陸上競技の技術(10)ヤリ投の初速度はどのような動きで生み出されているのか(2)

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 はじめに

 ヤリ投の初速度を生み出すための動きとして、最終的には「腕の振り抜きのパワー」が重要なものとなりますが、その動きの前に「ヤリを投げる肩の動き」、そして、「その下部でベースとなっている腰の動き」が考えられます。
 これらの動きは、「構え」から「投げ」のところの、「投げ」におけるものですが、「構え」のところの動きは、ヤリ投助走の最終局面とも考えられます。
 これらの関係をふまえて、「ヤリ投の助走スピード」が、「投げ」のところの、いろいろなスピードとどのようにつながっているのかを調べることにしました。
 観測サンプルとしては、私の軽い7歩助走からのヤリ投を使いましたので、ごくごく初心者の、弱い選手のデータですが、おおよその傾向を知ることができると思います。

 「構え」のところの動き

 ヤリ投の解析プログラムを改良して、図1のような解析結果が得られるように、次のようにしました。
 1) ヤリ投では顔の向きが大きく変わるので、頭部を円で描いていたところを、顔の向きを線で表示するようにしました。
 2) ヤリの先端と末尾の座標を読みこんで、ヤリを表示するようにしました。
 3) ヤリの先端 [26](紺色)、投げる腕の肩 [6](緑色)、腰の中心 [5](黒色)のところに、大きめ色点をプロットし、これらの座標値と、選手の身長相当の長さから求めた、このときの描写単位 1 [m] の長さを求め、ビデオの1コマ時間(0.033秒)の値を使って、それぞれの色点のコマ間速度を求めました。
 4) dxは水平速度、dyは鉛直速度、Vはxy平面における速度です。Θはdxとdyから求めた速度ベクトルの水平から求めた角度です。ヤリの先端点 [26] について求めた角度は「投射角」となります。


図1 「構え」のところの動き

 「構え」のところの動きでは、ヤリも肩も腰も、ほぼ同じような水平速度となっています。[5] の腰中心の水平速度は、2.91 [m/s] から1.98 [m/s] へ減ったのち、2.33 [m/s] へと、わずかに増えています。およそ3〜2 [m/s] くらいの水平速度で「投げ」の局面へと進もうとしているようです。

 「投げ」のところの動き

 前の脚が地面についてからヤリを振り切るところまでを「投げ」の局面として構成したのが図2です。
 前にある左脚で腰をブロックしているのですが、かんぺきに腰[5]の動きが止まっているのではなく、わずかに前進しつつ、高さを増しているようです。速度ベクトルVの絶対値としては、D→Eで1.04 [m/s] と、ほぼ1 [m/s] くらいになっています。
 これに対して、この腰の上に乗って動いている上半身の、ヤリへと動きを伝える右肩[6]の速度ベクトルVは、@→Aの2.04[m/s]から始まって、D→Eでの2.92[m/s]へと、わずかに大きくなってゆきます。
 このように、「投げ」における右肩[6] の速度ベクトルの値は、「構え」における全体の水平速度(助走のラストスピード)と同じくらいとなっています。


図2 「投げ」のところの動き

 ストップ脚による腰のブロック動作で、身体全体の運動量が、ほぼ半分の質量となる、上半身の運動量へと移されるなら、身体全体のスピードの2倍になるという、卓上理論による予想は、まんまと外れてしまっています。
 ただし、このような解析結果は、私という、かなり下手な技術で投げているケースでのものです。もっと上手な選手が、(右腕で投げるとき)どのような右肩スピードを生み出しているのか、さらに詳しく調べる必要があります。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, Sep. 9, 2014)

 

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