陸上競技の技術(6) ハードル技術でのデップ(dip)には2つの意味がある

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 デップ(dip)

 ハードル競技全般で「デップ(dip)」という用語が使われてきました。
 英語の辞書で調べてみると、dipは動詞で、「(液体などに)ちょっとつける」という意味から派生したと考えられる、いくつかの意味が分化しています。
 「(物が)ひょいと下がる」「(飛行機が)上昇前に急降下する」「(鳥が)短い急降下する」などの表現が、ハードル競技の踏切からハードルを越えるあたりで「(上半身が)前屈する」という動きと関連しているようです。
 このような意味は、実際にハードラーやそのコーチたちが、どのような動きについて表現してきたかということから、おいおい、辞書編集者が整理してゆくものだと考えられます。辞書に載っている意味というものは、言葉を使ってきた人々が考えてきたことを、できるだけ正確に、そして、簡潔に言い表そうとしたものなのです。
 それでは、ハードル競技の技術論で使われてきた「デップ(dip)」という言葉は、いったい、どのようなことを言いあらわしてきたのでしょうか。

 デップ(dip)の2つの意味

 ウェブで確認した「デップ(dip)」の意味は@「ハードルの上で上半身がリード脚に向かって前屈する」というもののようでした。


図1 @「ハードルの上で上半身がリード脚に向かって前屈する」
クリアーデップ

 これまで私が思っていた「デップ(dip)」の意味はA「ハードルの踏切において上半身が前傾しようと動く」ということです。


図2 A「ハードルの踏切において上半身が前傾しようと動く」
アタックデップ

 @とAは一連の動作におる、最初(A)と最後(@)と見なすこともできます。
 しかし、YG選手やミルバーン選手のフォームを見比べ、解析を進めてゆくなかで、これらの@とAは、まったく異なる効果を生み出すことが分かってきました。
 たとえば、@「ハードルの上で上半身がリード脚に向かって前屈する」ということができなくても、A「ハードルの踏切において上半身が前傾しようと動く」ということができれば、より大きなスピードが得られます。
 このような違いを考えてゆくためにも、これらを同じ「デップ(dip)」という言葉で示すのではなく、何らかの言葉を添えて、2つの意味があるということを区別したほうがよいように思われます。
 そこで私は、@「ハードルの上で上半身がリード脚に向かって前屈する」のほうをクリアーデップ、A「ハードルの踏切において上半身が前傾しようと動く」のほうをアタックデップと呼ぶことを提案します。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, July 8, 2014)

 

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