短距離ランニングフォーム解析 (24)
TS選手のスタートダッシュの詳細重心解析

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS

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 はじめに

 TS選手は100mなどの中間疾走において高速ランニングフォーム(サバンナキック)で走れます。もちろん、理想的なフォームへと向かってゆくには、いろいろなところをさらに調整してゆかなければなりませんし、スプリントランナーとしての基礎的な能力もさらに高める必要があります。
 TS選手は高速ランニングフォームの特徴を生かそうとしたスタートダッシュに挑戦しています。具体的には、これまでの通常のスタートダッシュより接地時間の短いキックということと、ピストンキックとして後方へ押すのではなく、できるだけ身体重心直下でのキックを生かすというものです。
 それが実際どのようになっているのかということを調べます。
 この解析ではクラウチングスタートにおける、スターティングブロックを押して走りだすところを1歩目(記号でTS(1))として、9歩目(記号でTS(9))までを調べました。

 画像コマによるステックピクチャー



図1 画像コマによるステックピクチャー

 TS選手は、これらのスタートダッシュのときに、後方に送った足のかかとをお尻の後ろへと巻き上げる動作を行っていません。これは良い動きです。中間疾走のフォームでも、やっていませんので、このようになるのだと思われます。ただし、歩数が進むにつれて、わずかに巻き上げる動作が加わってきますが、これは、スウィング脚をダウンスウィングぎみに動かすためのものであり、必要なものとなっています。

 有効キック区間とキックポイントのフォーム










図2 有効キック区間(左)とキックポイント(右)のフォーム

 ピストンキック(P)が2歩つづいて、3歩目にイプシロンクランクキック(ε)が現れています。4歩目がガンマクランクキック(γ)で、5歩目がイプシロンクランクキック(ε)となっています。3歩目と5歩目は右脚キックです。1歩目もそうなので、おそらく効き脚なのでしょう。3歩目から5歩目という段階で、ピストンキック(P)やデルタクランクキック(δ)ではなく、より重心直下に近いところにキックポイントがあるフォームを生み出しているわけです。

 詳細重心解析










図3 詳細重心解析

 総合水平速度グラフに描かれているパターンから、加速フォームとしての特徴が現れているものをあげると、1歩目、3歩目、5歩目、6歩目、7歩目、8歩目となります。これらの中で、より優れたものを選ぶとしたら、1歩目、3歩目、6歩目の3つです。
 総合水平速度グラフの下にある、●Gの値を1歩目から取り出すと、次のようになります。( )内の数字は、速度の増加値です。Pなどはフォームの記号です。



 速度増加値から判断すると「B ε6.4(+2.2)」のところがとくにすぐれています。3歩目のイプシロンキックは、効果的なものだったようです。
 奇数歩の右脚キックに比べて、左脚キックのほうではあまり加速できていません。何らかの理由がありそうです。
 6歩目か7歩目まではスピードアップできていますが、この段階で、ランニングフォームをピストンキックへと戻したためでしょうか、8歩目以降では加速できていないことになります。
 このようなスタートダッシュにつづいて、自分自身のトップスピードを生み出せるフォームへと、うまく「つなぐフォーム」を生み出してゆくというのが、8歩目あたりからの課題となりそうです。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Jan 23, 2013)

 

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