短距離ランニングフォーム解析 (10) NS選手の詳細重心解析

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS


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 NS選手のランニングフォーム


図1 NS選手のランニングフォーム(2001年のもの)

 これらは、全速力のものではなく、トレーニングにおけるフロートでのフォームです。

 NS選手のキック局面


図2 NS選手のキック局面における重心描写



 NS選手の詳細重心解析


図3 NS選手(a) 5←4←3の詳細重心解析


図4 NS選手(b) 12←11←10の詳細重心解析


図5 NS選手(c) 19←18←17の詳細重心解析

 (左)に画像からのフォームを示します。(中)ごろにあるのは、詳細フォームでの全重心(G)の水平速度dx(G)と鉛直速度dy(G)のグラフです。dx(G)は塗りつぶされた濃い黄色で、dy(G)は塗りつぶされていない濃い水色でプロットされています。縦の線は、地面にきちんと接地していないために値がばらついてしまうところを示しています。濃い水色のプロットで太線になっているのは、(右)に取り出した詳細フォームのところです。ここでは詳細フォームの10に相当する間隔となっています。(左)の画像の重心プロットの時間と同じです。
 図3と図4のフォームでは、いずれも、キック局面の後半で、水平速度が上がってきています。これに対して、図5のフォームでは、鉛直速度が大きくなりつつあるのに対して、水平速度はゆるやかな勾配をもって減少しています。減速しているというほどのものではなく、このキックでは、持っているスピードを維持して走ろうとしている様子がうかがえます。


図6  NS選手(a) 5←4←3の全重心速度グラフと3コマのフォーム

 NS選手のキック局面のフォームとして注目すべきものは、(a) 5←4←3であると思われます。
 図6の3コマのフォームを見ると、前半の4←3のところで、キック脚が地面をしっかりと踏みつけており、この間に、スウィング脚の膝が前方へとすばやく突きだされています。おそらく、この(膝の角度を固定気味にしておく)クランクキックでの加速を受け、高まった速度の上に、後半の5←4のところで、(膝の角度を伸ばしてゆく)ピストンキックを、さらに加えているのでしょう。 これが100mを10秒台で走る選手のコツなのかもしれません。
 このような解析をおこなって分かってきたことは、キック局面というものを最初から最後まで利用してゆくべきだということです。できるだけ短い時間でキック動作をおこなうという指針は、前半部分での効果を得るために必要なものであったと思われます。キック足を後方へと「払う」意識のフォームでは、前半部分での効果を期待できなくなってしまい、後半部分だけの効果しか利用することができません。「高速ランニングフォーム」は、この前半部分の効果を強調したものでした。しかし、だからといって、前半部分だけで十分だと考えるのではなく、前半部分の効果を確かなものとしつつ、後半部分の効果を加味してゆくことにより、ほんとうの「高速ランニングフォーム」になると考えてゆくべきだったのです。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Oct 24, 2012)

 

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