短距離ランニングフォーム解析 (17) FK選手の100mと200mの
パワーポジションによるランニングフォーム分類

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS


PDF 短距離ランニングフォーム解析 (17)
FK選手の100mと200mのパワーポジションによるランニングフォーム分類


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 パワーポジションによるランニングフォーム分類

 「スプリントランニングフォームの分類」というページで、キック局面のパワーポジション位置のフォームについて、脛の立位角(θs)と太ももの立位角(θt)を指標として、さまざまなランニングフォームの値をプロットしたところ、次の図中のグラフのような結果が得られ、これに基づいて、クランクキックやピストンキックを分類しました。ここに示されているεクランクキックは走幅跳の踏切1歩前で現れるものです。スタートダッシュのフォームについては調べていません。これらは、中間疾走からトップスピードのランニングフォームについて調べたものです。
 パワーポジションというのは、キックの局面において、地面に最も大きな力が加えられるときを意味します。しかし、このグラフを構成したときのことを思い出すと、全身の重心についての水平速度のピーク位置としていたようです。この位置を「キックポイント」と呼ぶことにします。


図1 パワーポジションでの脛角(θs)と太もも角(θt)による分類

 FK選手の100mと200mのパワーポジションによるランニングフォーム分類

 解析内容の変更手順を次に示します。  (1) FK選手の100mと200mのランニングフォームについて、より精密な解析ができるようになったソフトによって、あらためて解析し直しました。
 (2) これらの有効詳細フォームにおける「全重心の水平速度が最大値をとるところ」を「パワ―ポジション(キックポイント)」と見なしました。
 (3) それらの脛角(θs)と太もも角(θt)をプログラムソフトによって求め、これを図1のグラフに照らし合わせてフォームの分類を行いました。


図2 FK100m(1) δクランクキック

 図2から図11まで、(a)〜(e)の解析図やグラフをまとめました。これらはすべて、画像4コマのステックピクチャーから構成しています。2コマ間のフォームを10分割した詳細フォーム0〜30を、キック足スパイク面あたりをそろえて描き、これらの重心を求め、まず(d)の全重心速度を描きます。ここにおける黒いプロットが全重心の水平速度です。これのピーク位置の詳細フォームを(b)キックポイントとします。これのキック脚における、脛と太ももの、水平面から測った角度を、脛角(θs)と太もも角(θt)とし、(c)フォーム分類のグラフで、フォームの種類を求めます。(d)の黒い全重心水平速度のパターンから、有効キック区間を判定し、その前後に縦線を引きます。(e)は、スウィング脚重心、全身の重心(全重心)、キック脚重心の、それぞれの水平速度だけをプロットしたものです。
 図2のFK100m(1)のフォームはδクランクキックとして分類されます。
 (e)を見ると、黒い全重心水平速度のピーク位置がd17のところにあるのに対して、赤いスウィング脚重心水平速度のピーク位置が、有効キック区間外のd21あたりにあります。うまくあっていません。逆に考えると、スウィング脚はd21あたりに動きのピークをもってきて、全重心の速度を高めようとしているのに、このことがうまくいっていないことになります。


図3 FK100m(2) βクランクキック

 図3のFK100m(2)のフォームはβクランクキックとして分類されます。
 (e)のパターンを見ると、黒い全重心の水平速度が、有効キック区間でほぼ一定であるのに対して、青いスウィング脚重心水平速度のピークが有効キック区間の初めにあって、赤いキック脚重心水平速度のピークが有効キック区間の終わりのほうにあります。あまり合理的な動きとはなっていません。
 スウィング脚はすばやく動かされているようですが、このとき、キック脚のほうにあまり力が込められていないようです。


図4 FK100m(3) δクランクキック

 図4のFK100m(3)のフォームはδクランクキックとして分類されます。  (e)のパターンを見ると、赤いスウィング脚重心水平速度と、青いキック脚重心水平速度のピー位置が、有効キック区間の終わりあたりにありますが、黒い全重心水平速度が、そこで高まっていません。
 黒い全重心水平速度が、100mの4歩のフォームの中では、もっとも大きな値でピークを生み出しています。(a) 有効キック区間のフォームにおいて、スウィング脚の膝が折りたたまれすぎていません。しかし、スウィング脚の動きは、それほど強調されているようには感じられません。
 キック脚のほうでは、全般的に高い水平速度となっています。


図5 FK100m(4) δクランクキック

 図5のFK100m(4)のフォームはδクランクキックとして分類されます。
 (e)のパターンを見ると、赤いスウィング脚重心水平速度と、青いキック脚重心水平速度のピー位置が、有効キック区間の終わりあたりにありますが、黒い全重心水平速度が、そこで効果的に高まっていません。わずかに増えていますが、ほぼ一定値と見なせます。


図6 FK200m(1) δクランクキック

 図6のFK200m(1)のフォームはδクランクキックとして分類されます。
 (e)の3種類の水平速度パターンは、自然な右上がりを示しています。調和のとれたフォームと見なせますが、とくに力を込めて加速しようしているものではないようです。


図7 FK200m(2) αクランクキック

 図7のFK200m(2)のフォームはαクランクキックとして分類されます。
 αクランクキックは、そのあとの水平速度が低下したため、最初のフォームが最大値を生み出しているということを示しています。そう考えると、これは明らかに「減速フォーム」です。(e) の3つの水平速度のプロットも、そのことを表わしています。


図8 FK200m(3) δクランクキック

 図8のFK200m(3)のフォームはδクランクキックとして分類されます。
 「減速フォーム」のあとに、このような「加速フォーム」がくるのは、自然なことかもしません。100mの4歩と200mの6歩のフォームの中で、このフォームがもっともうまく加速できています。赤いキック脚重心水平速度の変化と、青いスウィング脚重心水平速度の変化が、うまく同調して、全重心の水平速度を高めようとしています。どうやらFK選手が得意としていて、目指そうとしているのは、このようなフォームのようです。


図9 FK200m(4) γクランクキック

 図9のFK200m(4)のフォームはγクランクキックとして分類されます。
 (e)のパターンを見ると、全体的にプロットの「山」が低く、また、青いキック脚重心水平速度のパターンだけが、有効キック区間の終わりに「峰」をもっていて、結果的に、無駄な動きとなっています。


図10 FK200m(5) γクランクキック

 図10のFK200m(5)のフォームはγクランクキックとして分類されます。
 (e)のパターンより、赤いキック脚重心水平速度が右下がりです。また、スウィング脚も、それほど効果的に動いていません。このような状態であるにもかかわらず、黒い全重心水平速度は比較的大きな値となっています。FK選手はγクランキックをあまり目指そうとはしていないようですが、ガトリン選手が得意としているのは、(c)の位置より、もう少しだけ下のところにあるフォームです。


図11 FK200m(6) δクランクキック

 図11のFK200m(6)のフォームはδクランクキックとして分類されます。しかし、(c)のパターンを見ると、図11の(c)と、図10の(c)とは、わずかな違いしかありません。
 (e) のパターンでは、赤いスウィング脚重心水平速度がユニークな変化を見せています。(a)のフォームを見れば、このことの理由が分かります。スウィング脚が膝できょくたんに折り曲げられているため、腰を中心とした回転運動となって、あまり水平速度を大きくできないところがあるからです。でも、前方へと動くときには、コンパクトになっている分、動かしやすいということなのでしょう。ただし、このような変化の差は相対的なものであり、絶対的な速度の大きさという面では、図4 のFK100m(3)や図8のFK200m(3)のスウィング脚のほうがすぐれています。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Nov 8, 2012)

 

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