陸上競技の技術(9)
ヤリ投の初速度はどのような動きで生み出されているのか

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 観測画像

 ほとんど見本にはならないものですが、私によるヤリ投の観測画像を示します。
 このときの投げは、軽い7歩助走によるものです。画像は1秒間に30コマ撮影するビデオによって構成しました。よって、コマ間は0.033秒となります。私の身長は1m76です。ちなみに、このときのヤリは600gのものです。


図1 軽い7歩助走による投げ

 解析プログラムによる分析

 ランニングフォームを解析するプログラムruna.exeをベースとして、不要な部分を切り捨て、最初の座標値読み込み部分に基づいて、ソフト内のシミュレーションロボットで再構成する前の、生の観測データを使って、次の画像を構成しました。
 次の図は、前方のブロック脚の、地面における支点(拇指球部分)を同じとして、6つのステックピクチャーを描き、あとから、ヤリの動きを水色の線でなぞったものです。


図2 解析プログラムによる分析(7歩助走からの投げ)

 この図における私の身長分の長さを求め、これと見比べて、ヤリを持つ右手(@〜E)の移動距離や、右肩(緑の点)の動きなどの速度を計算しました。
 AとBのところで、右肩の「引き」による、ヤリへの1次加速が行われています。このときの、緑の点による右肩の速度を求めると4.7 [m/s] でした。ヤリのAとBの動きからは、3.8 [m/s] という値が出ました。
 BからCのところでは、あまりスピードアップされていません。
 CからDのところの移動距離から、ここでのヤリの速度を求めると13.9 [m/s] となりました。おおよそ20mくらいの飛距離に相当します。
 かなり弱い選手としてのデータということになりますが、右肩の「引き」によって生み出された速度は、およそ4 [m/s] で、そのあと、右腕の「振り」によって加えられた速度が10 [m/s] くらいということになります。
 黒い点で示してある腰の中心点が、うまくブロックされておらず、ゆっくりと立ち上がっています。これに対して、右肩の動きが、腰の動きの2倍ほどの速さとなっています。ここのところの違いが、(中途半端ではありますが)腰のプロックによって、運動量が上半身に移されたということを示しているようです。もっと上手な選手のフォームを調べると、もっと違う値が出ることでしょう。
 ちなみに、次の図3は、3歩助走からの投げについて解析したものです。
 AからBのあたりでの1次加速が弱く、B→C→D→Eにおける、右腕の「振り」による加速も、かなり弱いようです。


図3 解析プログラムによる分析(3歩助走からの投げ)

 まとめ

 これらの解析結果を見るまでもなく、撮影されたビデオを見て、次のような欠点があることが分かりました。

 (A) 腰が高すぎる
 (B) 上半身の後傾が甘い
 (C) 右脚のキックが意識されていない
 (D) ヤリの投射角が45度に近い(高く投げ過ぎている)
 (E) 腕の振り抜きによるスピードアップが見られない

 もっとあることでしょう。
 右肩だけでなく、右腕全体も弱いし、胴体もゆるゆるです。おまけに、これまで鍛えてきた脚力も、ヤリ投のトレーニングに時間をとりすぎて、かなり貧弱になっています。
 図2で、腰点(黒)、右肩(緑)、ヤリの握り(紺)の、3つの速度を見比べると、およそ、1対2対4くらいの比となっているようです。これも、もっと強い選手では、違う値となるかもしれません。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, Sep. 3, 2014)

 

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