陸上競技の技術(12) ヤン・ゼレズニー選手のヤリ投技術(構えから投げ)

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 はじめに

 ヤン・ゼレズニー選手のトレーニングにおけるヤリ投ビデオ画像を、ヤリ投解析ソフト(javo.exe)で調べました。
  Jan Zelezny.wmv


図0 今回解析したヤン・ゼレズニー選手の「構え」から「投げ」の10コマ

 今回の解析のため、ヤリ投解析ソフト(javo.exe)を改良し、選手やヤリの座標のほかに、地面に基準点を設定し、それを入力しておき、総合的な解析図を構成するとき、この基準点について表示できるようにしました。これにより、地面に接している足が異なるフォームや、空中を移動しているフォームまでを含めて、一度に表示できるようになりました。
 上の図0は基準点について描写した、次の図1について、1コマずつ横に広げたものです。図0では胴体を示す両脇の線を描写しましたが、図1〜図3では、分かりにくくなるので、背骨のラインのほうを描写しています。

 解析結果の表に示されている座標の意味は次のようになっています。
 [26] ヤリの先端, 紺色の点
 [9]  右手(ヤリを握っている掌)、赤い点
 [6]  右肩(ヤリを右手で投げるとして)、緑の点
 [5]  腰の中心点(右腰と左腰の中間位置、へその少し下あたり)、黒い点

 表の要素の意味は、次のようになっています。
 1→2) 1つ目のフォームと2つ目のフォームについての値
 dx  水平速度 [m/s]
 dy  鉛直速度 [m/s]
 V  絶対速度 [m/s]
 Θ  絶対速度Vのベクトルを水平線から求めた角度 [度]

 構えから投げ

 図1は「ヤン・ゼレズニー選手の構えから投げ」の10フォームをステックピクチャーで表示し、基準点(桃色の点)をそろえて並べたものです。座標から求めた速度の表は、はんざつになるので、ここでは割愛します。


図1 ヤン・ゼレズニー選手の構えから投げ

 図1をながめて気がつくところを幾つかコメントしたいと思います。
 腰点(黒)の変化を見ると、4←3と5←4のあたりで、大きく移動しています。構えにおける右脚キックが行われているようです。また、最後の9と10のところで、前進スピードがきょくたんに小さくなり、腰がブロックされていることが分かります。
 右肩(緑)の変化では、4←3のところで広くなっています。右肩によるヤリへの一次加速が行われたようです。腰点の変化とほぼ一致しています。右脚キックと右肩によるヤリの引きは、同時に行う技術のようです。
 右肩(緑)の変化としては、9←8のところで、大きく移動しています。ここでは腰がブロックされて、運動量が上半身に移され、胴体が木のしなりのようなバネ動作で前方へと振られています。ここで胴体のひねりも加えられており、これらが一体となって右肩を大きく前進させているわけです。
 10←9←8のところで、ヤリを握っている右手が大きく振り出されています。9←8では、右肘が大きく引き出され、10←9のところで、肘から先でスナップをかけています。
 左腕も、胴体のひねりや、しなりのバネをガイドするため、うまく動かされています。

 

 図1より、1から6のフォームを取り出して、「構えのフォーム」とします。



図2 ヤン・ゼレズニー選手の構え

 腰点 [5] における 3→4) の水平速度でdx=5.13 [m/s] という値が示されています。構えのところでの、右脚キックにおける、最終的な助走スピードということなります。他の座標点で、この値を上回るものは見られません。

 投げ

 図1より、7から10のフォームを取り出して、「投げのフォーム」とします。



図3 ヤン・ゼレズニー選手の投げ

 黒い腰点の変化として、2←1のところが大きく、4←3←2のところでは小さくなっています。ストップ脚の左脚で、2のときの膝が少し曲がっていますが、ここで力を生み出したものと考えられます。このあと膝はまっすぐ伸ばされて、腰のブロックを確かなものとしています。
 緑の右肩の変化では、3←2のところがきわだっています。このとき、2において、腹のあたりが先行して突き出ることで、胴体のしなりを生み出し、これが3で、ひねられつつ反発することにより、右肩の大きな変化を生み出しているようです。
 ヤリの先端は、ビデオでうまくとらえられていないようです。2→3の変化は、右手の変化より小さくなっており、不自然な値となっています。
 座標番号[9]の、右手による変化を見ると、絶対速度Vの値として、7.67 [m/s] , 13.22 [m/s] , 22.18 [m/s] となっています。ヤリの投射角は、[26] の3→4)で40.7 [度] となっています。解析理論値として47mくらいの飛距離となります。ただし、これらの値は、ビデオの解像度を考慮して、おおよそのものとして考えておく必要があります。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, Sep. 19, 2014)

 追記

 速度値をグラフで表示できるようにしました。


図A 水平速度 dx [m/s] のグラフとミニフォーム


図B 鉛直速度 dy [m/s] のグラフとミニフォーム


図C 絶対速度 V [m/s] のグラフとミニフォーム

 これらについての考察と応用は 陸上競技の技術(13) ヤン・ゼレズニー選手のフォームからヤリ投の構えと投げのテクニックを学ぶ で行います。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, Sep. 25, 2014)

 

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