アドバイス006
 高速ランニングフォーム習得の前にやっておくべきこと(2)
グリコーゲンエネルギーシステムのためのトレーニング

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 グリコーゲンエネルギーシステムのためのトレーニング

 これは、かつてから、いろいろなスポーツで言われてきた「走り込み」に相当するトレーニングです。
 これには多様な方法がありますので、「定番」と呼べるようなものはありません。

 たとえば、200m走のためのグリコーゲンエネルギーシステムを発達させるためには、次のようなトレーニングを行うことができます。

 ほぼ全速力に近い、コントロールスピード(全速力の90〜95パーセントのスピード、練習のコンディションでは、ほぼ全速力の感じ)での、スタンディングスタートからの200m走。
 1本からでも、それなりに効果はありますが、トレーニングの負荷を高めるために、何本か行います。
 陸上競技のシーズンの違いによって、方法が異なります。
 春から秋のシーズン中では、2本を、ほぼタイムトライアルのような形で行います。2本の場合の、間の休憩は10分から20分くらいでしょうか。この休憩の時間が、大きな意味をもってきます。
 一般に、(100mで顕著ですが)一日に1本しか出場しないときより、予選と決勝など、一日に2本のトライアルがあるほうが、後半の決勝で、よい記録がでます。これは、予選の負荷に対して、身体が過剰に反応するためです。
 このことは、トレーニングにおいて、2本のトライアルを何度かやってゆくと、分かります。初心者は1本目のほうが良いようですが、ある程度トレーニングを重ねてゆくと、たいてい、2本目のほうが、より良いタイムとなります。
 このことを知って、かつて私は、予選通過がぎりぎりだった、400mの選手に対して、ウォーミングアップのときに、200mのほぼ全力走をさせたことがありました。
 このときの予選では、はるかに強い選手が、かるく予選は通れると思っていたようで、先行する私の教え子を、最後に追いかけて抜き去るのに必死になっていました。おしかった。この予選は突破できませんでしたが、これまでになく、楽にスピードが出た、と教え子は言っていました。

 まとめます。
 シーズン中でのタイトライアル系のトレーニングは2本がよいのです。

 それでは、シーズンオフの(晩秋から)冬季などでは、どうでしょうか。
 中学生を指導していたころの、ある年の冬、たまたま雪が少なくて、日曜日ごとに、400mの土の競技場が自由に使えたときがありました。
 このとき私は、次のようなトレーニングを行わせました。
 男女あわせて、200mのタイムの遅い順番に(200mの)スタートをさせてゆき、その最後に私が走ります。
 このとき、私に抜かれた生徒は、このトレーニングが終わったあと、抜かれた回数に応じて、100mの片足跳躍走(左右とも)を行わなければなりません。
 20人から30人ほどの選手たちの、ほぼ半分は、抜いていました。
 かくして、このあとの春に、2年生となった女子が200mで26秒0を出し、その時点での全国ランキング1位でした。
 ところが、当時の私は、この選手の記録を、それ以上伸ばしてやることができませんでした。コーチとしての力量が不足していたのです。
 そのトーニングのタイトルは、次のようなものです。

 グリコーゲン 200m×5本(追い抜かれたら100m片足跳躍走(左右とも))

 書いてみるとかんたんですが、なかなかにたいへんなトレーニングでした。
 このときの生徒は中学1年生ですが、3年生になると、男子の何人かは、もう私では勝てない記録を出せるようになっていました。
 この次の年の冬は、雪がたくさん降って、このようなトレーニングができず、2度目の飛躍的な成長をさせてあげられませんでした。
 そのようなときでも、代わりのトレーニングを考えて実行すればよかったのですが、それが当時の私には、できなかたわけです。私のコーチ力の不足のためです。

 今なら、次のようなトレーニングを次々と考えて実行させるでしょう。

 各種の高速ランニングフォームのためのドリルを、30秒ほどの距離や回数で行う。
 例えば、スキップB 100m×5本、あるいは、スキップC 100m×2本(5本は無理)

 スキップAだけではなく、スキップBやスキップC(スキップBより膝が高く上がって、大きく振り出すもの)をやれば、200mを全力で走るのと同じくらいの、エネルギー負荷をかけることができます。
 100mの距離がグラウンドでとれないとしても、体育館などで、往復しながら行うことができます。地面がコンクリートでなくて、少し柔らかめで弾力があれば、そこでもできます。
 一般に、正式なスキップBやスキップCは、前進してしまうものなのですが、前進しないですむ、他の種目に置き換えることもできます。

 その要点は、あるていどエネルギー負荷が大きくて、30秒間続けられるものです。

 本数や強度については、ある種のバランスのようなものが必要です。
 あるとき、近くの中学生のチームが、冬季トレーニングとして、200mのコントロールスピードでの反復走(歩いてスタート地点に戻るもの)をやっていました。
 5本で終わりかな、と見ていると、それを3セットも行っています。
 これでは、中長距離ランナーは育っても、短距離ランナーのためのエネルギーシステムの強化とはなりません。
 翌年、その中学校から、優れたスプリンターは現われませんでした。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, October 2, 2016)

 

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