短距離ランニングフォーム解析 (26)
スウィング脚による加速効果(内容改正)

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS

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 内容改正について

 これまで、短距離ランニングフォームにおけるスウィング脚のとりあつかい方について、(a)「後方巻き上げ型」と(b)「直線引き出し型」という2つの極端なパターンをとりあげました。そして、(b)「直線引き出し型」のほうがより長い距離を移動することができるため、スウィング脚による加速効果が大きいと論じました。
 しかし、その後の研究により、この問題は、そのように簡単な考察で片付くものではないということが分かってきました。その理由は、スウィング脚が全体の重心をリードするために必要とする距離は、最初考えていたほど長くなくてもよいからです。スウィング脚重心の動きは、わずか1/60秒ほどの時間についてだけ、速く動かすことができればよいのです。
 分かりやすく説明するため、具体的な解析サンプルを提示することにします。

 スウィング脚の色々なとりあつかい方

 スウィング脚について、2つの極端なパターンである、(a)「後方巻き上げ型」と(b)「直線引き出し型」だけに着目していましたが、色々とランニングフォームを調べてゆき、また、それらの動きの力学的な意味を考えてゆくと、これらの中間のものにも、幾つかの個性的なパターンのものがあります。これらのサンプルを示します。





図1 スウィング脚の色々なとりあつかい方

 次の図2は「キックポイント(左)とその1/60秒前(右)の2フォーム」に、上から、キック棒(キック脚と上半身)、全体、スウィング脚の、それぞれの重心を描いたものです。


図2 キックポイント(左)とその1/60秒前(右)の2フォーム
※ 重心は上から、キック棒(キック脚と上半身)、全体、スウィング脚

 これらのランニングフォームにおいては、1/60秒くらいの、ごくごく短い時間において地面との力のやりとりが終了しています。このとき、全体の重心(黒色)をスウィング脚の重心で引っ張ることになるのです。全体の質量のうち、ほぼ3/4をキック棒が、のこりの1/4をスウィング脚が受け持っていますから、これらのスウィング脚の速度が、そのまま加算されるというものではありません。たとえば、キック棒重心(B)の速度がdB=8.0 [m/s]で、スウィング脚重心(S)の速度が12.0 [m/s]のとき、全重心(G)の速度dGは、運動量の関係から、次のように計算できます。

   dG = (3/4)×8.0 + (1/4)×12.0
     = 6.0 + 3.0 = 9.0 [m/s]

 全重心の速度に対してスウィング脚の寄与分は、3.0/9.0 = 0.33 くらいだということになります。およそ33パーセントです。
 これに対して、キック棒重心の速度は67パーセントということになります。
 図2のキック脚のかかとを見て下さい。2と3に比べて、1と4では、かかとがピョンとばかりに浮いています。これは、キック脚の伸張反射がうまく作用していることを示しています。このことにより、67パーセントを受け持っているキック棒重心の速度を大きくすることができます。
 ただし、4のフォームでは、このような加速効果を水平速度へとうまく生かせることができていません。なぜかというと、スウィング脚の重心も上向きになってしまい、全重心を必要以上に上へと動かそうとしているからです。
 このようなキック脚のほうの加速効果を、全重心の水平速度の向上へと向けるためには、スウィング脚重心が下向きに動く必要があります。
 そのためとして、もっとも効果的なスウィング脚の使い方ができているのは、2の「跳ね上げダウンスウィング型」なのです。

 まとめ

 スウィング脚の加速効果というものを考えてきましたが、スウィング脚のことだけに注目したときは、この動きが意味をもつ時間がごく短いものであることから、スウィング脚重心の速度を大きなものとして利用するのに、それぞれの方法で、それほど違いがあるわけではないということが言えます。
 しかし、スウィング脚は、スウィング脚だけで考えるべきではなく、キック脚の加速効果をうまく水平速度へと作用させるためという一面をもっています。このとき、これらの複合的な加速効果というものを考えると、2の「跳ね上げダウンスウィング型」で全体の動きを調整しつつトレーニングするのが良いと思われます。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Feb 1, 2013)

 

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