短距離ランニングフォーム (3) AT選手
AT選手は上体を突っ込むタイプ

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 ビデオ画像コマによるステックピクチャー

 AT選手に高速ランニングフォーム(サバンナキック)の走り方を指導しました。実際にどのようなフォームとなっているかを確認するため、フォームに注意して走ってもらい、それを撮影して解析しました。
 次に示すのは、ビデオ画像コマの静止フォームから構成したステックピクチャーです。青が左を、赤が右を示すようにしてあります。@などの奇数番号は右脚キックで、Aなどの偶数番号は左脚キックとなります。







図1 ビデオ画像コマによるステックピクチャー

 これらのステックピクチャーを見て分かるように、AT選手は上半身をかなり前傾させて走っています。このようなフォームは、ハードルのインターバル走などでよく見られます。とくに、インターバルを3歩でこなせるようになったばかりの、初心者に近い選手では、地面を後方に押してストライドをかせごうとします。私も110mHをやっていたので、このような経験はあるわけです。しかし、走力が高まってくると、もう少し上半身を起こして、ハードルを越える前後の、重心の高いフォームの流れで走るフォームのほうが、インターバルも速く走れるようになるのです。そのようにするコツは2つあります。
 ハードル前の踏切動作で上半身を前に突っ込んだまま跳び出すのではなく、一度上体を垂直に近く起してから、踏切の離陸する瞬間に、リード脚とセットで、上半身を前方へと突っ込むのです。このような、リード脚と上半身を、ピンセットのような形にして前方へと向かわせることにより、ここで加速することができるのです。
 もう一つは、ハードルを越えたあとの1歩目の着地姿勢で、キック脚のかかとを浮かせるようにして、いわば、背伸びをしたままにし、このとき、抜き脚の膝を前方へと高く突きだしておき、「腰を入れる」ポーズとすることです。せっかくハードルの上で、体の重心が高いところで移動しているのに、1歩目から沈んでしまったら、3歩を低く走って、また、ハードルに跳びかかるところで重心をあげなければなりません。ハードルはすれすれに低く跳ぼうとするのではなく、少し高めのところを通るようにして、ハードルを越える1歩で距離をかせげば、インターバルが楽になるのです。

 キック局面のフォーム

 図2は「キック局面のフォーム」として「(左)接地4コマ、(中)有効キック区間、(右)キックポイント」を並べたものです。







図2 キック局面のフォーム
(左)接地4コマ、(中)有効キック区間、(右)キックポイント

 これらの6つのフォームの中では、3歩目と5歩目のガンマ(γ)クランクキックがおすすめです。とくに3歩目のフォームでは、キックにおいて瞬間的にパワーをこめる、「空手パワーキック」がうまくできていて、体重の5.9倍ものキック力が生み出されています。2歩目から5歩目までは4.3倍以上のキック力となっています。自分自身の動作として、意図的に強くキックするということができるようになっているようです。
 重心直下に近いところで真下に強くキックするということを意識して走れるようになれば、キック脚の姿勢がどのようなものであろうと、キックの力を効率よく水平速度へと変換することができます。
 キックする瞬間にパワーをこめるということと、あまり浮き上がりすぎないように、スウィング脚でリードするということを、自分の体で調整して、より速く走れる感覚をみがくとよいでしょう。
 また、スキップA(下へのキックに集中して、その反動で跳ねるもの)の運動から、しだいにスピードを上げてゆく、スピードスキップA(ランニングフォームへと近づいてゆくもの)を行ってゆけば、ガンマクランクキックのフォームに慣れてゆくはずです。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Jan 31, 2013)

 

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