短距離ランニングフォーム解析 (11) OZ選手の詳細重心解析

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS


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 OZ選手のランニングフォーム


図1 OZ選手のランニングフォーム(2005年のもの)

 このフォームは走幅跳の助走におけるもので、最後の段は踏切動作です。

 OZ選手のキック局面

 図1の助走から、一段目(踏切4歩前)と二段目(踏切3歩前)と三段目(踏切2歩前)のキック局面を取り上げます。


図2 OZ選手のキック局面における重心描写



 (c)踏切2歩前は4コマの画像からのフォームで構成しましたが、3コマだと、重要なところを見逃がしてしまいそうだったからです。(b) 踏切3歩前のフォームと対応しているところは、(c)踏切2歩前の4コマのフォームの、ちょうど、1.5〜3.5のあたりのフォームとなります。この(c)踏切2歩前のフォームの、最初のところと最後のところの詳細フォームの幾つかは空中にあるものなので、全重心から求めた速度の情報が無意味なものとなるはずです。このことについては、後の解析で詳しく説明します。
 OZ選手のスウィング脚の動きは、「後方巻きあげ型」と「直下引き付け型」の、ちょうど中間状態のようなものとなっています。しかし、スウィング脚引き出しのスピードやタイミングは、よいものとなっています。
 キック脚の膝の角度に注目してください。いずれも、1つ目から2つ目のフォームへと移ったところで、膝の角度が小さくなって、ここで力を生み出していることがうかがえます。ここのところは「高速ランニングフォーム」のポイントである、(おそらくベータ)クランクキックとなっています。

 OZ選手の詳細重心解析


図3 OZ選手(a) 踏切4歩前の詳細重心解析

 (左)に画像からのフォームを示します。(中)ごろにあるのは、詳細フォームでの全重心(G)の水平速度dx(G)と鉛直速度dy(G)のグラフです。dx(G)は塗りつぶされた濃い黄色で、dy(G)は塗りつぶされていない濃い水色でプロットされています。縦の線は、地面にきちんと接地していないために値がばらついてしまうところを示しています。濃い水色のプロットで太線になっているのは、(右)に取り出した詳細フォームのところです。ここでは詳細フォームの10に相当する間隔となっています。(左)の画像の重心プロットの時間と同じです。
 このキック局面では、鉛直速度がほぼ0の値で、水平速度は8 [m/s]くらいのところから、9 [m/s]くらいのところへとあがっています。「加速フォーム」とみなしてよいでしょう。


図4 OZ選手(b) 踏切3歩前の詳細重心解析

 ここのところのキックは、加速を続けようとしていないことが明らかに示されています。次からの踏切前動作を意識しているので、「つなぎ」のフォームとなっているのでしょう。減速しているというほどでもなく、スピードを維持していようとしているものと見なせます。


図5 OZ選手(c) 踏切2歩前の詳細重心解析

 (右)に取り出した詳細フォームでは詳細フォームの9に相当する間隔となっています。(左)の画像の重心プロットの時間(10相当)より、少し短い時間となっています。
 走幅跳の踏切2歩前においては、次の踏切1歩前で沈み込みたいので、この2歩前で、少し高く跳び出すのがコツなのです。グラフの鉛直速度のほうの濃い水色のプロットを見ると、山なりとなって、正の値を生み出そうとしています。わずかなものですが、これくらいでよいわけです。
 OZ選手は、この2歩前のキックで、水平速度をきちんと高めようとしています。グラフのプロットの様子から、詳細フォームの5つ目あたりから、23番目(赤い線の位置)のあたりまでが、地面に接していて、全重心への力が作用していると考えられます。24番目以降は離陸しているようなので、プロットが大きくみだれており、これらは無意味な値です。


図6  OZ選手(a) 5←4←3の全重心速度グラフと3コマのフォーム


図7  OZ選手(a) 5←4←3の全重心速度グラフと3コマのフォーム

 図6と図7に、踏切4歩前と踏切2歩前の、地面に接していて意味をもつ、それぞれの詳細フォームを並べました。詳細フォームはもとのフォームの10分割ですから、これらのd5間隔の時間は、1/60秒ということになります。
 それぞれの、中2つのフォームあたりで、身体重心直下のキックが行われています。キック脚の膝の角度がほとんど変わっていないところを見てください。キック脚の曲げやすい方向が決まっているという仕組みによって、キック脚のクランク状の形がほとんど変わらない状態で、腰を前方へと送りだしています。これが「高速ランニングフォーム」の本質的な動きなのです。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Oct 24, 2012)

 

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