かかし抗力とスプリング抗力

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)

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 図1の状況において作用する抗力Fを「かかし抗力」と呼び、図2の状況において作用する抗力Fを「スプリング抗力」と呼ぼう。スプリングは「春」ではなく「バネ」の意味である。

  図1では、キック脚の膝点Kが、その膝から下の部分が固くなっていて、地面に対する位置を変えないものとする。そうではない場合には、地面に固定されている足のどこかに支点があることになるだろう。このときは、膝が動かないものとして、支点の役目をしているものとみなしておこう。このとき、身体重心Gに は、速度ベクトルVoが作用している。本当は、これらの力や速度のほかに、身体重心Gには重力が作用しているが、これに対しては、地面からの抗力が別に作用している。これらの関係については、煩雑になるので、省略しておく。

 さて、身体重心に作用する速度ベクトルVoを、図のような、VaとVbの成分に分解して考えよう。このとき、かかし抗力Fは、速度成分Vaに対して逆の向きになるから、これにブレーキをかけることになる。この状態が凾博條ヤ続いて、Vaが0に なるまでかかし抗力Fが作用したとすると、Vbの成分だけが残る。このとき、最初の速度ベクトルVoに対して、Vbは、水平速度を減らしているが、鉛直速 度を増やしたことになる。このかかし抗力は、走高跳の踏切では、重要な効果を生み出している。走幅跳の踏切でも利用されることが多い。

 図2の状態では、身体重心Gに速度ベクトルVoが作用しているものとする。このとき、スプリング抗力Fを凾博條ヤ作用させて、この向きの速度を0か らVaへと増したとすると、最初のVoと新たなVaが合成されて、Vbの速度ベクトルが生まれることになる。このとき、スプリング抗力はほぼ鉛直方向を向 いているが、もう少し前方へと向けることもできるので、新たなベクトルVbは、鉛直成分だけでなく、水平成分も増やすことができる。このスプリング抗力 は、さまざまなジャンプ種目において用いられている。力学的にも、難しいことはない。ただ、すこし特殊な作用を生み出す「かかし抗力」の特徴をはっきりさ せるために、このように名づけてあるだけである。

図1と図2の間に、「かかし抗力」から「スプリング抗力」に変わるところがある。それは、図1で示されている抗力Fと、速度ベクトルのVoもしくは変換後のベクトルVbとが、垂直になるときである。こうなると、抗力Fは速度Vにブレーキをかけることができなくなる

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