 しかし、「取り締まり件数」と「横断歩道 停止率」とは、長野県のデータを含めると、ほとんど相関がみられないことになってしまう。
 図1と図3では、滋賀県と東京都のプロット位置も、これらの指標として逆になっており、説明できない。
 長野県と滋賀県だけで考えても、「取り締まり件数」については、長野県は滋賀県の高々2倍にすぎないのに、「横断歩道 停止率」は (長野県)÷(滋賀県)=58.3÷8.3=7.0 [倍]と、きょくたんに大きな倍率になっているのである。滋賀県警から長野県警に「何か特別なことをしているのですか」と問いかけてもらったときの、長野県警側の答えが「何も特別なことはしていません。他の府県の警察と同じようにしているだけです」とあったのは、単なる謙遜でも、データの隠匿でもなかったようだ。問題視すべきなのは、滋賀県の「取り締まり件数」が低すぎるということのほうである。これだけが要素となるのだったら、ワースト5に入っていてもおかしくない。なのに、ほとんど平均値の代表県となっているのは、何か別の要素に助けられているからだろう。しかし、このべつの要素については、まだよく分かっていない。
 全国ワーストワンの栃木県については、おそらく、これらの指標が意味を持つのだろう。他の要素が存在するとしても、それもまた何の助けにもなっていないに違いない。
 ともあれ「ダントツ長野県の謎」は迷宮入りした。
  (Written by KLOTSUKI Kinohito, April 19, 2019)

 参照資料

[1] JAF|信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止 ...
[2] みんなのカーライフ ブログ 横断歩行者妨害 検挙数と停止率の関係
[3] 京都新聞の社説
[4] 滋賀の交通H29(2017)/滋賀県警察の広場
ここにあったと思われるPDFの資料に「第6 交通取締り関係」にあったが、印刷してみると文字化けがひどく、4月の現在は、訂正中らしく、このサイトを開くことができない。
[5] 長野県 平成29年交通統計
[6] 第6交通指導取締状況(PDF:229KB)

 

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