短距離ランニングフォーム (2) HR選手
HR選手はガンマランクキックを安定して生み出す

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 ビデオ画像コマによるステックピクチャー

 HR選手に高速ランニングフォーム(サバンナキック)の走り方を指導しました。実際にどのようなフォームとなっているかを確認するため、フォームに注意して走ってもらい、それを撮影して解析しました。
 次に示すのは、ビデオ画像コマの静止フォームから構成したステックピクチャーです。青が左を、赤が右を示すようにしてあります。@などの奇数番号は左脚キックで、Aなどの偶数番号は右脚キックとなります。









図1 ビデオ画像コマによるステックピクチャー

 キック局面のフォーム

 図2は「キック局面のフォーム」として「(左)接地4コマ、(中)有効キック区間、(右)キックポイント」を並べたものです。高速ランニングフォーム(サバンナキック)としておすすめのフォームは「ガンマ(γ)クランクキック」というものなのですが、HR選手は、このフォームを8歩のうち7歩も生み出しています。









図2 キック局面のフォーム
(左)接地4コマ、(中)有効キック区間、(右)キックポイント

 いずれも、高速ランニングフォーム(サバンナキック)として効率のよいものになっていますが、詳しい解析の結果、これらの中でもっともすぐれているのは、Gのフォームでした。(中)有効キック区間を見ると、スウィング脚の違いが分かりやすいです。これは、(右)キックポイントをはさんだ、およそ1/30秒の動きを示しています。スウィング脚の形と位置取りが、@などとは違っています。他のフォームでスウィング脚の膝から下が前方へと振り出されていますが、これは自然にそうなるものです。しかし、Gのフォームがいちばん力強く感じられます。私が見本として示したフォームより、ずうっと良いものです。

 空手パワーキック

 高速ランニングフォーム(サバンナキック)の大切な要点の一つは、ランナーから感じたときの、身体重心の真下あたりでキックをおこない、後方へとキックするのではなく、真下の方向へとキックするということです。
 HR選手には(他の選手にもですが)、真下へとキックするときの、さらに重要なポイントを指導しました。それは「空手の突きで板を割るときのように、瞬間的に動きを速くして、力をこめるということを、あたかも、地面に板があって、それをキック脚で割るようにする」というものでした。指導しているときは、このような言葉による説明だけだったのですが、後から、このような技術を空手パワーキックと名づけることにしました。
 HR選手は、そのような、瞬間的な動きを速くしてパワーを生み出すという動きを理解して、ランニングのキックの動きの中で試みようとしています。キック脚の足首あたりの動きを見ると、キック脚のバネがうまく使えていて(伸張反射を利用することができ)、大きな地面からの反発を体で受けとめています。
 詳しく解析すると、C〜Gのすべてにおいて、体重の4.3倍から5.5倍あたりの力を生み出しています。このような空手パワーキックによる効果が水平速度を大きくするためには、これに見合ったスウィング脚のパワーを生み出して利用しなければなりません。スウィング脚は、ほどよく後方で巻き上げられて、キックの瞬間にダウンスウィングとなるようになっています。このように、フォームとしては合理的なものとなっています。あとは、実際に水平加速がうまくいく動作の組み合わせとタイミングを探し、全身の力を集めることです。
 空手パワーキックを強く意識すると、自然と重心の高いランニングとなりがちですが、これを、もう少し重心の低いランニングとなるように調整するとよいはずです。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Jan 30, 2013)

 

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