短距離ランニングフォーム解析 (13) KR選手の詳細重心解析(改正加筆)

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS

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 KR選手のランニングフォーム


図1 KR選手のランニングフォーム(2001年の1-15)
上2段(1-7)→ 右脚キックフォーム, 下2段(8-15)→ 左脚キックフォーム

 KR選手のキック局面と詳細重心解析

 KR選手というのは私のことですが、「高速ランニングフォーム」の研究をはじめた2001年のころから、すでに、右脚キックにおいては、その特徴を再現できていたようです。しかし、私のランニングスピードが、期待したほど向上しなかった理由が幾つかあります。ひとつは、左脚のアキレス腱の痛みでしょう。これは、私が若いころ走高跳に打ち込んでいて、踏切脚である左脚をねじって接地させていたため、筋肉などのバランスが狂ってしまったことに由来するようです。もうひとつは、キック局面の後半の動きを磨くということをおろそかにしていたからです。スウィング脚の動きによる加速効果が、予想していたよりも大きかったことに気がついたのは、2012年になってからのことでした。
 キック局面を前半と後半に分けて見直したとき、「高速ランニングフォーム」のメカニズムが分からなかったころは、主に、後半の動きでスピードが決まっていました。この動きについては、筋肉のタイプや神経系の敏捷さといったような、天賦の才能のようなものが影響します。このようなファクターの上限は、すぐそこにあって、なかなか、それへと達することができず、ある程度近づいたら、そこで止まってしまいます。かくして「スピード障害」が起こります。
 しかし、「高速ランニングフォーム」のメカニズムは、このようなファクターとはやや異なるものです。何にでも上限はありますが、こちらのほうでは、よりたやすく、トレーニングによって発達させることができます。そして、この「高速ランニングフォーム」のメカニズムですが、現在、いろいろな選手のランニングフォームについて、(進化し続けている)解析ソフトのruna.exeで調べているところです。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Oct 22, 2012)

 スピード能力3要素による評価

 上記の解析から、ほぼ1年が経過し、さまざまなことが分かりました。
 図1を撮影してもらったのが2001年ということで、私が47歳のときのランニングフォームです。現在59歳の私がなかなか出せない8 [m/s] 台のスピードを、練習中のフロートで生み出しています。2歩とも、やや腰高フォームで、スウィング脚の膝も無意味に上げすぎていて、現在の私から見ると、技術的に未熟だなあと思えてきますが、今回解析して、右脚キックフォームが腰高ガンマクランクキックで、左脚キックフォームが、やはり腰高であるものの、正真正銘のアルファクランクキックだと分かりました。なるほど、アルファクランクキックだと、キック直後のキック脚の膝が曲がったままという状態になるわけです。いずれのフォームも、キック軸加速度比の値が小さすぎます。このころは、地面をもっと強く「押す」という、技術的に重要な感覚のことがよく分かっていなかったという記憶があります。スウィング脚は、いずれも、直線引き出し型ですが、このころ目指していたのが、モーリス・グリーン選手の、おそらく、アルファクランクキックだったので、これは、当然のことだったかもしれません。


図2 右脚キックフォームのステックピクチャー


図3 左脚キックフォームのステックピクチャー


図4  ランナー感覚の動き

 ランナー感覚の動きを見ると、キック脚とスウィング脚の重心軌跡が、地面とほぼ平行となっており、理想的なものとなっています。おそらく、地面をもっと強く押すべきだという意識が無かったので、偶然、うまくなっていたものと考えられます。


図5 総合解析(右脚キックフォーム)
dG=8.5, dK=5.3, dT-dK=3.02, dS-dB=4.35


図6 総合解析(左脚キックフォーム)
dG=8.1, dK=4.7, dT-dK=3.58, dS-dB=3.65

 スピード能力3要素のデータを、図5と図6の注釈に添えました。下記に再録し、スピード能力3要素の寄与率を計算しました。ここで係数の値は、p=2/3, q=1/4 です。

表1 スピード能力3要素のデータと寄与率



 図5の右脚キックフォーム(ガンマクランクキック)では、キック脚重心水平速度dK=5.3 [m/s] という値が生み出されており、寄与率も62 [%] と大きく、ヒップドライブ速度の小ささを補って、比較的大きなスピードdGとなっています。
 図6のアルファクランクキックでは、このタイプの特徴として、ヒップドライブ速度が、図5のガンマクランクキックより、大きな値となっていますが、このころはまだ「キック脚の膝に乗る」という意識はなく、dKの値が小さめになっています。このため、このアルファクランクキックでは、右脚のガンマクランクキックよりスピードは高まっていません。
 このころの私は、左脚アキレス腱の痛みをごまかしながら走っていた覚えがあります。このため、左脚のキックでは、右脚より力がこめられずにいました。それが偶然に幸いして、まずまずのアルファクランクキックとなっているわけです。
 図5と図6の総合解析グラフのプロットパターンを見ると、キックポイントの瞬間に対して、まだまだ、力の集中が甘いということが分かります。ヒップドライブ速度や相対スウィング速度のピークが、うまく、dGのピークに合っていず、しかも、全般的に平坦なものとなっています。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, July 7, 2013)

 

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